珈琲と占いの店 地底人14
彼女はカードをシャッフルしながら私に「それで? 何を聞きたいの?」と尋ねてきた。その口調に感情らしいものは籠もっていない。まるで愛想のない役場のおばさんみたいだ。
「……明日、初バイトなんです。それでどうやったら上手くいくか教えてください」
「分かったわ。そうね……。じゃあ『初めてやるアルバイトをうまくやるためにはどうしたらいいか?』で占うわね」
彼女はそう言うと切っていたカードをクロスの上に置いて時計回りにかき混ぜ始めた。どうやらタロット占いはこうやってカードを混ぜ込むらしい。
そうやって一通り混ぜると彼女に「じゃああなたも混ぜて」と言われた。私は促されるままタロットに手を伸ばすと時計回りにカードを回した。硬い紙の感触が指の上を流れて行く。それは私にとって初めての体験だった。不思議と嫌な気はしない。
そして私が混ぜる手を止めると彼女はタロットを束ねた。そして束ねたカードを三つの山に分けるとそれを入れ替えるように重ねる。それはなかなか奇妙な光景でまるで黒魔術の儀式でもしてるみたいに見えた。……実際、タロット占いなんて黒魔術みたいなものだと思うけれど。
それから彼女は重ねたカードを上から六枚引いてそれを横にどけた。そして二枚のカードをクロスの中央に並べる。
「じゃあ見ていくわね」
彼女はそう言うと二枚のカードを捲った――。
「あら、珍しい。両方とも大アルカナよ」
カードが捲られると彼女は少し驚いた風に言った。
「大アルカナ?」
「ええ。……簡単に言えば大きな意味を表すカードね」
「そ……。うなんですか」
「うん。へー……。やっぱり物事のはじめだとこのカード出るのねぇ」
彼女は感心したみたいに言うと左手で二枚のカードを撫でた。いったいこの二枚のカードにはどういう意味があるのだろう? 私は柄にもなくそんなことを思った。




