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万物が神に定められし世界で芋ジョブが一人歩きしていた  作者: ツヅクリフクロウ
第二章 修行編、究極の肉体美を求めて
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第26話 訪問詐欺にはご注意を 中編


「どうしてこうも上手く行かんのかねぇ!?」


何がかって?世の中とその他色々?


俺は今、後ちょっとと言った所で修行を中断してバルズーク家を目指して全力疾走している。

全力とは、魔力込みの全力で、景色の流れ様からちょっとお巡りさんには言えないスピードが出ていると思う。

だが、そんな事気にしてる暇はない。原因はアリアちゃんに届けられた一筆である。(気が付いたら隣で口に咥えていた。いつ離れていつ戻って来たのか全く分からなかった。)


『ヘレンちゃんが居なくなっちゃった!助けて!』


「ったく、元看守長って意味不明な職歴の担任もいねぇのによぉ。そんなに勉強嫌いなのか、あの幼女姫は!」


鬼ヶ殺鬼(おにがざき) とどろき、我が暴行…違った、母校が誇る鬼教師ならぬ鬼凶師おにきょうしを兼ねた鬼狂死おにきょうし

海外の刑務所にて看守長として勤務三十五年目に元中に転勤。転職ではなくなぜか転勤。

彼の高圧電流スタンガン型カスタム教鞭と死導しどうの元で幾多の生徒が立派な 死ャ怪人(しゃかいじん)となった。


悪態を吐いて、そこでふとある可能性に思い至る。

もし、万が一、ラーニャさんに対して俺の見立てが間違ってて、ヘレンが逃亡を余儀無くされる状態に追い込まれていたのだとしたら………



ギュンッ!



思い切り地面を蹴り、あっという間にいつも帰宅してる見慣れたログハウス……ではなく、そのお迎えで豪華に居を構えるヴェルサイユ宮殿に似たドでかい屋敷がどうしても先に目に入ってしまった。

何度見てもその場違い感が萎えない建築物に一瞬脚がもつれそうになったが、俺はむりやり体内を巡る魔力を爆発させて、一直線に目的地へ突撃するのだった。




▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼




今晩は、ラーニャです。

今日は、とても良いことがありました。

何と、私達の住む小さな村に加わった新しい仲間にやっと会えたの!


もうね、四日前から知らない気配が二つ村に滞在してるのを感じてたんだよね。

しかも、その内の一人がしょっちゅう【異領域】を行ったり来たりしてたから、これは偶々救助された遭難者じゃなくて、久しぶりに現れた【農家(辺境の)】さんが訓練を始めたんだってすぐに分かったんだ。


法神プテラストクレが人々を厄災から守るために創造したと謳われる【神結界】の外側で見付かる人間は、私達の身内でなければその類が限られる。

先ず、一番多いのが『異領域流し』の刑に処された死刑囚。

次に、完全に無謀かそれなりの腕を持つ冒険者とか武道家。

後、どっかの奮戦地の軍隊がまるまるってケースもある。おバカな指揮官かよくやる戦略ミスなんだよね、敵陣の背後を取るために数キロの異領域を突っ切ろうとして、そのまま天災級の魔物に遭遇して全滅したり空間変動であらぬ所へ転移されたり。


要するに何が言いたいかと言うと、マトモな人がいないの!

死刑囚は論外………まあ、時々免罪の可哀想な方もいたりするけど基本的に論外。

冒険者なんて、皆んな一攫千金を狙ってる連中だからここで扱われてる素材を目にした途端ほとんど盗賊紛いな事をしちゃう。

軍に至っては最悪だ、作戦失敗を挽回しないといけないのは分かるけどね、いくら何でも資源を全て国に提供しろはないんじゃないかな?


殆どの場合は、魔術や薬でメープル・スプラウトに関しての記憶を消してから即リターンしてやるんだけど、事情によってそれなりに深く関わる人もいたりする。

でも、結局最後には私達の事を忘れてもらって神結界の中に返す事になるのだ。


そう言った面倒事は、大体ドラさん達が受け持ってくれるけどね。と言うか、特に相手が男の場合全員が私を関わらせようとしない。

利用を尋ねれば、揃って『面倒ごとが増えるから』なんて疲れた顔で言うの。

どうしてだろう?私、別に弱くはないし足を引っ張るほどドジでもないと思うんだけどな。


とにかく、以上の理由から私達は外との交流が非常に乏しく、あったとしても後味の悪い思いや寂しい思いをするのだ。

だから、新しい仲間が来たと知って嬉しくてワクワクせずにはいられないんだ。現にワクワクしっぱなしだ。


更に、噂を聞けば一人は南にある国のお姫様でもう一人はなんと異世界人の少年(?)だそうじゃないですか!

