株式会社エレメンタル9
「はーい」
そう言って受付の女性が再びパーティションのドアを開いた。
「諏訪ちゃん。悪いんだけど夏木さんのスリーサイズ測ってあげて」
「分かりました。じゃあ夏木さん。こちらに」
受付の女性……。もとい諏訪さんはそう言って部屋の端っこの更衣室に案内してくれた。二人入ったらぎゅうぎゅう詰めになるくらい狭いロッカールーム。
「正確に計りたいので制服脱いでいただいてもいいですか?」
「はい」
私はそう返事すると制服を脱いだ。まさか出先で脱ぐとは思わなかったのでかなり適当な下着だったと後悔を覚える。
それでも諏訪さんはそんなことお構いなしみたいに私のスリーサイズと身長をテキパキと測っていった。まるで給湯室で湯飲みを洗うみたいに丁寧かつ手早く。きっと彼女は全てにおいてこうなのだと思う。できる女。そんなイメージだ。
「よし。これでおしまいです。最後に靴のサイズ何センチですか?」
「えーと……。二三センチです!」
「二三センチですねぇ……。はい! お疲れ様でした。これで本当におしまいです!」
諏訪さんはそう言うとニッコリ笑った――。
「夏木ちゃんおかえりぃー!」
更衣室から出ると美鈴さんにそう出迎えられた。
「はい、ただいまです」
「あー、固い固いって! タメ口で良いって言ったじゃん?」
美鈴さんはそう言う「せっかく同い年なんだからさぁ」と付け加えた。どうやら彼女的には私を友達認定してくれたらしい。
「そうだよね。うん、じゃあ普通に話すよ」
「お! いーねいーね! んじゃこれで魔法少女チームも三人だね!」
美鈴さんは満足げに言うと「ニシシ」といたずらっ子っぽく笑った。
「おいおい香取ちゃん……。ほぼ確定だからってまだ社長の許可貰ってないんだからさぁ。あんまり採用決まったなんて決めつけない方がいいと思うよ?」
「えー! なんでそんなこと言うわけぇ? 大丈夫だって! 夏木ちゃん……。いんや聖那ちゃんは絶対受かるから! だって見てよ。めちゃめちゃ可愛いじゃん? 背丈もいいし、すらっとしてるし、私みたいな幼児体型でもないしさ」
美鈴さんは私のことを褒めるだけ褒めると少し自虐的なことを言った。幼児体型……。おそらく自分の胸のことを言っているのだ。
「あーあ、私より小さい子も入ってこないかなぁ」
美鈴さんは冗談交じりに言うと彼女は自身の胸元をチラッと見た。もしかしたらコンプレックスなのかも知れない。