北京包囲
20XX年 11月9日05:00 中国 遼寧省 陸自第2大隊
南部戦線での敗北以降は、各地でとくに大きな被害もなく一方的な善戦となっていた。敗北した南部戦線も、各国の空軍が到着したおかげで作戦を再開できた。日本、アメリカ、ベトナム、台湾、イギリス空軍による連日の空爆ののち、日台越地上部隊が越境。24時間以下で広西省を占領した。2日の攻撃では、数時間で兵士200名が戦死・行方不明となったが、今回はこれほど大規模な作戦を展開したにもかかわらず戦死者は37名だった。ちなみに、空爆の際にイギリス空軍のタイフーン戦闘機が撃墜され、イギリスとしては初の戦死者となった。
広西省占領により、東トルキスタン連合軍への直接的な支援と国連軍地上部隊の中国内陸部派遣が可能となり、既に日本、ベトナム、台湾、フィリピン、タイなどの国の陸軍が中国本土へ侵入。合わせて兵士20万、戦車・装甲車など5000輌ほどが中国本土に派遣された。
そして昨日、ついに東トルキスタン連合軍は国家としての独立を宣言。青海省の都市 西寧を臨時首都とした、“トルキスタン連邦共和国”の建国を宣言した。国土は中国内陸部全体で、西はチベット自治区、東は四川省までの広大な国土となった。人工は5億人だが、東部の反政府派がトルキスタンに向かうであろうから、さらに人工は増加するだろう。
これに対して中国政府は「独立は絶対に認められない」とし、反逆者には断固とした措置を採るとした。案の定、日本とその友好国などはトルキスタン連邦共和国の建国を認め、治安維持に全面的に支援するとした。トルキスタンは独立国となった後も中国との戦闘を展開している。
また、北部戦線では日韓朝軍が中国領内へ侵攻し、以前から潜伏していたアメリカ海兵隊の部隊と合流。遼寧省を掌握した。北京まであと100kmほどにまで迫っており、北京攻防戦も近いだろう。
「我々が北京に攻めいることは可能ですが、トルキスタン軍が来るのを待つべきではないでしょうか?」
大隊長など部隊指揮官たちが、本土の防衛大臣などとテレビ会議をしていた。
「どうしてだ?空爆できるんだから何でも解決できそうな気もするが?待っていては被害が増えるのでは?」
「それはそうですが、できるだけ北京への補給ルートは潰したほうが良いでしょう。それに、待つといっても、内モンゴル自治区を攻略するのを待つだけです。そこから山東省方面へ進軍すれば北京を完全に包囲できます」
現在は、北京の北から北東にかけてを日韓朝軍が、西部をトルキスタン軍が制圧している状況だ。
「…なるほど、わかった。空自と、米空軍にも協力を要請してみる」
06:00 中国 山西省 太原市 トルキスタン連邦陸軍第11歩兵旅団
ついに地上部隊が太原市郊外に到達した。中心部へと続く道路の先には巨大なビル群が立ち並んでいた。太原は人工300万人の大都市だ。旅団長もスケールの大きさに驚く。
「今からあそこを攻略するのか…」
「まったく、内陸部にはこんなの作らないくせに。我々の故郷と平等にしてやりましょう」
「そうだな。しかし、どこから手をつけて良いのやら…」
とりあえず、現時点では市郊外の敵部隊を攻撃しているだけだ。市内にはまだ民間人が多数いるらしいからだ。基本的にこの地域の人々は政府支持派だが、無条件で人々を殺すほど我々も鬼ではない。
「旅団長、UAVから情報です。市内に敵は確認できないとのこと。建物に潜んでいる可能性が高いので、少し攻撃してから一件一件潰していくしかなさそうです」
「そうか…。厄介だな。とりあえず榴弾砲部隊に2掃射くらいさせて、出てきた敵をハインドで攻撃させよう」
「了解です」
約十分後、榴弾砲部隊が市内への砲撃を開始した。
「着弾まで20秒」
「5秒、4、3、2、1…着弾!」
双眼鏡で街の様子を見てみると、カウントダウンと同時に複数の爆発が発生、建物の破片が舞った。ビルにも砲撃が直撃してガラスが大量に飛散していた。かなりの殺傷力になるだろう。
「2掃射目…着弾!」
1掃射目の砲撃で黒煙を上げていたビルにさらに砲弾が命中し、大爆発を起こした。しばらくして、高さ100mほどのビルは倒壊。街は煙で包まれた。
「こちらハインド。煙が凄い…、赤外線カメラで索敵する」
「敵は確認できるか?」
「…RPGを持った奴がいる。攻撃する。タタタタタッ…」
ハインドが30mm機関砲で射撃しているようだった。野外にいる敵はまず助からないだろう。
「くそ…民間人も多数死傷した模様。もう少し撃ちやすい標的はないのか?」
「UAVでも捜索しているが、そのような標的はないようだ」
結局、街を破壊しまくったものの大きな戦果は出なかった。予想以上に民間人が多いようだ。かなり厄介なことになりそうだ。
07:00
敵の存在を把握できなかったため、地上部隊が街を目指して前進する。民間人に紛れて攻撃してくるであろうから、戦車や装甲車を盾に歩兵が前進し、上空のUAVとハインドがそれを援護する。
