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超奇襲作戦

20XX年 10月27日06:00 平壌 人民武力部

中国の武装商船団壊滅からしばらくは膠着状態が続いた。おそらく兵力が足りないため防衛しかできなかったのだろう。もはや中国軍に反撃する力は残っていない。

それから、中国が北朝鮮を核攻撃したという可能性が浮上してきた。武装商船が発射した1発のロケット弾が北朝鮮沿岸に着弾したのだが、その周辺の放射線濃度が異常に高くなっていたのだ。しかし、それでも中国が核攻撃をしたのかどうかがはっきりしない。ロケット弾が着弾した地域なのだが、着弾した後の計測データしかなく、着弾前の放射線濃度がわからないのだ。もしかしたら中国で核爆発があった際の放射能がこちらに流れてきているだけかもしれない。よって報復しようにも正当な理由がないのだ。


「中国軍はもはや無力です。報復は必要ないのでは?」

韓国国防相が日朝の政府代表に説得する。現在、中国への核攻撃非難と、その報復について会議が開かれている。中国の核攻撃疑惑は直ぐに日本にも広まり、日本国民の7割が「中国の仕業だ」とみなし、同時に「報復攻撃すべきだ」との考えが多くなっている。北朝鮮も同じ意見だったが、中国軍に自国民を殺戮された経験のない韓国は慎重な意見となっている。日本の防衛大臣が言う。

「我が国は中国による大規模な本土攻撃を受けました。しかも核を用いた攻撃です。世界各国が中国を非難したのにもかかわらず、今回再び核攻撃を行ったとなると、国民も黙ってはいません。我が国の民間人死者は400万を越えました。国民も報復を強く望んでいます」

北朝鮮代表も防衛大臣の話を頷きながら聞く。韓国国防相が反論する。

「しかし、結局今回の核攻撃の証拠はないんですよ?はっきりした理由もなく報復するなんて、中国と同じではありませんか?」

「北京で起きた核爆発の放射能が流れてきているとしても、あれは放射線濃度が高すぎです。核攻撃を受けたとしか考えられない…」


激しい論争となるも、会議はなかなか終了せず結局報復は先送りとなった。しかし日朝は報復をする方針を崩していない。




09:00 北京 人民大会堂地下

25日の午前0時、北京はミサイル攻撃を受けて大損害を被った。共産党ビルは完全に倒壊、副主席も死亡したらしい。人民大会堂にいた主席はなんとか地下に避難し、助かった。その後人民大会堂にもミサイルが着弾。政府関係者や施設管理者など500人以上が死亡、行方不明となった。地上は危険であるため、主席たちは地下で細々と過ごしていた。

「武装商船団が撃破されました。残るは潜水艦部隊しか…」

総参謀長が冷や汗をかきながら主席に言う。しかし現状では潜水艦攻撃も難しい。制海権は連合軍に奪われており、数十もの潜水艦、数百の哨戒機が中国沿岸を監視している。商船での攻撃以降、民間の船も攻撃のターゲットとなってしまい、複数が撃沈された。軍艦どころか船が不足しているのだ。

陸軍は治安維持で精一杯、海軍、空軍は壊滅しているという状況だ。

「…第二砲兵はどうなっている?」

いら立った声で主席が訊く。

「はい、裏切り者が続出したうえ数発のミサイルが奪われました。現在戦闘可能なのは7個旅団、ミサイル200発ほどです。核は50発ほど。ミサイルサイロはほとんど壊滅ですので…」

「日本やアメリカ、ASEANを攻撃できるのは?」

「日本、ASEANを攻撃可能なのは約100発、アメリカを攻撃可能なのは40発です。あとは短距離用の戦術ミサイルです」

主席は考え込み、しばらくしてから言った。

「…第二砲兵に戦闘準備を伝えろ。核も人員も総動員してだ」

「な…何を言いますか!?今さら総攻撃するつもりですか!無謀ですよ!」

「参謀長、最高司令官は私だぞ?あんなクズどもに祖国を踏みにじられて黙っていられるか!」

主席は完全に正気を失っていた。過度のストレスのためだろうが、この国は民主主義の確立されていないため、共産党の決定、主席の決定を曲げるのは難しい。それがどれだけおかしな決定でも。まさに“ならず者国家”だ。




