アンダーグラウンド幕張4
「事務所は諏訪さん一人なん?」
発進してすぐに美鈴さんが逢川さんにそう尋ねた。
「そうだよ。まぁ大丈夫でしょ。つーかいつも諏訪ちゃん一人みたいなもんだし」
「おいおい。可愛そうじゃんよ。諏訪さんだって寂しがってると思うよ?」
「ハハハ、ないない! あんなでも鉄の女だよ? ウチの会社で一番メンタル強いのあの子なんだから」
逢川さんはそんな風に軽口を叩くとウィンカーを右に出した。また酒々井方面。最近はこっちばかり来ている気がする。
「そうかなぁ。あれでなかなか諏訪さん乙女~! な人だと思うけど」
美鈴さんはそう言うと逢川さんを横目で見た。バックミラー越しに美鈴さんの嫌らしい目が見える。
「そうかぁ? まぁいいけど……」
それから私たちは富里インターチェンジから高速道路に乗った。行き先は幕張。あの巨大テーマパーク近くの街だ。
「あの……。今から衣装屋さん行くんですよね?」
「ああ、そうだよ。本社の近くに『アンダーグランド』っていう店があってね。ウチのエキストラの衣装はだいたいそこに発注してるんだ」
逢川さんは私の素朴な疑問にシンプルに答えてくれた。アンダーグラウンド。とてもディープな響きの店だ。
「通称『アングラ』ってウチらは呼んでんだけどね。あそこの店長変わってんだぁ」
美鈴さんはそう言うと「ウエェ」と舌を出して戯けた。
「ちょっとメイリン。あんまり聖那ちゃん脅かさないであげなよ」
「アハハハ、ごめんごめん。でも……。そうね。ちょっと面くらいかもしんないよ? ねぇ? 逢川さん?」
美鈴さんは逢川さんに話を振った。逢川さんは「ん? まぁ、そうな」と曖昧に返事をする。
そんな話をしながら私たちは幕張方面に向かって走った。アンダーグラウンド……。いったいどんな店なのだろう?




