幼少期 〜 すなばのかざん 〜
拙作掌編『藤棚の下で』へいただいた感想を拝見していて、ふと想い出したこと……
想い出しおろしです。(って、「書き下ろし」をもじったつもりが、なんだか大根おろしみたい……?)
幼稚園の年少組のころの話だったと思います。
私がその幼稚園に入ったのは、母と見学へ行ったときに私自身が「ここに入る」と意思表示したためだと記憶しています。
なぜその園へ入りたいと思ったのか、それは、近所の幼馴染がその園へ入っていることを知ったからです。(私たちは同じ年の春に生まれましたが、彼は早生まれだったため、一足先に入園していたのです。)
私は入園すると、彼と一緒にお迎えのバスへ乗って幼稚園へ通い、自由時間は一緒に遊んですごしました。
ある日、「砂場で火山を作ろう」という話になりました。
火山を作るというのは……、要は、砂のお山を作って、真ん中に穴を空けて、そこへマグマに見立てた水を流し込む……といった遊びでした。
まあとにかく、そのプランを実行しようということで、
「水、汲んでくるから待っててね。絶対離れるんじゃないぞ」
彼はそういって、彼自身意図せずにフラグのようなものを立てて、水を汲みに行きました。
はい、とうぜん私はその場を離れます。
そして、彼のクラス、年中の「さくら組」の部屋の前へ腰かけて、彼を待っていました。
やがて彼が、私を見つけます。でも彼は、
「いやいや、フリじゃねえから。離れんなよ」
とは言いません。(そもそも「フラグ」だとか「フリ」だとか、そういう言葉を当時の私たちは知らなかったでしょう。)
代わりに彼は、こう言いました。
「ダメだった」
「え?」
「やってみたんだけど、砂が水を吸い込んじゃって、マグマみたいに溜まらなかったんだよ」
だからなんだ、って言われればそれまでのエピソードなんですけど、ふと想い出して、懐かしいなーっと浸っております、檸檬 絵郎でした。