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どんな嵐も乗り越えて幸せになってみせます、それが私の人生ですから!~聖女を傷つけた者には天罰が下るようです~  作者: 四季


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10話「正しさを見分ける目」

 王子ヴェガウンディは聖女であるアズリーと婚約した。


 恐らく、その事実を知って一番驚いたのは親や妹だっただろう。冴えない女だった私が王子の結婚相手になるなんて未来は誰も想像していなかったに違いない。だからこそ特に家族は衝撃を受けただろうなと思っていた。


 そんなある日、三女リシリーが城へやって来た。


「おねーさま、久しぶりー」

「リシリー。……かなり久しぶりね」

「殿下と婚約したんだって? 聞いたよ、びっくりしちゃった」


 軽いノリで話しかけてくる。


「でもさでもさ、思わない?」

「何を?」

「おねーさまよりリシリーの方がぜーったい魅力的だ、って!」


 ……あ、これはややこしいやつか。


 勘づいてしまった。


 これは間違いなくややこしいことになる。

 まだ何も起こっていないけれど既にそんな未来が見える。


「……ヴェガウンディ様の相手になりたいってこと?」

「そ! だってリシリー、おねーさまよりもっといい女だもん。リシリーも殿下狙っちゃお、って思って、それで今日は来たんだ!」


 リシリーは無邪気な表情でそんな風に話す。


「ねえおねーさま。もし殿下がリシリーに惚れたら殿下は譲ってくれるよね? 可愛い妹だもんねー。オッケイ?」

「それは……」

「駄目、とか、嫌、とか、絶対言わないでね! おねーさまなら妹の幸せを願うべきなんだからっ」


 リシリーは既に他者の幸せを壊した女だ。彼女のせいで傷ついた人がいるということを私は知っている。それゆえ彼女の幸せを純粋に喜ぶことはできない。彼女はもう純真無垢な可愛い妹ではないのだから。リシリーは悪女、相手のいる男に手を出しそこの関係を壊した罪深い人間。


「申し訳ないけれど貴女には無理よ」


 はっきり言ってやれば。


「へー……どうして?」


 そんな風に返してくる。


 明るさと穏やかさは残った面持ちではあるけれど。

 一方で不気味なほどに凝視されている。


「リシリーは聖女じゃないでしょう」


 すると彼女は軽やかにふふっと笑い「でも魅力的だよ!」と何の迷いもなく発した。


「殿下だって男だもん、結婚相手は少しでも魅力的な方がいいってもんでしょ」

「そういう話ではないのよ……」

「いやいやそーいう話だよ! 好きな人と結婚したいっていうのは誰にもでも共通する思いだし。殿下だってそうだって!」


 それに、と、リシリーは続ける。


「おねーさまなんてさ、聖女なこと以外にいいとこないじゃん」

「失礼ね」

「でもそーでしょ? 顔が良いわけじゃない、すっごい能力があるわけじゃない、家事名人ってわけでもない。それって、聖女なこと以外にいいとこない、ってやつだとは思わないの? リシリーが言ってること、事実でしょ?」


 ――その時、扉が開いた。


「アズリーさんには良いところがたくさんありますよ」


 現れたのは真剣な顔をしたヴェガウンディ。


「貴女は……妹さんだそうですね」

「は、はい! そーなんですっ。このパッとしないアズリーの妹、三女のリシリーです!」


 張りきった様子のリシリーとは対照的にヴェガウンディは不快そうな顔をしていた。


「アズリーは地味ですしー、髪色も変でー、全体的にパッとしないですけど、リシリーは違います! 明るい性格ですっ」

「そうですか」

「それにそれに! リシリー、地元でも結構モテたんですよ! おねーさまと違って男の人から告白されることも多くてー、モテてる女の子として噂になってた時もあったくらいなんですっ」

「ほう」

「おねーさまの妹だからっておねーさまみたいなダサい女だって思わないでくださいね? リシリーは可愛い系です!」


 どんどん話すリシリーを冷めた目で見ていたヴェガウンディは、やがて小さく口を動かし、低い声で「で、婚約者のいる男に手を出した、と」と発した。


「へ……」

「貴女の話は前に聞きました。婚約者がいる男性に手を出し関係を壊した、と」

「え、ええっ? え? えええ?」

「その話が事実であるなら最低ですね」

「あっ……や、ち、ちがっ……も、もしかしておねーさまが? おねーさまが言っていたんですか? じゃあ嘘ですっ。昔からおねーさまはたまーにそういうことするんですっ。リシリーが悪いことしたって話を言い広めたりっ……まるでリシリーが悪女であるかのような話を作ったりっ……!」


 慌てた様子のリシリーをヴェガウンディはじっと見ていた。だがその視線に好意的な色は一切ない。むしろ逆。彼は今、嫌悪感を練って固めたような目つきで、すぐそこにいる狼狽え気味の怪しい女を見ている。


「嘘はよくないと思います」


 やがて彼ははっきり言いきった。


「それ、嘘ですよね」


 直球で言われてしまったリシリーは慌てて「違いますよ! ち、ちが、っち、ちちちちっ……違い、ます! 嘘なんか、じゃ、ない、です!」と返すが非常に慌てた様子なので怪しさが天を突き抜けていっている。


 述べたことがすべて事実であるなら、慌てる必要など微塵もないだろう。


「おねーさまは! そーいう人! なの! リシリーのこといっつも虐めてくるんだもんっ、本当だもん! 信じてくださいっ。こんな素直なリシリーが嘘つきに見えますか? 見えませんよね? 見えないですよねっ!?」

「嘘つきにしか見えないです」

「ふゆぇえええ!?」

「アズリーさんをこんな風に悪く言う人が正しい人だとは思えません」

「どうしてぇっ」

「黙って聞いていればアズリーさんの悪口ばかり。あまりにも酷い。貴女がアズリーさんの妹さんだということも嘘であってほしいくらいの気持ちです」


 今のヴェガウンディはこれまで見たことがないくらい攻撃的だ。

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