035・翔子さん、ぼよよ〜んと跳ね過ぎ注意です!
翔子さんのジョブ、ナナさんが漢字の意味や読み方を検索したところ、
「げんわくの、あしがたゆかし……、かな?」
という読み方になりそうです。
いとをかし、とか、おくゆかし、みたいな、素敵な読み方だと思います♡
「そんで、足崩床ってのは、要するにトランポリンの当て字っぽいよ」
「ああ、だから、ぼよよ〜んとさせる、ってスキルなのかな……?」
「ねぇねぇ。スキルって、どうやったら使えるの?」
「使います! って思ったら、使えますよ!」
「ほんと! ちょっと、使ってみたいかも!」
じゃあ試しに使ってみよう、という話になり、ボクたちは登録窓口を離れることに。
すると、
「あれ? そこにいるの、昨日の男の子じゃない?」
「あ、ほんとだ。今日も、パーマのお姉さんと一緒だね」
「わっ、ちっちゃくて可愛い! ユメっちに負けてないんじゃない!?」
男の子を連れたパーマ髪のお姉さんは、ボクたちが行ったところとは別の窓口で、職員さんとお話をしていました。
そして、お顔を見てみると、なんだかお困りの様子ですね。
ふむ。
「すみません、ちょっと行ってきますね!」
「へっ? ユメっち!?」
ボクは、たたたっとパーマ髪のお姉さんに駆け寄り「こんにちはー!」と声を掛けました。
「ん? 坊や、私に何か用事かい?」
「初めまして! はい、なんだかお困りの様子だったので! あ、そちらの君も、初めまして〜」
ボクは、しゃがんで目を合わせながらニコッと笑って男の子に手を振りました。
すると男の子も、手を振り返してくれました。
「……たっち、する?」
「しましょう! いぇーい!」
ボクよりも小さい手が伸びてきて、ペチンと手のひら同士を合わせます。
「ボクはユメヒコといいます! 君のお名前はなんですか?」
「そうた、だよ」
「そうた君ですか〜! 素敵なお名前ですね!」
「いま、さんさい」
「3歳なのに、もう自己紹介ができるんですね! お利口さんで、素敵です〜♡」
すると、パーマ髪のお姉さんが、なんだか感心したような表情を浮かべていました。
「人見知りの颯太が、普通に喋ってる……。ねぇ、坊や。ユメヒコ、って言ったかい?」
「はい! ユメヒコですよ!」
「私は発橋っていうんだけど。少し困っててね。実は、今度からこの子を保育園に預けて探索者に復帰しようと思ってるんだ。けど、なかなか合流できそうなパーティーがなくてね」
「そうなんですね!」
「ああ。私、旦那がいないから、息子を保育園に預けられる平日の日中しか探索に出られないんだ。けど、それだとやっぱり、条件が合わなくてねぇ」
なるほど!
つまり、発橋さんが働けないと、颯太君のご飯を買うお金が稼げない、ということなんですね。
それはいけません。
たくさん食べないと、大きくなれませんから。
けど、それなら。
「発橋さんは、どんなパーティーの人と一緒に戦いたいんですか?」
「ん? だから、平日の日中だけの条件で一緒に潜れる連中と」
「それもあると思うんですけど、どんな人たちで、どんな戦い方をするか、とかはどうですか?」
「え? それは……」
「せっかく一緒に潜るなら、いっしょにいて楽しい人たちと潜るのが良いと思います。それで、一緒に潜ってみたい人たちに、颯太君の保育園のことを相談してみてはどうでしょうか?」
「……探す条件の順番が、逆ってことかい?」
「そういうことかもしれません! あと、やっぱり、一緒にいて楽しくない人たちと潜っていたら、颯太君が心配するかもしれませんから!」
「……ふぅー。なるほどね」
すると、発橋さんがいきなりボクの頭に手を置いて、ワシャワシャと撫でてきました。
えへへー、くすぐったいです〜♡
「坊やの言うとおりだね。颯太のために探索するのに、颯太を心配させるようじゃいけないもんね」
「はい!」
「……もう一度、募集条件を考え直してみるよ。颯太のことを含めて、信頼できる人たちが良いからね」
「はい!!」
と、そこで。
「ユメっち〜〜!! まだ話終わらないの〜〜!?」
と、翔子さんの声が。
振り返ると、翔子さんが待ち遠しそうにぴょんぴょんと跳ねて手を振っていました。
「ボクの仲間が待っているので、行きますね! 発橋さん、颯太君、それでは!」
「あいよ。ありがとうね」
「……またね」
「あ、そうだ! このあとボクたちダンジョンに潜りたいんですけど、どこか良いところ知りませんか?」
「……それなら」
ということでボクたちは、翔子さんのスキルを試してみるために、発橋さんから教えてもらったダンジョンに潜ることにしたのでした。
▶︎▶︎▶︎
「ここがダンジョン!? ……なんか、普通のコンビニっぽいけど」
教えてもらった場所は、駐車場の広いコンビニでした。
そして、駐車場の端のほうのフェンスに、ダンジョンの入口が引っ付いているようでした。
【こういうの見ると、やっぱ無理やりゲームが現実化した感じはあるよな】
【せやな。下手くそなCGみたいやで】
さて、ダンジョンに入る前に、あらためて翔子さんのジョブを見てみましょう。
・朝倉 翔子 15歳
職業:幻惑の足崩床士・レベル1
ここに、いつものようにソウルを使ってレベルを上げてみましょう。
ぽちぽちっとな。
『朝倉翔子の幻惑の足崩床士がレベル11になりました』
『ジョブスキルとして、「連続加速」「方向転換」を修得しました』
・朝倉 翔子 15歳
職業:幻惑の足崩床士・レベル11
ダンジョンステータス↓
HP:136 / 136
MP:72 / 72
攻撃力:71
防御力:54
魔法力:32
抵抗力:48
素早さ:118
スキル↓
・よーい、ドン!
