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もさ子その40

バレンタイン当日です。

朝からソワソワしてて、授業もあまり聞いてなかった。

そういえばテストも近いのに!

今度由美ちゃんに教えてもらおう。


お昼に由美ちゃんと友チョコを交換した。

由美ちゃんのはブラウニーで、ご飯の後にデザートでお互いに食べておいしかった。

藤牧君からも貰ったのは驚いちゃった。中のメッセージに頑張ってね、って書いてあって。

藤牧君と谷野君はライバル?なのに応援してくれるなんて嬉しいな。




「由美ちゃんどうしよう!」


「何?私もう帰るわよ」


「えー……放課後の時間潰し付き合ってよ。一人でいるとどんどん緊張しちゃって…………」


ソワソワしてる私にため息をついて、5時まで一緒にいてくれるって!やっぱり由美ちゃんは優しいな。

由美ちゃんと来たのは駅近くのカフェ。

そして目の前には教科書とノート。


「最近、気分が落ち込んだり浮上したり大変だったから手付かずでしょ?テストも近いからちょうどいいわよね」


「はーい……」


結局、ノートを写して勉強もしてしまった。由美ちゃんのノートは綺麗だから分かりやすいんだよね。

学年末だからテストの範囲が広くて…………赤点はとりたくないよ。


5時になると由美ちゃんと別れて駅のトイレで身だしなみチェック。私の他にも鏡の前にはたくさん女の子がいる。

みんな同じ理由かな、なんて思いながら谷野君に貰ったネックレスをつけて準備完了!

チョコもちゃんと持って、谷野君のいる学校に出発した。






校門が見えてきたら緊張してきちゃった。

学校間違えてないよね、部活はまだ終わってないよね。

とりあえず待ってよう。

部活が終わったのか校門から出て来る人は多いけど、谷野君はまだみたい。制服が違うからチラチラと見られて恥ずかしい。

ここで逃げたら一年前の二の舞だ!


まだかな。


まだかな。


時間は……そんなに経ってないなぁ。

部活終わってないのかな。

あの子と一緒にいたらどうしよう……。





「――綾子」




校門から出てきた谷野君は息を切らして制服もヨレヨレだ。

急いできてくれたんだよね。

そんな事に気が緩んで自然と笑みがこぼれちゃった。


「もっとゆっくりでも良かったのに。ネクタイ曲がってるよ」


「これは……昨日のメールで本当か心配だった」


あれから返事してなかったからだよね……。

疑われても仕方ないか。

制服を正していた谷野君に私は俯いて謝った。


「たぶん私の勘違いで、かわいい女の子と歩いてたから……なんというか、寂しいと言うか悲しいと言うか…………ごめんね」


「石田は違うっ…………!」


何かに気付いた谷野君は私の左手を取ると、急いでどこかに歩き始めた。眉間に皺が寄っているけど、耳は赤い。


「知り合いに見られたらまずい……明日からうるさくなる」


そうして着いたのは大きな公園だった。

芝生が敷いてあって、街灯も歩道も整備されている。人もまばらにいて、犬の散歩やジョギングしてる人もいる。

私たちは少し奥まったところのベンチに座った。


「こんなところあったんだね」


「えっと、だから…………俺には綾子だけだ。誤解を招いて悪かった」


「ううん。私が確認しないで勝手に勘違いしてただけだし、私も男の子とは話すから、おあいこだね」


ぎゅっと強く握ってきた手に私は笑って握り返した。

きっと藤牧君といるときに、谷野君はすごく我慢してたんだ。


「これ、晴樹君に」


「え」


「あの事で本当に晴樹君の事が好きだってわかった。晴樹君の言葉を信じてみようって思ったら、由美ちゃんが驚くくらい行動的になってた。晴樹君のためなら私、どんどん変われる気がする」


バレンタインのプレゼントを受け取って谷野君は固まっていた。

少しすると、顔が真っ赤になって手も汗をかいてるみたい。


「俺、綾子が好きだ。今すごく愛しい」


合図をするように手に一回力が入って、谷野君の――晴樹君の顔が近づいてくる。

私は返事をするように瞳を閉じた。







もさ子な私のイメチェンは晴樹君に逢うためのもので黒歴史なんかじゃなかった。

ご覧いただきありがとうございました。

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