12:00 遼寧省営口(インコウ)沖 米海軍駆逐艦“ズムウォルト”

ズムウォルト級駆逐艦2隻が渤海を進んでいる。今回の作戦には全てステルス兵器が使用されている。バレずに攻撃、バレずに上陸する最強の奇襲作戦だ。作戦内容は、ここ営口(インコウ)に上陸し、北朝鮮に侵攻している敵部隊を殲滅、かつ北京へ地上部隊を送るための拠点を確保すること。営口に上陸できれば、北朝鮮にいる日朝韓軍と我々で敵を挟み撃ちにすることができる。成功すれば北朝鮮から中国への侵攻が可能となり、戦況はさらに有利になるはずだ。


海上にはズムウォルト級2隻のみで、海中に“ロサンゼルス”級潜水艦3隻、日本軍の潜水艦が2隻、上空にはB-2爆撃機2機とF-22、日米のF-35が展開している。オールステルスであるため上陸作戦に必須の強襲揚陸艦は参加していない。上陸部隊は全て駆逐艦と潜水艦に搭乗している。よって小規模であるうえ装備も貧弱だ。その分を艦砲射撃などの火力でカバーするのだ。


「上陸地点を確認、艦砲射撃用意!」

ステルス仕様の砲搭が旋回、収納されていた砲身が飛び出す。この砲は90mmレールガン。実戦での使用は初めてだ。射程は300kmで、砲弾はマッハ5で飛行する。炸薬がなくてもかなりの威力であろう。

「第一標的、沿岸のトーチカ…ファイヤ!」

「バッ!」

火薬を使用する砲ではないため、独特の発射音だ。あっという間に砲弾が目標に飛んで行き、大爆発を起こしてトーチカが粉々に吹き飛ぶ。水際地雷があったのか、一緒に誘爆して沿岸一帯が土煙で覆われた。

「スゲェな!一掃射だけでこのザマだ!」

予想以上の戦果に砲兵も興奮して喜ぶ。

「引き続き砲撃を行う。上陸部隊、出撃せよ」

砲撃を行っている間、上陸部隊MEU(海兵遠征部隊)がゴムボートを用意し、浜に向けて出撃していった。



12:10 営口沿岸 アメリカ海兵隊MEU

ズムウォルトの砲口から雷のような爆発のようなものが起こり、超音速の砲弾を次々と発射している。沿岸の目標は全て破壊され、内陸からも煙が上がっていた。

「凄い威力だな…」

小隊長が砲撃を行うズムウォルトを見て呟き、部下が言う。

「まさにSFって感じですね。射程300kmって…対艦ミサイルより長いですよね。砲撃戦の再来かな…」

「そうだな。この戦争で中国も終わりだよ。これからは再び我々の時代だ」

ゴムボートがスピードを上げた。もうすぐ到着するようだ。すると沿岸の森からこちらに曳光弾が飛び出し、ゴムボートの手前で水飛沫を上げた。

「おっと…よく生き残っていたな」

「砲撃要請しますか?」

「いや。我々の奇襲には気づいていなかっただろうから、小規模な沿岸警備隊だろ。俺らで片付けれるはず…だよな、軍曹?」

突然隊長から呼ばれて軍曹があたふたする。隊員たちもそれを見て笑う。

「まさかMEUに入隊しておいてゴムボートから敵を倒せないってことはないよな、軍曹?」

「も…もちろんですよ」

苦笑いをしながら、渋々ACOGサイトを装着したM4カービンを構えた。ゴムボートはかなり揺れているが、訓練された海兵隊員なら命中させられる。ACOGサイトを覗くと、二人の敵兵がDshk38機関銃をぶっぱなしていた。大口径銃であるためマズルフラッシュも大きく、発見しやすい。