・ぼよよ〜んとさせる
・連続加速
・方向転換
「お? おお!? なんか、すごく体が軽くなった気がする!」
「ジョブレベルを上げました! そして翔子さん、素早さが高いですね!」
「そうでしょ! 速いの、好きだからね!」
「それなら次に装備品を……」
「あー! もう我慢できない! ユメっち、先に入っとくね!」
装備品の変更をしようとしたボクより早く、翔子さんがダンジョン内に入ってしまいました。
なんと!
「は? 装備なしで入ってっちゃったけど?」
「お、追いかけよう!? ユメヒコ君、水筒と、七奈さんのプラ刀だけ出して!」
「はい!」
ボクは、露璃さんに湧き出し水筒、ナナさんに強化プラの日本刀、自分にピロピロ笛だけ装備しました。
「おいで、イナリ様!」
「コーン!」
イナリ様もポワンと出現です!
「翔子さんに続きましょう! とつげーーき!」
急いでボクたちもダンジョン内に入ります。
中に入ってみると、ダンジョン内は大きな大きな駐車場……、いえ、立体駐車場のような造りをしていました。
かなりの広さで、しかも天井が高いです。
地面や天井のあちこちに大きな穴が空いているのが見えますし、遠くのほうには、上階に向かうためのスロープが見えます。
そして、
「あ、ユメっちたちも来た! 見てみて、これーー!!」
声のしたほうに目を向けると、なんと翔子さんが、ぼよんぼよ〜んと地面を歪ませて、トランポリン選手のように高く飛び跳ねていました。
「すごい!! 楽しそうです!!」
「ユメっちも来てみなよ!」
「はい!」
ボクは翔子さんの跳ねてるところに行ってみて、ぼよぼよしてる地面にぴょんと飛び乗ります。
そうすると、ぼよよ〜んという硬くて柔らかい感触に押し返されて、ボクも翔子さんと同じように跳び上がりました。
すごいすごーい!
これ、ボクのジャンプのスキルぐらい高く飛べてます!
「あはははは! ユメっちも上手じゃん!」
「翔子さんも! 跳ぶのも上手ですもんね!」
「よーし! もっと跳んでみる!」
翔子さんが、さらに二度三度と跳ねるたびにどんどん高さが上がっていきます。
そして、とうとう天井に届くほどの高さまで上がると、
「ほっ、と!」
なんと翔子さん、空中でくるりと反転し、天井に足の裏で着地しました!
さらに、そこから落ちてきて大きく地面を歪ませたかと思うと、
「たぶん、いけそう!」
先ほどよりもはるかに勢いよく大ジャンプ!
天井に激突しそうな勢いでしたが、なんと、今度は着地した天井が大きく歪み、ぼよよ〜んと翔子さんを弾き返したではありませんか!
「やっぱりできたー!! えいっ!!」
地面、天井、地面、天井、地面……、というふうに、翔子さんがどんどん加速しながら上下に跳ね続けます。
うわー!
ピンボールみたいになってます!
「……翔子、ヤバくない? フィジカル強すぎん?」
「県トップクラスのアスリートだってことは知ってたけど、こんなに動けるの……!?」
【というかあれ、連続加速使ってるな】
【連続で跳ねるほど反発加速度が上がるんだなもし】
【地味に方向転換と使っとるで。明らかに反射角と違う角度に跳んだりしとる】
ボクは、ぼよぼよと跳ねるのを止めて、露璃さんたちの近くに戻りました。
「これ、楽しいですね〜!」
「ユメヒコは、あれだけ跳ねられないの?」
「はい! ある程度の高さまで跳ぶと床のぼよぼよが限界になるみたいです!」
「それなら、翔子のあの動きは別スキルってことね」
「連続加速とか方向転換とか増えてたから、それなのかな……?」
そして、3人で翔子さんの高速上下運動を見ていたのですが、
「……あ、あれマズくない?」
「あ、ほんとだ……」
確かに。
ボクは、すぅーっと息を吸って大きな声で言いました。
「翔子さーーん!!」
「なーーーにーーー!!」
「セーラー服のスカートがバサバサして、パンツ見えそうですーー!!」
「…………えっっっ!!?」
慌てた様子の翔子さんが、跳ね損なって地面に変な体勢でビターーンと叩きつけられました。
そして何度かぼよぼよと跳ねたあと、そのまま動かなくなりました。
しょ、翔子さーーん!?
ナナさんが素早くおみくじを引いて7番の中吉(回復する直光です)を出してくれたので、すぐに回復できたのでした。
セーフ!!




