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報復

20XX年 7月13日10:00  中国 北京 中央軍事委員会

「戦闘開始から2週間が経過しましたが、既に我が軍は壊滅的な被害を受けています。とりわけ今朝の大規模テロ攻撃では、海軍の主要艦艇が半数以上無力化されまして···」冷や汗をかきながら総参謀長が報告する。国家主席は曇った顔のままだ。「んで、これまでの死傷者はいくらだっけ?」主席がようやく口を開く。「···ええ、はい···陸軍で13万7000人、海軍で10万人、空軍で3万人です···。とりわけ今朝のテロの死者が多かったので、作戦に問題があったというわけでは···」「民間人は?第二砲兵はどうなってる?」「···えっと··はい、民間人は20万人以上が死亡したもようです。第二砲兵は、人員はあるもののミサイルがありません。今我が国にある弾道ミサイルは、移動式のものと、生き残ったサイロ58ヵ所、それにSSBNです。しかしアメリカを牽制するには十分かと···」「言い訳を聞いてんじゃねえよ!バカもんが!」言い訳をしまくる総参謀長に主席がぶちギレる。

 中国軍は本当にマズイ状況だ。対日戦争では艦隊を潰され、南西諸島に上陸した部隊が包囲されている。対越戦争では核攻撃で陸軍兵士5万人以上が戦死。そして今回のテロ攻撃で海軍が壊滅、兵士20万人と民間人20万人が死亡···。情報社会ではこの情報も直ぐに全国に広まる。被害が大きすぎて隠しきれないのだ。

 「テロリストの身元は分かってんのか?」主席の質問に参謀長が泣きそうな顔で答える。「それが···ウイグルの蜂起はまだしも、テロリストにしては攻撃の効率が良すぎです。おそらく日本が特殊部隊を送り込んだのでしょう。報復をするのなら日本ですね。国民の怒りを解消するためにも、報復は必須でしょう」


その通り、報復は必須だった。反撃も報復もしない共産党への不満で、国内の治安は悪化している。東部では反政府デモが起こり、一部が暴徒化、警官隊と衝突している。内陸部ではウイグル、チベット、トルキスタン人が大規模な暴動を起こし、漢族を虐殺しているとのことだ。日本を叩けば国民の怒りもある程度治まるだろう。



協議の結果、日本への徹底的な報復を行うこととした。中国への軍事介入をちらつかせているアメリカにも攻撃できるが、報復を恐れてそれは中止となった。日本を見せしめにすれば良いだろう。しかし、今の中国軍の力では不十分だ。国内の治安維持で兵力を割かれているからだ。そこで北朝鮮に協力を要請した。北朝鮮も日本に複数の工作員を潜伏させており、テロを行うことは可能だ。それに弾道ミサイルも多数保有している。中国のミサイルと一緒に撃てば、かなりの被害を与えられるだろう。こうして全面的な経済支援、軍事支援を条件に北朝鮮を味方に付けた。




7月14日20:00  東シナ海の深海 中国海軍戦略原潜"(ジン)"

「司令部より攻撃命令です。"21:00に東京、名古屋、大阪、神戸、福岡、那覇にミサイルを発射せよ"とのことです」遂に攻撃命令が出た···。日本によるものと思われるテロ攻撃で、40万もの中国人が死んだ。報復はして当然だ。乗員一同、日本人に何倍にもして返してしてやる気持ちでいた。「了解した。これよりマニュアル通り、発射準備を行う。総員戦闘用意!」艦長の命令で艦内があわただしくなる。1メガトン級核弾頭による攻撃だというのに、皆やる気満々だ。



同時刻  中国 四川 第二砲兵DF-21部隊

「司令部より攻撃命令、"21:00に札幌、三沢、仙台、舞鶴、横須賀、呉、佐世保を攻撃せよ"」第二砲兵、戦略原潜(SSBN)を総動員して(アメリカを牽制するために数十発を残しているが)、日本をミサイル攻撃することとなった。我々はSSBNと違って、衛星や偵察機に発見されるおそれがある。射撃が終わったら素早く撤退しなくてはいけない。

 「ミサイルを起立させろ」大型車(TEL車)に寝かせて搭載されているDF-21弾道ミサイルを起立させ、発射準備を進める。このミサイルには200ktの核弾頭が搭載されている。着弾した周囲20kmを吹き飛ばす威力がある。このミサイルをダミーも含め50発発射する。日本もとても迎撃しきれないだろう。


20:30

発射準備が完了した。北朝鮮でも同じ状況だろう。北朝鮮は予算が少なく、日本ごときに核弾頭は使えないということで通常弾頭となっているが、それでも十分だ。囮としても使える。


20:59  戦略原潜"晋"

