アンダーグラウンド幕張1
歓迎会(?)が終わると美鈴さんが私を自宅まで送ってくれた。すっかり日は暮れて、国道は混み合っていた。二回目なのでバイクのリアシートにもすっかり慣れた気がする。
「よし! 今日は本当にお疲れ様! たぶん今週の金曜に衣装取りに行くと思うから予定空けといてね」
「うん! ありがとね。弥生さんもよろしく伝えといて」
「あいよー。んじゃ!」
美鈴さんはそう言うとバイクに跨がって大げさに手を振った――。
家に帰ると両親がリビングで愛を語り合っていた。誇張じゃなく本当に。正直母が父に『私のこと好き?』とか言ってるのを盗み聞きするのはいい気がしない。
「ただいまー」
私はわざとらしく大きな声を掛けながらリビングに入った。まぁ……。そうしたところで二人の愛は止まらないのだけれど。
「あら、おかえりなさい」
母は二人きりの時間を邪魔されたのが気に入らないのか素っ気なく答えた。こういうところが子供なのだ。普段あれだけ私のことを子供扱いするくせに。
「お友達と遊んできたのか?」
不意に父が口を挟んだ。私は「そうだよー」とだけ答える。決して『魔法少女の最終選考』だとは言わない。
「そうか。……礼儀正しくていいお嬢さんだったな。メロンまで貰っちゃって」
父は満足げに言うと「夕飯のあと出して」と母に催促する。
「ダメよ! まだ固いもん。明日切るから」
「そっかぁ……。じゃあ俺が食べられるのはギリギリか」
父はそう言ってしょぼくれた。父も果物には目がないのだ。本当に似たもの夫婦だと思う。
それから私たちは久しぶりに家族団らんした。手の込んだ母の料理と父のつまらない冗談。それだけで非日常に来たような気分になる。
「そういえば……。篠田楓子さんとは今でも連絡取り合ってるの?」
「何よ……。藪から棒に。そうねぇ。篠田さんにはもうしばらく連絡してないかな? 毎年年賀状は送り合ってるけどそれだけよ」
「そっかぁ……。実は友達が篠田さんのファンだって言ってたからさ。ちょっと気になってね」
「何? 香取さんって篠田さんのファンなの?」
「違う違う。美鈴さんの友達がさ」
「あ、そう。何か聖那急に友達増えたね」
母はそう言うと立ち上がってリビングのサイドボードからハガキを何枚か持ってきた。
「ほら、これよ!」
母はそう言って私にそのハガキを差し出した。ハガキには両親と同年代くらいの夫婦と小学生くらいの男の子。あと……。なぜかカワウソが写っている。
「あ! このカワウソ!」
「ああ、この子はチェリーちゃんって言うのよ。たしか聖那もサイン会のとき会ったよね」
私の困惑を余所に母はさも当たり前のよう言った。どうやらカワウソがサイン会に居たのは私の勘違いではなかったらしい。




