停戦協定破棄
我々は敵を殲滅する。根こそぎに、容赦なく、断固として。
ー アドルフ·ヒトラー
20XX年 10月17日03:00 東京都大田区
停戦状態が続いて3か月が経過した。状況はかなり変わっている。
日本では兵器生産が未だに急ピッチで進められていて、戦闘機は月に3、4機のペースで生産された。普段は月に1機程度だから、かなりのペースだ。生産しているのはF-2と新型のF-3だ。F-2は損失が激しく、工場を再稼働させたのだった。戦車は月に4輌ほど。軍艦は3か月前の戦闘で損傷したものも修理が完了し、戦線復帰している。現在は建造中の艦艇が3隻で、急遽退役した艦艇も改修して戦線復帰させている。"いずも"は大幅に改修し、艦首にカタパルト2基を装備し、甲板も耐熱甲板とし、デッキもアクシャルデッキからアングルドデッキに改修した。アクシャルデッキは昔の空母のような長方形のデッキで、アングルドデッキは現代の空母によくある形で、発艦する所と着艦する所がずれていて、航空機の行き来が効率良くできる。つまり"いずも"を空母として使うわけだ。艦載機にはF-3の艦載機型を使用する予定だ。また、最近ようやく購入できたF-35B、Cも運用できる。また、他の"おおすみ"、"ひゅうが"も耐熱甲板に変更し、F-35Bの運用が可能となった。
他にもASM-3を巡航ミサイル型に改造したAGM-1の開発、レーザー兵器のアメリカとの共同開発、弾道ミサイルの開発など、新型兵器の開発を急いでいる。
また政治面でも動きがあり、首相の解任と憲法の一部停止が行われた。新政府は非常措置として国家緊急権を発動し、憲法9条を停止させたのだ。改憲が一番だが、改憲には時間がかかりすぎるとしてこのような措置を行った。これには一部の国から批判が出たが、国家の非常事態だからと説明して反対を押し切った。
一方中国は未だ内戦状態だ。反政府派と政府支持派が戦闘を行っている。政府支持派には政府から武器が提供されているため、反政府派は不利な状態になっている。
また、内陸部ではチベット、ウイグル、トルキスタンが"東トルキスタン連合軍"として軍隊を結成したと発表している。旧式ではあるものの、中国製の59式戦車などを保有しており、中国共産党にとっては脅威となっている。おそらくインドかどこかが協力したのだろう。インドも中国とは対立しているのだ。
この連合軍が1か月ほど前から中国東部を目指して進軍を開始、中国人民解放軍と戦闘になった。圧倒的に不利でありながら、巧みなゲリラ戦で同等に戦っている。
一連の騒動で中国国内では5万人が死傷し、国力は一気に衰えている。
···ざっと3か月でここまで変わった。そして日本新政府では中国への反撃を考えていた。中国は国内問題で精一杯で、戦況打開のチャンスだ。未だに宮古島以西の島々は中国軍に占領されており、奪還を急がねばならない。
「奪還を行うのならSBUによる潜入の後で上陸部隊を送るのが一番有効です」防衛大臣が新しく就任した首相に説明する。「SBU?陸戦には不向きじゃないのか?」「いいえ、現在では特殊作戦群などと合同で訓練を行っており、ある程度の戦闘は可能ですよ」「なるほど···んで、SBUを送ってからどうするんだ?っていうかどうやって潜入させる?」首相が訊く。「潜水艦にSBU隊員と小型潜水艇を乗せ、西表島付近まで行きます。その途中で宮古島、石垣島、西表島にSBU隊員を小型潜水艇を使って潜入させ、残った潜水艦部隊は制海権を確保し、その後、空母や揚陸艦を含む護衛艦隊をその海域に送り込みます。そして空母から艦載機を発艦させ3島を爆撃。敵部隊を無力化したのち上陸部隊を送り込み、奪還です。どうでしょう?」「うーん···素人だから良くわからんが···。しかし、"3島を爆撃"ってのはマズイんじゃないか?この間の戦闘では、そうやって複数の戦闘機を撃墜されたじゃないか」「いえ、大丈夫です。この爆撃に使用するのはF-3とF-35です。ステルスなのであの時のようにはなりません」「そうか、なら大丈夫···かな?」
不安ながらも首相は納得し、戦闘再開を許可した。防衛大臣も各地部隊に交戦許可を出し、中国への反撃を試みることとなった。
10月18日00:00 宮古島沖の海底 潜水艦"そうりゅう"
「SBUはドライデッキシェルターに移動せよ。作戦を開始する」"そうりゅう"の甲板には、アメリカから購入したドライデッキシェルターが搭載されていた。ここには小型潜水艇(SDV)が収納されており、海中から発進することができる。簡単に言うと旧日本軍の"回天"みたいなものだ。SBUはそこから出撃することになる。
「装備を確認しろ。そろそろ出撃だ」SBUアルファチーム隊長が部下に装備の確認をさせる。人員は10人の1個分隊。装備はHK416とSIG226、狙撃兵はM24を装備。対車両用にカールグスタフを1挺装備している。陸自ではなぜかHKという素晴らしい銃を装備していない。未だにあの汎用性のない89式を使っているようだ。現代戦にレイルのある銃は必要不可欠だが···。
01:10
