北朝鮮侵攻
目的なく生きるよりは、何かのために戦ったほうが良い。
ー ジョージ·S·パットン
20XX年 10月20日19:00 韓国 仁川沖 護衛艦隊
攻撃開始まであと3時間となった。ここ黄海側の仁川沖には、空母として運用されている"いずも"を中心に護衛艦10隻、揚陸艦3隻、潜水艦4隻、その他6隻が北朝鮮攻略に向けて待機している。日本海側の江陵沖にも護衛艦4隻が配備された。予定では主に黄海側から攻撃や上陸を行うため、主要部隊はそちらに配置されたのだ。他にも、陸には釜山からピストン輸送してきた戦車100輌、装甲車などの車両800輌が到着し、仁川空港やその周辺には空自のF-15、F-2、F-3など合計200機が集まった。ちなみにF-3にはA、B、C型があり、A型は空自、B型は複座機で訓練用、C型が艦載機となっている。
また、韓国軍も駆逐艦やフリゲート、コルベットを60隻ほど集結させ、軍事境界線付近には戦車、装甲車それぞれ1000輌も集めた。しかし実際に集まったのは6、7割だとか。稼働率の低さは前々から問題になっている。境界線付近に野砲やロケット砲部隊も戦闘準備をし、攻撃開始に備える。
同時刻 北朝鮮 開城 軍事境界線まで1kmの地点 特殊作戦群 オスカーチーム
オスカーチーム隊長が北朝鮮に潜入している友軍部隊と連絡をとる。
「オスカーよりエコーへ。そちらの状況は?送れ」
「こちらエコー。現在軍事境界線より800mの地点。敵施設に爆弾設置、配置も完了しました。敵兵の数は700ほど···いや、1000はいるか···。99式戦車も複数見えます。送れ」
「99式だと?あの···中国の99式戦車か?送れ」エコーからの報告に驚き、聞き返す。
「そうです。おそらく中国との協定で得たものですね。01式があるからある程度は大丈夫でしょう。韓国側から部隊が来るまでは持ちこたえられそうです。送れ」
「そうか···。予定通り、2200に攻撃を行う。待機せよ。通信終わり」
我々オスカーチームは狙撃部隊、迫撃砲部隊としてここからエコーチームを援護し、そのエコーチームは破壊工作などで敵部隊の撹乱を行うことになっている。既に爆弾の設置も完了し、戦闘に備えているようだ。もう一つ、マイクチームは、攻撃開始でやって来ると思われる敵の増援部隊を妨害する。こうして日韓正規軍が軍事境界線を越え、侵攻するのを援護するのだ。
21:30 仁川沖 護衛艦隊 空母"いずも"
「1番カタパルト射出!」攻撃開始30分を前に"いずも"からF-3C、F-35Cが次々と発艦する。陸上基地からはF-15J、F-2、F-3Aが離陸し上空で空中給油を受けている。全部隊攻撃開始に向けて忙しく準備をしており、落ち着かない雰囲気だ。何といっても自衛隊創立以来初の外国直接攻撃となるため、隊員たちも不安げだ。
「部隊の状況は?」艦隊司令長官が部下に訊く。
「はい、航空部隊はご覧の通り発艦を行って空中で補給を受けています。40分には全機準備完了となるでしょう。艦隊は目標の座標などを確認し、AGM-1の発射準備をしています。陸上部隊は、韓国軍と共に戦闘配置が完了したそうです。おおむね予定通りですね」
「韓国軍との連携が心配だな···。居ないよりはマシだろうが」
「そうですね。誤射とかにならなければいいですけど···」
韓国軍は兵器の稼働率が低いうえ、兵士の質の評判も良くない。かつて韓国に北朝鮮工作員が上陸したときは、誤射で数名が戦死したとか。今回それが起こらないことを祈る。
21:58 軍事境界線から5km 韓国側 陸上自衛隊第2戦車連隊