もう、これまでにないくらい【農家(辺境の)】らしい(・・・)組み合わせにどれだけワクワクしたらいいのか分からないよ!ってか、少年(?)って何それ!?

一昨日なんて、バルさんの家でいきなり対ノーライフ・レギオン級の最上級聖属性魔術、カーディナル・ピュリフィケーションが発動したんだけど、あれって絶対異世界人が関わってるよね?

わぁー、何がどうなってるのかなぁ、私気になりますっ!


本当はすぐにでも挨拶しに行きたかったけど、残念ながらお仕事が忙しくてそれは叶わなかった。お恥ずかしながら、慢性的な人手不足もこのメープル・スプラウトが抱える問題の一つなのだ。

農家(辺境の)の男達は一日を72時間に区切って畑仕事に励むし、女衆もそこまでじゃないが息つく暇もなく働いている。

いや、正確に言えば 【農家(辺境の)】が心の赴くまま(・・・・・・) 生活しいて、それを私達がサポートしてるって感じになるのかな?あの人達、毎日とんでもない量の作物を収穫するからね。片っ端から加工しないと納屋がいくらあっても足りないよ………魔術で空間拡張されてる筈なんだけどな、ここの納屋。


しかし!そんな風に何とかならない物かとヤキモキな日々を送って、今朝も織物に取り掛かろうとしたその時、天使からの啓示が降りたのだった。

………うん、まあ、ちょっとポエチックにしてみたけど、要はご近所のララさん(天使)が突然窓から転がり込んで来ただけなんだよね。しかも、生死に関わるような必死さで。

また何かやらかしてドラさんから逃げて来たのかなと思ったけど全然違った。


え?閣下が降臨してしまう前に助けて欲しいって?

どこの閣下?

ん?世界が終わるかもしれない?

そんな凶兆なかったけど。

へ?新しく村に来た幼女姫の家庭教師をして欲しいって?

何が何だか解らないけど、今日この日のために私は生まれて来ました。


と、言う訳で午前中にチャチャッと本日の分の織物数百メートルを完成させて、行きましたバルズーク家!

そして居ました、新しい仲間達!

やっとだ、待ち望んだ時がやっと来たの!

そんな魔女っぽい事を考えたのは、ちょっと秘密だ。


こうして知り合えた二人について、ここで語ってみようと思う。


最初は、モリ・ハルキ君から。


家の玄関で初めて彼を見た瞬間は、正しく全身を突き抜ける程の衝撃だった。

ゆったりとその蕾を開く極彩色の花。

軽やかに宙を舞う雪の結晶。

林の何処からか聞こえる茶目っ気な小鳥の歌声。

概ね、この世のあらゆる華麗で儚い元素を結成させた生き物がそこに立って私を見て居たのだ。


自分より線の細い身体つき、清水の様に流れる長い黒髪、無垢な小鼻と唇に目尻のつり上がった悪戯っぽい大きな瞳。

ああ、同じ女性の私でもそんなに見つめたれたらドキドキしちゃ——


『俺は男だ』


ドッキーンっ!!


なるほど!

さすがは異世界人!

さすがは少年(?)!


バルさんと一緒に働いてる夫達から間接的に聞いた話の疑問点を少し解消させた一言だった。


ついでに、他の信じ難い噂も真実だった。

その少年は、誰にも強制されず自ら【異領域】に浸って修行に明け暮れてる、とか。

彼の作る料理を口にしたら新宇宙を幻視できる、とか。

心の中に邪悪な存在を飼い慣らしてる、とか。

よく遠い目をする、とか。


色々と混乱させられたが、とりあえず有望で頼もしい新人さんが来たと考える事にした。

仲良くなれるといいな。


次に、ヘクサドラゴン王国第二王女ヘレン・フォスコ・ヘクサドラゴン。簡単にヘレンちゃん。

ふわふわな黒髪にミルクチョコ色の肌に金色のお目々の六歳。あえて言う必要もないけど我慢できないから言っちゃう、可愛いぃ!


え?なに?これから私、この子の家庭教師するの?

先生とか呼ばれちゃうの?

やったー!


