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再軍備開始

本気で戦争に行きたがる者は、大抵それを経験したことがない。

                       ー ラリー·リーブス

20XX年 7月17日08:00 東京都大田区

首相官邸、国会議事堂ともに核攻撃で無くなってしまったため、都内でも被害の小さかった大田区に臨時で政府の中枢を移した。このような事態になるたびに、アメリカ式の都市設定の方が良いのでは?と思う。アメリカのニューヨークとワシントンのように経済の都市と政府の都市に分ければ、このような事態になっても一気に両方失うことはないだろうに。


「首相、全国での暴動でかなりの死傷者が予想されていまして、何か対応策が必要かと···」「対応策と言うと?」首相が訊く。「後先を考えて、再軍備は必要です。治安維持のためにもね。それで、今のうちに兵員を稼げば良いのでは?という意見がありまして。現在国民は報復に燃えています。志願兵を募ればかなり集まると思うんです。兵士も集まるし国民の不満も解消できるし、一石二鳥ではないでしょうか?」これが警察庁や防衛省などで話し合った結果だった。復讐に燃える兵士なら対中国戦の戦場では精神的になって役に立たないかもしれないが、とりあえず治安維持には使える。それに暴動の原因となっているものも、この政策で解消できるはずだ。この意見に首相も納得し、早速会見で国民に呼び掛けることにした。



10:00  NHK放送

「···ということで、今回の中国軍による攻撃での難民が多く、治安維持も難しい状況にあります。各地で暴動も発生しており、治安維持は必須です。そこで、自衛隊の入隊志願者を追加して募ることといたしました。上限は20万人とし···」長い前置きのあと、自衛隊の志願者を募ると発表した。そして上限が20万人、つまり現在の自衛隊の兵士と合わせて40万人体勢ということになる。


この放送をした翌日までに、志願者は上限を上回る30万人となった。しかしとりあえず発表通りこの中から20万人を選び、自衛隊に加わることになり、余った10万人も兵器生産にまわすなどして、できるだけ軍事組織に加わえるようにした。日本全土へのミサイル攻撃からわずか3日、日本は団結し、再軍備を着々と進め始めた。



しかし同じ頃、中国での状況は違う。再軍備をしようにも国がまとまらない。大規模な暴動が各地で発生しており、国民は中国共産党に反抗的で、全く統制がとれない。これまで放置してきた国内問題が、日本との戦争で一気に爆発したのだった。




7月18日00:00  中国 北京 SEALs部隊

もはや日本に大規模な戦闘を行う能力はない。損失が多すぎだ。再軍備を始めているが、軍艦を1か月で作れるわけでもない。戦闘機だって、昔の戦闘機のように短期間で1万機作ることはできない。

 日本の再軍備が整うまでの間、我々は時間稼ぎをすることになった。日本人からは「アメリカは何もしない」と批判されるが、そんなことはない。中国の海洋進出はアメリカにとっても厄介な事態だ。だからこうして非公式に、小規模ながら部隊を送っているのだ。


今回の任務は、具体的言うと中国国内の暴動を悪化させること。反政府革命派に武器を提供したり、政府の仕業に見せかけ国民の怒りを買ったり。武装警察にでも扮してデモ隊に発砲すれば良いだろう。なんだか開戦以来民間人を殺しまくってるような気がするが···。まあ、祖国を守れるのならやってやろう。中国人は13億も居るから、ちょっとくらい殺しても大丈夫だろう。


そんな残酷なことを考えながら、SEALsチームA隊長は中国国内の隠れ家で作戦の準備をする。我々のチームは、中国のミサイル基地を襲撃して以降も国内に潜伏していたのだ。いい加減こんな不潔な環境から脱したい。ニューヨークの安アパートでもこんな不潔な環境は滅多にない。

 「よし、今日中にやるぞ。と言っても、武装警察のコスプレをしないとな···」武装警察の装備なら揃えてある。昨日のうちに部下が武装警察官を殺し、装備を奪って来たのだ。早速武装警察の服を着る。「おい、俺のだけ血付いてんじゃねえか···」隊長が苦笑いしながら装備を奪って来た部下に言う。「防弾チョッキで隠れるから大丈夫じゃないですか?他のやつは背後から首の骨を折ったんですけど、そいつだけ我々に気づいてね。首にナイフを刺してやりましたよ。でも隊長のサイズって言ったらそれでしょ?」「そうだが···」鉄臭いが、仕方なく我慢して着る。銃は95式小銃、普段使っているHK416と比べたらゴミのような銃だ。ブルパップ式で、装填しにくい。レイルがないため汎用性も低い。しかし武装警察と言ったらこの銃なので、これを使うしかない。




01:00

準備が整い、出発する。北京中心部にデモ隊が集まっているらしい。そいつらが標的だ。デモ隊から見れば武装警察からの攻撃=中国政府の命令と見るだろう。我々がその武装警察に扮し、悪いことをやらかし、イメージダウンさせるのだ。


デモ隊が見えてくる。「#%*○₩×☆¥&!」汚い中国語が飛び交う。中国人の話しは全て怒っているように聞こえるのは自分だけだろうか。夜中だというのにまだ数千人ほどが共産党ビル周辺で罵声を浴びせている。かなり過激になっている。共産党ビルを警備する警官隊に石やガラスや、たまに火炎瓶を投げている。


01:30

覆面を被り、銃の射撃用意をする。我々はもろに西洋の顔なので覆面は必須だ。「アメリカ人の周辺のしわざ」だとバレたら、日本のように酷い目にあってしまうだろうから、絶対にバレてはいけない。

 発砲の口実を作るために、わざとデモ隊からの投擲の激しい場所に行った。直ぐに石が投げられ、隊長のヘルメットに当たる。ここで一芝居、負傷したフリをする。隊長は頭を抱えて倒れる。部下たちもあたふたしているフリをし、遂にデモ隊に発砲する。「パニックになって、咄嗟に攻撃をしてきたデモ隊に発砲した」というシナリオだ。発砲をうけたデモ隊が逃げて行き、複数の死体のみ残った。これでデモ隊もさらに怒っただろう。



02:00

デモ隊は「武装警察から発砲を受けた」として、さらに過激になった。共産党ビル周辺では、銃を所持している男がこっそり警官隊に接近、銃を乱射した。銃撃戦となり、男は直ぐに射殺されたが、警官隊も20名ほど死傷した。この事件以来、デモ隊と警官隊の殺し合いが活発になっていった。


そんなとき、SEALsは警官隊の落とし物と見せかけて銃や手榴弾などの武器を街にばらまいた。民間人がそれを拾い、武装する。既に各地で銃撃戦が発生しており、治安維持にさらに兵力を割かれることだろう。




以降、日本は再軍備、中国は治安維持に没頭することとなり、しばらく停戦状態が続くことになる。

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