「タンッ!」

単射で1発発砲、付近の木に命中した。弾道を予想し、照準修正する。

「タンッ、タンッ!」

2発発砲し、一発が見事敵兵の頭に命中。肉片が射出口から飛び散った。もう一発はもう一人の敵兵の股間に命中。地面に倒れ込んだ。もう一発撃とうとしたとき、その敵兵の頭が弾け飛んだ。隊長が止めを刺したのだ。

「お前悪趣味だな。こいつ股間に撃ってたぞ」

隊員たちがクスクスと笑う。

「いやいや、タマタマですよ」

「『タマタマ』って…上手いこと言いやがって」

「ほら隊長、もうすぐ上陸ですよ。集中集中…」

「いやー、面白いやつだな、軍曹殿は」

ゴムボートが海岸に到着し、さっきまで笑っていた隊員たちもコロッと真剣な表情に変わった。恐怖を忘れつつ戦うという、メンタルも強いのが海兵隊だ。気を取り直し、ズムウォルトからの援護を受けながら内陸へ進撃する。


内陸へ向かうと敵兵士が見えてきた。敵兵は原因不明の爆発にとまどっているものの警戒している様子はない。水際地雷が暴発したとでも思っているのだろう。

「戦闘用意。全員射殺するぞ。ブローニングを準備しておけ」

隊長が部下に指示し、M2重機関銃を配置させる。1分弱で準備が完了する。道には沿岸から立ち上る黒煙を見に、無数の中国兵が集まっていた。MEU隊員たちが容赦なく銃を向ける。

「十字砲火用意…撃て!」

「タタタタタタッ!」

M2やMINIMIで一斉に射撃する。なぎ払うように撃つと敵兵が次々と被弾、倒れていった。兵士といえど、警戒していないため小銃を持っている者は少なく、反撃もできずに次々と死んでいく。あっという間に死体の山ができた。

「敵の全滅を確認。移動するぞ」

重機関銃を素早く撤去し、移動を再開する。今回上陸した部隊は歩兵のみだ。後方から援護があるとはいえ、大部隊との会敵は避けたい。よってゲリラ戦のような形となるのだ。精鋭海兵隊によるゲリラ攻撃は強烈なものとなるだろう。





02:00 北京 人民大会堂地下

2時間が経過し、ようやく敵部隊が上陸したと正式に判明した。すぐに反撃部隊を向かわせたが、既に敵の姿はなく、おまけにどこからかは不明だが砲撃を受けてしまった。敵の新型砲なのか威力も大きかったという。

「生き残った兵士からの情報によりますと、海岸の方から砲撃を受けたそうです。敵上陸部隊が沿岸に野砲陣地を築いたのでしょうから、対地攻撃可能な航空部隊を向かわせました。レーダーで敵艦隊を発見できなかったということは艦隊どころか上陸部隊も小規模であるはずですので、この攻撃で殲滅できる…」

総参謀長が話している時、その主席室に空軍大佐が入ってきて言った。

「…攻撃に向かった航空部隊が、地上からのミサイル攻撃で全滅しました。また、台湾が我が国に宣戦布告し、金門島と本土の間で戦闘が始まった模様です…」

「何!?」

予想と正反対の結果に参謀長も耳を疑い、再び冷や汗をかく。参謀長も、まさか敵のステルス軍艦がすぐそこまで迫っているということは考えていなかっただろう。中国に、近くにズムウォルトがいるなどと知っている者はいなかったのだ。しかも台湾の参戦だ。以前から警戒はしていたが、最悪のタイミングでの参戦となっていまった。現在の僅かな兵力で、朝鮮国境、内陸部、台湾周辺を防衛しなくてはいけないのだ。

「…我が軍に戦闘可能な航空部隊はあるのか?」

「えっと…、治安維持にも航空機は必要ですし、反政府派が空港を占拠している所もありまして…」

「つまり、ないということだな?」

「…はい」

この時点で主席の頭には、例に最終手段しか選択肢に残っていなかった。










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