市内に入ると、市民たちが避難に追われているようだった。突然の砲撃、空爆で多数の死傷者が出たようだ。前進する我々をにらんだり罵声を浴びせたりする。
「これじゃ、どこから攻撃されてもわかりませんね…」
「そうだな。まあ、俺らは囮ってことで、あとは航空部隊がどうにかしてくれるだろう」
しばらく前進すると、砲撃で倒壊したビルの残骸が見えてきた。周辺には黒焦げの死体、巨大なガラスの刺さった死体などがあった。やはり割れたガラスは凶器だったようで、腕などを切断寸前までにズタズタにされた者がうめき声を上げて倒れていた。
「UAVからです。前方100m先のビル周辺に敵兵らしき人影。通りの左手の建物だ」
「了解。戦車部隊は援護を頼む」
T54戦車が砲塔を建物に向け、ゆっくりと接近する。歩兵部隊も後に続く。AK74を構えながら歩兵部隊が建物を包囲するように移動しようとしたその時、爆音と銃声が鳴り響く。右の建物からRPGが発射され、戦車上部に命中。一瞬で破壊した。その後左右の建物、マンホールなどから敵兵が一斉に突撃してきた。
「敵襲!応戦しろ!」
隊員たちが必死に銃を撃って応戦するが、敵もそれなりに訓練されているようで、なかなか決着がつかない。
「ハインド、これよりスモークを投げる。その地帯を攻撃してくれ」
「了解」
黄色い煙を出すスモークグレネードを敵の方向へ投げる。しばらくすると上空から無数のロケット弾が飛来し、付近の人々や建物を粉砕した。
敵がついに総攻撃を開始したようで、さまざまなところから銃声や爆発が聞こえる。
再びT54戦車を先頭に前進をしていると、我々のものとは違う、戦車独特の「キュルキュルキュル…」という履帯の音が聞こえてきた。おそらく1km圏内の距離だろう。
「航空部隊、敵戦車など確認できるか?」
「いや、1輌も見当たらない」
「そんなはずはない。赤外線カメラでも捜索して…」
通信をしているうちに履帯の音はさらに大きくなっていた。
「何だ?ビルで反響してるのか?」
その時、目と鼻の先の建物から、砲塔をこちらに向けた戦車が壁を突き破って出てきた。しかも99式だ。うまいこと建物の1階部分に隠れていたのだろう。
「―!!!」
突然な出来事に皆動揺して、見ていることしかできなかった。その後、敵戦車は砲撃を開始し、あっという間にT54を粉砕した。逃げようといていたトルキスタン軍兵士も車載機関銃で次々と撃たれ、倒れていった。一瞬にして通りは赤く染まった。
09:00
ゼロかと思われていた敵戦車だが、この戦法によって一瞬にして100輌近くの戦車が姿を現した。至近距離での戦車による奇襲になすすべもなく、多数の戦死者を出して連邦軍は街から撤退した。連邦軍は数時間の戦闘で、戦車・装甲車57輌を損失し、歩兵500名ほどが死傷した。
奇襲を成功させた中国軍は再び街に溶け込み、決して痕跡を残さなかった。
あまりの被害の大きさに、司令部は街の空爆を実施。Su24爆撃機にナパーム弾を搭載し、民間人を巻き込むのを覚悟で爆撃を行った。数回にわたって爆撃を行った結果、人工300万を誇る街は完全に破壊された。建物が複数倒壊し、隠れていた中国軍の戦車や兵士、民間人が押し潰された。中国軍も壊滅的な被害を受けたが、民間人の被害も尋常出たはない。調査はできないが、最悪の場合、民間人の死者は十万人規模になるだろうとのことだった。
結果としてはトルキスタン連邦軍が勝利し、街も制圧できた。しかし、これからは北京も攻略することになる。二の舞は避けたいが、たくさんの血が流れないということもないだろう。
11月10日 10:00
空爆で廃墟となった市内を、連邦軍兵士2人が散策していた。化学物質が焼けたような臭いが常に漂っていた。
「嫌だなー。絶対健康に悪いよ」
「まあな、そろそろ郊外に向かったほうが良いか」
通りなどはなく、道はコンクリートの破片で埋もれていた。その隙間から死者の足などが飛び出ていて、まるでホラー映画だった。それを避けながら歩いていると、何か大きな車輌が半ば埋もれた状態で破棄されていた。
「何だ、あれ…」
「TEL車じゃないか?弾道ミサイルかな?」
近づいて見ると、車輌には人民開放軍のマーク、第二砲兵の表記などがあった。やはり弾道ミサイル車輌だ。車内を見てみると、封筒とピンの抜けた手榴弾が入っていた。破棄する前に破壊しようとしたが不発だったのだろう。封筒の中の紙には、作戦書類のようなものが入っていた。
「スゲエな、大発見だぞ!内容は、何々…『第一師団 第5大隊は太原で待機。本部の司令で攻撃開始せよ。使用弾頭はDF-21。標的の座標は139.6787…および135.5021…および…』これってどこだ?」
もう一人がスマホで調べる。初めは楽しそうにしていたが、徐々に表情が変わってきた。
「どうした?どこだったんだ?」
「…大阪、名古屋、東京、横浜だってさ」
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