19話「私たちは進んでゆく」
あれから十年以上が経ち、夫であるヴェガウンディは国王の座に就いた。
私と彼は今も仲良し。
変わらない関係性で歩むことができている。
王家に入った以上当然とも言えるが、もちろん、時には事件が起こることもあった。ちょっとした騒ぎになったり、慌ただしい状況に置かれてしまったり、そういう時もあった。
ただそれでも意思疎通することを忘れずに歩んで。
人間関係の最も基本的な部分を見失うことなく関わり合うことで、どんな山もどんな谷も共に越えることができてきた。
だからこれからもそうやって歩んでゆくつもり。
何が起ころうとも。
何と対峙することになろうとも。
彼と共に立ち向かえるなら怖いものなんてない。
「こちらの書類、確認をお願いします」
「はい」
王妃となった私は今とても忙しい。
「失礼いたします。こちらとこちらもお願いできますでしょうか」
「十分ほどかかりそうです」
「もちろん構いません。可能な時で問題ないですので。お願いします」
「分かりました。ではできましたらお呼びします」
毎日、朝起きてから夕方くらいまで、やらなければならないことに追われている。一応食事の時間はきちんと取ってもらっているけれど。ほんの少しの休憩を除けばほぼほぼ仕事、といったような状況。
なので時折心が弱りそうにもなる。
けれども負けはしない。
この程度の忙しさに負けているようでは王妃なんて務まらない。そう思うからこそ、多忙に負けないよう走り続けている。
「こちら、はんこ押し終了しました。届けていただいても問題ないですか」
「承知しました~」
「その後できればこれもお願いします」
「では一緒に持っていきますね~。順番に渡しておきますので。お任せください~」
「重くてすみません」
「いえいえ~では行って参ります~」
長時間書類と向き合っているとたまに肩こりが酷くなるけれど。
「王妃様! すみません!」
「はい、何でしょうか」
「先日の会合の件なのですが、少しお時間大丈夫でしょうか?」
「あ、はい。どうぞ。対応できます」
これが私が選んだ道、そう理解しているから悔やみはしない。
「失礼いたします!」
「どうぞ」
「明後日もう一度、とのことですが、可能でしょうか?」
「確認します」
「申し訳ございません! お願いします!」
私が働けばヴェガウンディの負担も減るだろう。
ならば私は働きたい。
彼のためにできることがあるなら何だってやっていきたい。
辛かった過去を思い出せばどんなことも乗り越えられる――それこそが私の持っている武器。
「今日もお疲れさま、ヴェガウンディ」
「ありがとう」
今夜は久々に二人で過ごせる。
「アズリー、最近すごく働いてくれているみたいだね」
「貴方の力になりたいから」
「うわあ! 口説き文句!? 優しすぎる言葉!」
「変だったかしら……」
「ううん! 変じゃない! けど、すっごく嬉しいよ。ちょっとした言葉がすっごくしみる!」
実は仕事はまだ残っていたのだけれど。彼の母親が気を遣ってくれて。たまには二人で過ごせるようにと対応してくれたので、それによってこういう穏やかな時間を持つことができた。
私たちを温かく見守ってくれている人たちに深く感謝している。
「今は色々大変だと思うけれど……支えるわ」
「嬉しすぎる!」
どんなことがあったとしても、私たちは進んでゆく。
◆終わり◆