潜水艦とドライデッキシェルターとを繋ぐハッチが締められる。「酸素マスク着用」隊長の指示で隊員全員が酸素マスクを着用する。小型潜水艇とはいえ、装備は入るが人は乗れない。隊員は潜水艇自体にしがみついて移動することになる。ドライデッキシェルターの扉を開けると、そこはもう海だ。そのため酸素マスクが必要なのだ。
扉を開ける前にドライデッキシェルターに海水が注入される。空気が入ったままでは海水が流れ込む勢いでぶっ飛んでしまう。「シェルターの扉開きます」遂に扉が開いて、同時にSDVを稼働させる。「出撃!」勢いよく潜水艦からSDVが発進する。SDVにしがみつきながら、SBU部隊は宮古島目指して出撃して行った。
01:40までに僚艦の"けんりゅう"と"ずいりゅう"からもSBUブラボーチーム、チャーリーチームがそれぞれ出撃し、石垣島、西表島に出撃していった。後は制海権を確保するのみだ。
01:50 宮古島沿岸 SBUアルファチーム
「装備を持て。上陸するぞ」SDV内部に収納していた銃などを取り、上陸を開始した。隊員は全員ナイトスコープを装着していて、夜でも様子がはっきり見える。海岸には有刺鉄線や障害物などが置かれており、舟艇などの上陸を阻止しようとしているようだった。潜水艇ならそんな障害物関係ないので、易々と上陸できた。
我々の任務は、港に停泊する敵艦の破壊、それから上陸地点の安全を確保することだ。敵の数はできるだけ減らして欲しいとの指令だ。
「10時の方向、哨兵2人。始末しろ」隊長が部下に命じる。隊員がサイレンサーを装着したHKに敵を捉える。パスッ、と軽い音がして2名の敵兵が同時に倒れる。死体を隠し、前進する。
港に接近すると、敵兵も増えてきた。港への入り口は戦車まで投入して警備している。「二手に別れるぞ。お前ら4人は海に入って海中から侵入、敵艦に爆弾を仕掛けろ。残りは援護だ」「了解」部下と別れ、援護チームは丘の上から爆破チームを援護することになった。
02:00
丘から港が一望できる。敵兵もかなりの数だ。99式戦車1輌と92式装甲車3輌、兵士100人ほどが港の埠頭をしていた。しかし、すっかり油断しているようで、皆それぞれで世間話をしている様子だった。
「敵艦まで30m、今のところ順調です」爆破チームから報告が入る。狙撃手が周辺の安全を確認し、チームを援護する。「作業開始」敵艦に到着したらしく、船底に爆弾を仕掛け始めた。
「これで最後です」4つ目の爆弾をセットしているときだった。「セット完了···敵兵だ!撃て!タタタッ···」運悪く、海の景色を見ようとしていた敵兵に遭遇してしまったようだ。「%&+$£@!」敵兵に気づかれたようで、さっきまで世間話をしていた兵士が海岸に駆けつけている。
「撃て!撤退を援護しろ!」狙撃手と小銃手が一斉に射撃を開始する。サイレンサーを着けているため、なかなか射撃位置がバレないようだ。狙撃手がM24で敵の頭を次々と撃ち抜いていく。400m先を走っている敵兵にも難なく命中、頭から血飛沫を上げて崩れるように倒れた。小銃手もブースターを装着し、敵兵を撃ち抜く。ブースターは、単体ではただの倍率のある望遠鏡のようなものだが、ドットサイトと一緒に使用することで、ドットサイトを素早くスコープとして使えるようになる優れものだ。
遂に射撃位置がバレたようで、敵戦車の砲塔がゆっくりこちらを向く。「マズイぞ!グスタフ用意、急げよ!」隊長の指示で隊員が素早くカールグスタフを用意する。カールグスタフは84mmの無反動砲で、重量は18kgもある。改良されて軽くはなったが、それでも重い。「敵戦車捕捉···発射!」ドォン!一応無反動砲という大砲の一種だ。なので発射音も大砲に似ている。そして大砲なので弾の初速も速い。直ぐに敵戦車に命中、大爆発を起こして戦車の動きは止まった。「撃破!爆破チームも撤退完了した。我々も急ぐぞ」急いで射撃地点から撤退した。
数分後、爆弾をセットした4隻の軍艦が船底で爆発を起こす。最終的に3隻撃沈、1隻大破となった。たった10人で駆逐艦4隻の撃破は大戦果だ。石垣島、西表島でも作戦は成功。合計で軍艦5隻撃沈、2隻大破、航空機を20機破壊した。予定通り上陸地点の確保にも成功。1時間ほどで自衛隊の上陸部隊が到着することになる。
02:30 政府発表
「本日をもって、7月14日に締結した中国との停戦協定の破棄を宣言いたします。これと同時に自衛隊全部隊に交戦再開を許可、不当に占拠している宮古島、石垣島、西表島の敵部隊に対する攻撃を再開しました。中国が再び我が国への攻撃、挑発を行えば、核攻撃も辞さない徹底した報復を行い···」
この政府の発表で、日本の核武装を公式に発表したのだった。日本国民もこの時初めて知ったことになる。2か月前、すでに核弾頭は日本政府の管理下にあった。かつてイランから購入した5発だ。また、それ以降は日本国内で核弾頭の開発を行い、作ればいつでも作れる状況になったのだった。
日本は核兵器という最強、最悪の兵器を手にし、意地でも中国による本土攻撃を避けるという手段を採ったのだった。
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