「司令部より全部隊へ、射撃用意だ。カウントダウンを開始する。50、49···」「よーし、射撃用意!発射管に海水注入、ロケット燃焼開始」ミサイル発射管の水圧を高める。これでミサイルを押し出し、艦から離れてからブースターに点火、成層圏まで飛んで行く。「10、9、8···」司令部がカウントダウンする。「1番発射用意!」「3、2、1···」「撃て!」「1番発射」射撃管制官が発射キーを回し、JL-2ミサイルが発射され、船体が揺れる。「直ぐに2番の発射用意!」次弾発射には数分時間がかかるため、急いで発射用意をする。「2番発射!」またミサイルが発射される。「3番発射用意!」3番発射管の射撃用意をする。



21:00  沖縄 レーダーサイト

「中国本土、朝鮮半島、東シナ海より複数の飛翔体···ミサイルです!数は···50、60···どんどん増えています!」南西諸島の戦闘で膠着状態が続き、休暇ムードの流れていたこの基地にも緊張が走る。「イージス艦に連絡しろ!大至急だ!ペトリ部隊にも情報報告!」レーダーサイトでミサイルを追尾することになっているが、数が多すぎる。「軌道の計算結果が出ました!着弾予想地域は···東京、横須賀、那覇、名古屋、札幌、三沢···それから仙台、広島、佐世保、神戸···」最悪だ。日本全土の都市、基地に発射されたようだった。「消防庁に報告しろ!」J-ALEATから、着弾するおそれのある地域に消防庁経由で警報が出るようになっている。


同時刻  沖縄上空 アメリカ空軍 AL-1

「ミサイルを捕捉、照射を開始する。」弾道ミサイル迎撃用に開発されたAL-1が初めて実戦で使用される。AL-1は期首にレーザー照射装置を搭載した航空機だ。一応実験では成功したが···。

 「照射してる···よな?」「はい、してますよ···おっ、1発迎撃成功です」ミサイルや砲と違い、発射音がないのでかなり地味だ。しかし迎撃には成功したらしい。「よくやった。引き続き警戒せよ」米軍が日本に試験的に配備したAL-1だが、試験的ゆえ数が少ない。残りはSM-3、PAC-3に迎撃してもらうしかない。



21:05  東京郊外 航空自衛隊ペトリオット部隊

「ミサイル発射情報、ミサイル発射情報、当地域に着弾するおそれがあります···」首都圏でJ-ALEATによる警報が鳴り響く。人口3000万人もの首都圏は大パニックとなった。警察の指示でコンクリート製の建物、地下鉄に避難に人々が避難する。しかし人が多すぎる。とても全員は避難できない。



「SM-3迎撃に成功するも、まだこちらに向かってきている。数は6」AL-1、イージス艦がかなり減らしてくれたが、それでも首都圏だけで6発も撃ち漏らしている。迎撃はかなり難しい。「射程に入り次第迎撃せよ···」しかしなかなか射程に入らない。それもそのはず、PAC-3の射程はたった20kmなのだ。しかも数も少ない。埼玉、静岡に展開している部隊が3発迎撃に成功したそうだが、こちらにはなかなか来ない。


 「ギリギリですが、射程圏内に入りました!」しばらくして報告が入る。「よし、目標を捕捉、攻撃しろ!」すぐさまミサイルが発射された。しかしまた直ぐに報告が入る。「命中まで11秒!間に合いません!」「くそっ!」標的までの距離が遠すぎて、着弾前に撃ち落とせないということだ。弾道ミサイルのターミナル段階の速度はマッハ20。射程圏内ギリギリの射撃ではとても間に合わない。

 だから東京都内にもペトリオットを配備しようと言ったのに。国民の反発で結局郊外での配備となった。もう、どうでもいい。これで国民が死んでも自業自得だ···。隊員たちは放心状態となっていた。自分たちも直ぐに死ぬのだ。平和ボケの国民ごときのために死ぬというのが悔しくてならない。




21:08

中国、北朝鮮から計92発のミサイルが発射された。迎撃できたのは71発。迎撃できなかったものは核弾頭、通常弾頭を含めて、札幌、東京、横須賀、松島、百里、舞鶴、岐阜、築城、新田原、那覇などに着弾。このうち札幌、東京、松島、百里には核弾頭が着弾した。東京では1メガトン級の水爆が新宿の上空700mで炸裂。半径30kmが被害を受けた。練馬区、品川区、中央区の範囲は壊滅状態で、ビルも倒壊した。ほんの一瞬で1945年に逆戻りだ。東京だけで死者は210万人、全国で300万人を超えた。


今回の戦争で中国人、日本人ともに報復に燃え、目が血走っていることだろう。今後の戦闘がより悲惨なものになるのは確かだ。戦闘が起こればの話だが。

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