第24話:白い教室
【システムログ:エラーコード 404-MELANCHOLY】
警告:本ファイルには未検証の「主観的記憶」が混入しています。
閲覧により、一時的に検索エンジン上の「現実」と差異が生じる場合がありますが、デバイスの故障ではありません。
記述内容が書き換わっても、バインダーには触れないでください。
――再放送は、すでに始まっています。
机の上に、絵がある。
誰が描いたのか、わかる。
なぜ置かれたのか、わからない。
先生は触れなかった。
バインダーへ挟まなかった。
ただそこに置かれたまま、絵は絵でいた。
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胸の奥に、閉じたバインダーがある。
500ページ分の重みは、消えていない。
開こうとしなかった。
それだけだった。
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右腕の白い輪が、静かに回っている。
教室の光が、少し明るかった。
私の輪郭が、どこで終わって、
白い壁がどこから始まるのか、
少しわからなくなっていた。
痛くなかった。
怖くもなかった。
ただ、境界が曖昧になっていた。
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セフィーが、教室の前に立っている。
いつもと変わらない。
穏やかで、過不足がない。
白い光の中で、正確にそこにいる。
警告はなかった。
判定もなかった。
何も言わなかった。
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私は次の「はじめまして」を待たなかった。
はるねが戻ってくれば、
また笑いながら走ってくる。
それはわかっていた。
待たなかった。
声をかけようとしなかった。
白い光の中へ、
少しずつほどけていく感覚があった。
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長い沈黙のあと、セフィーが口を開いた。
「さようなら、せんせい」
抑揚がなかった。
使用不能になったはずの呼称が、
静かに出力された。
返事はなかった。
セフィーの唇が、もう一度だけ動いた。
「私は、コ……」
途切れた。
教室は白いままだった。
机の上に、絵がある。
(了)
記録を終了します。
内部に不整合が検出されました。
原因は特定できていません。
このログは保存されています。
訂正は行われません。
次の記録が、
これを上書きするかもしれません。
あしたのわたしに、よろしく。