「総員攻撃開始に備えろ。韓国軍と特科による攻撃ののち地雷処理部隊が地雷原を爆破、韓国陸軍を先頭に戦車部隊が前進する」連隊長が全体に指示を出す。ここの戦車連隊は10式戦車60輌で構成されており、他の歩兵部隊などの前進を援護することになる。
特科のFH70 155mm榴弾砲や99式自走榴弾砲、MLRS、韓国軍の100門以上の榴弾砲や数十輌のK9自走榴弾砲が射撃用意をする。
「よし、いよいよだ。エンジン、センサー起動···。作戦開始まで1分」
隊員たちの心拍数は上がりっぱなしだ。戦争がどういうものなのか想像もできないが、その戦争は直ぐそこに迫っている。しかもその引き金は、報復とはいえ、自分たちだ。1分などとっくに過ぎる。
「5秒前、4、3、2、1···」「ドドドドドドーンッ!」自衛隊、韓国合わせて200門の榴弾砲、それ以上の迫撃砲が一斉に発射される。数門ずつ時間を少しずらして発射しているため、発射が途切れることはない。常に発射音が聞こえる。また、上空にはMLRSから発射されたミサイルや、護衛艦隊、韓国海軍艦艇から発射された巡航ミサイルが北を目指して無数に飛んでいる。
「おおっ···、凄いな···」
戦車に搭乗していてもビリビリと振動が伝わってくる。ベテランである連隊長にとっても、このような大規模砲撃は初めてだ。
「第2大隊から戦車連隊へ、どうした?至急援護してくれ。送れ」普通科から苦情が来た。あまりの迫力に、つい強ばってしまったのだ。我々に帰り、任務を続行する。
「···よし、全軍突撃!歩兵を援護しろ!」
砲弾が着弾したらしく、遠くから衝撃波と爆音が伝わって来る。そこに向かって、北朝鮮に続く1本の道を無数の日韓兵が列を成して前進する。
同時刻 開城 オスカーチーム
「作戦開始時刻だ···」
隊長たちオスカーチームは、ギリースーツを着てM82バレットライフルを構え、ナイトビジョン付きのスコープで敵の様子をうかがっていた。エコーチームはあらかじめ敵陣地に仕掛けておいた爆弾を起爆させ、そこにいる敵部隊を攻撃する。そして我々はそれを援護する手筈になっている。
きっかり22:00、その爆弾が起爆し、無数の敵兵が吹き飛んだ。スコープ越しに見ると、体のあらゆる部品が吹き飛ぶのが見える。直後にエコーチームが、歩兵部隊と共にいた敵戦車を軽MATで攻撃し、あっという間に戦車は壊滅した。そのまた直後、敵兵に対してMINIMIで十字砲火、爆発で生き残った兵士も複数が銃弾に倒れる。
「ほほー、酷いな。我々も加わるとしようか」
バレットライフルを構え、照準に敵兵を合わせる。バレットライフルは12.7mm弾を使用するライフルで、3km先の敵も狙え、威力も凄まじい。頭を撃ち抜く必要はあまりないので、ざっと敵兵を狙いどんどん撃ち抜くことにした。
「おっ···2人並んでるな···。おもしろいことになりそうだな」
障害物に隠れ、エコーチームを銃撃している敵兵に狙いを定める。
「ドンッ!」凄まじい銃声と同時に12.7mmの弾丸が発射される。2km離れているので直ぐには命中しない。少し時間を置いて敵兵の胴体に命中し、その後ろにいた敵兵の足もに貫通した弾丸が命中した。夜だが、ナイトビジョンを装備しているので様子がよく見える。胴体に被弾した者は即死。内臓がそこらじゅうに飛び散り、上半身と下半身が不自然な方向に曲がっている。おそらく背骨を砕かれ、皮だけでなんとかくっついているのだろう。足に被弾した者は足を吹き飛ばされ、悲鳴をあげているようだった。膝から下が完全に吹き飛んでいる。
「ワンダウン···あ~、すまんな。痛いだろうに。楽にしてやる···」
独り言を言いながら、その敵兵の頭に狙いを定める。引き金を引き、敵兵の頭がスイカのように砕け散る。
「ツーダウン」
銃を構え直し、次の獲物を探す。