と舞い上がったのはほんの一時、ヘレンちゃんは致命的なまでに勉強嫌いだった。

つまり、私、嫌われ役を買わされたのです。トホホ、泣いちゃう。

色んな意味で勿体無いな。だってヘレンちゃん、物覚えが良くてとても賢い子なのにな。

いつか興味を引く科目を見つけて、先生の後ろをついて回る好奇心旺盛な子になってくれないかな。



………………。



さて、改めまして今晩は、ラーニャです。

上に本日起きた吉事を綴りましたが、実はこれは軽い現実逃避と言うか状況の整理みたいな物だったりします。

理由は、大変な事件と……うん、ハッキリ言って訳の分からん状況に見舞われてる最中だからです。


大変な事件とは、ヘレンちゃんの突如な失踪。私がちょっと目を離した隙に何処かへ消えちゃったんだよ、あの子!

これは本当に由々しき事態だ。何故なら、このメープル・スプラウトは一見平凡な農村……には全く見えないかもしれないね。うん、ごめんなさい。

と、とにかく!場所によっては魔物の蔓延るダンジョンより断然危険なので、何も知らずに行動してはダメなのだ。だから、一刻も早くあの子を発見しなければならないのだ。


にも関わらず、どこを探しても見付からない、気配すら感じ取れない。

途方に暮れた私は、終いになりふり構わずみんなに応援を頼んだ。そう、私の夫達とみんな(・・・)に。


ここで、さっき述べたもう一つの意味不明な状況につながる。


現在地バルさんの家の居間、私の前に両膝をついて稀有に天使族らしく深々と祈りを捧げるララさんと、濃色肌でも判別できるほど顔の青ざめたドラさんがいる。

片方は何もかも諦めたように天に縋り、もう片方は「何をしてくれちゃってんのぉ!!?」的な感情がありありと表情に浮かんでいる。


「何をしてくれたのだ、貴様」


ドラさんが、たまらず心中を吐露した。

当たり前だ、信頼の元に任された幼い女の子があろう事に行方不明になって、最悪死んでるかもしれないのだ。

その事に関してどんなに責められても———な感じに自責の念に囚われてたら、ドラさんにガシッと両肩を掴まれ至近距離で怒鳴られた。


「何故、よりにもよってハルキを呼び寄せたのじゃぁああああ!!!」


その表情は、絶望と恐怖に塗り潰されていた。


「……へ?」


当然、何を言われたか理解出来ず唖然と立ち尽くす私。


「くっ、どうすれば、一体どうすれば良い!?どうすれば良いのだ、ラファエラっ!」

「ああ、聞こえます!神の声が聞こえます!『終焉は近い、全ての罪を懺悔なさい』と私に言っています!!」

「何?懺悔だと!?あい解った、吾輩もそうしよう!」


言われるまでもなく動転している。

いや、だって、ララさん目の焦点合ってないし、彼女ならともかく悪魔族のドラさんが跪いて祈りの姿勢を取るのは絶対マズイもん。

聖なる気が生理的に無理な種族だもん。現に彼女から白い煙が立ち昇ってるもん!?


「ドラさん!?ちょ、それ、大丈夫なの!?」

「くぁあああ!?焼けるぅぅ、のじゃ!!でも、なんだか、今迄の吾輩とは違うワタクシになれそうな気がするぅぅ、のです!!」

「あははは、そうです!信じる者は必ず救われるのです!あははは!」

「ダメだ、この人達完全に自分を見失ってる!?」


って言うか、ドラさん生まれ変わろうとしてない!?


一体全体何が起きてると言うのか。

実はこの二人、普段はおちゃらけた感じだがその正体は二百年程前にあった聖魔大戦の猛将だったりする。その武勇が今でも伝説として語り継がれてる凄い人達なのだ。普段あんな感じだけど。

【異領域】巨獣を前にしても臆さないこの人達をここまで追い込む存在とは一体———



グォン!



刹那、大気を震わせる強大な魔力の波動。

高速接近する圧倒的な気配。

そして、途切れた問いへの答えが姿形となって部屋に乱入して来た。来てしまった。



バァ—————ン!!



「幼女をイジメるるぅ悪いはああぁぁぁ!!い゛い゛ねぇぇがぁあああ゛あ゛!!!?」


「「こ、この人です(なのじゃ)!!」」

「ひいぃぃ!!?」


何か来たああぁ!?

なんかどす黒いオーラ放ってるナニカが来たああ!?

え!?ハルキ君!?うそぉ!!?


愛くるしい輪郭は見る影もなく、戦場を彷彿させる雄叫びを上げるその姿は正に憤怒の権化。

そんな怪物に真っ先に売られた私は、顔の形が変形してしまいそうな凄まじい形相でギロッと睨まれるのだった。


今晩は、ラーニャです。今日、死ぬかもしてません。


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