珈琲と占いの店 地底人6
ショッピングモールを出るとすぐにトライメライに戻った。そしてそのまま地下商店街に入った。意外なことに午前中に来たときよりだいぶ混み合っている。
「あーあ、逢川さん可愛そうに……。まだ解放されないみたいよ?」
美鈴さんは心底同情的なことを言うと私にスマホのメッセージ画面を見せてくれた。画面には『香取ちゃんごめん。まだけっこう掛かりそう』と表示されている。どうやら逢川さんと社長とのミーティングは思いのほか長引いているようだ。
「ま、いいか。んじゃ先に地底人行こっか」
「だね。……逢川さん大丈夫かな?」
弥生さんはさして心配していない口調でそう言うと大きく背伸びした。反応から察するにこれはいつものことなのだろう。
地下通路を来たときとは逆方向へ進む。左手にはアンティーク雑貨の店、右手にはお弁当屋。やはりこの地下街にテーマのようなものはないらしい。雑居地下街。思わずそんな造語が思い浮かぶ。
少し歩くとUG幕張の前を通りかかった。店内には数組の来客があり、蔵田さんと鹿島さんが接客していた。思っているよりこの店は繁盛しているらしい。
「地底人入るの久々だなぁ……」
占い館の前に到着すると美鈴さんがどことなく不服そうにそんなことを言った。
「そうだね。じゃあ入ろっか」
弥生さんはそんなことお構いなしに店のドアを押し開ける。ドアを開くとカランと鈴が鳴った。
店内に入ると濃いコーヒーの匂いが鼻を突いた。カウンターにはコーヒーサイフォンが六本置かれその全てがゴボゴボと泡立っている。
そんなコーヒーサイフォンの隣で初老の女性が何やら作業をしていた。そして私たちに気がつくと「いらっしゃい……」と言って視線を上げる。
「こんにちは」
「はい、こんにちは。今日はお友達と一緒なのね」
彼女はそう言うと私たちを四人がけテーブルに案内してくれた。そして革張りのメニューをスッと差し出すと「決まったら読んでちょうだい」と言って再びカウンターに戻った。
「弥生さぁ。あんたが最初に占って貰ったら? 私と聖那ちゃんは待ってるから。……待ってる間に明日のことある程度説明しときたいしね」
「そう? じゃあそうしちゃおうかな」
弥生さんは一つ返事で答えると立ち上がってカウンターに向かった。そしてそのまま店主の女性に声を掛ける。
「ったく。あの子は。……ああ、聖那ちゃんごめんね。とりあえず何か飲み物頼もっか」
「ありがと。じゃあ私は……。クリームソーダにする」
「りょうかい。私はどうしよっかなぁ。さっきドリバー飲みまくったばっかだし」
美鈴さんはそう言うとメニューをパラパラ捲った。そして「うん! カフェラテにするわ」と言って店主に注文を伝えた。
弥生さんはそんな私たちのことなどお構いなしにカウンターでそわそわしていた。これから始まる占いのことしか頭にないみたいに。




