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軍事愛好家の転生記  作者: エアアンテーク
国家反逆罪
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王都事変 後編

 隣には元の姿に戻ったロースターがいる。 

 ヒトラーは引き出しから緑と紫のポーションを出すと、緑のポーションを差し出す。おそらく治癒ポーションだろう。


「飲むといい」


 俺は疑ったがロースターは大丈夫だと言ったので半分だけそれを飲み、もう半分をトレディアに渡すようロースターに言った。


 少しすると歩ける程度には回復したトレディアとロースターがこちらにくる。

 

「豊さん、あの壁に穴を開けれますか?」

「わかった」

 俺は『パンツァーファウスト』を召喚し壁に大きな穴を開けた。


 ロースターはその穴から市民に呼びかけるように拡声魔術を通じて演説を始めた。隣にはロースターがいる。


 「私は、ライナット王国第一王女、マズル・ロースターです。」


 その後に綴られたのはこの国の魔族と共に歩んだ歴史、協調の素晴らしさ、ヒトラーの悪行だった。わかりやすい内容でどこか人を惹きつける素晴らしさがあった。


 ロースターが演説してる中、俺はヒトラーと向き合い、再度ワルサーPPKを構える。


「君は、魔族を悪だとは思わんかね」

「思わないな」

「奴らは醜い見た目をし、知能も低い。人族以下の淘汰されるべき生物だとは思わんかね」

「思わないな」

「奴らは一人一人の能力は人族に勝っているが、奴らは団結しようとしない。これはチャンスだ、我々が団結し、人族が繁栄できる生存権を確保するべきだ」

「くだらないな。魔族は団結しないわけじゃない。個人を大事にする思想なだけだ。人と仲良くもする。現に俺とそこにいる魔族、トレディアは仲間だ」

「奴らは団結したら脅威となる、団結させないためにも今ここで絶滅させるべきだとは思わんかね」


 実際、魔族は国を作らない。魔族が住む場所にも町はあるが人のように町長がいたりするわけじゃない。そういう上下関係はせいぜい集落の族長かそれ以外、といった程度だ。


「遺言はそれだけか?」

「私は、また負けたのだな...」

「そうだな...」

「最後に一つだけいいかね」


 そう言うと奴は紫色のポーションの蓋を開け一気に飲み干した。そして叫ぶ。


「Sieg Heil」


 奴がそう言い終わったあと、俺は奴の頭に銃弾を撃ち込んだ。


 













 ロースターをトレディアに預け、俺は急いでアレス達と合流する。


 角を曲がった先には人がいた。だが見えたのはアレスや莞爾ではなく、10人程度の男だった。


「お、戻ってきましたか。貴方達のポーションは非常に美味しかったですよ」


 そこにいたのはアレスと対峙してたデルタだった。俺が最後にやつを見た時アレスに腹を刺されていたはずだが奴はピンピンしていた。おそらく俺らの治癒ポーションを飲んだのだろう。そこには瓶が4つ落ちていた。


「ヒトラーは殺した。親衛隊隊長もだ」

「嘘はいけませんよ」


 アレスと莞爾は倒れている。奇跡的に息はまだあるようだが間違いなく致命傷だ。正直、ここから逃げ出せるビジョンが見えない。


「私と一対一で戦いましょう。貴方が勝ったらこの2人を連れてここを去っていいですよ」


 今の俺はいくらポーションを飲んだとはいえ、半分しか飲まなかったため、ほぼ満身創痍だ。勝てる気がしない。だがそれ以外に道もない。


「わかった」


 次の瞬間、俺は一気に駆け出し奴に斬り掛かる。勝機は一瞬、超短期決戦だ。


 だが、現実は無常だった。乾坤一擲の俺の一撃は簡単に躱わされ、奴の一撃が深々と俺の背中を切り裂いた。


 俺ら3人は仲良く倒れ込んだ。


「じゃあね、貴方達」


 ああ、死ぬのか...結局、俺らは対人戦で勝てないのか。


 そう思った時後ろから声が聞こえてきた。


「待てぇぇぇぇぇぇ」


後ろからとてつもない速度で何かが来ると、それはデルタにぶつかった。その正体は騎士団長、アンテークさんだった。

そのまま、アンテークさんとデルタによる白兵戦が始まる。


「久しぶりだなデルタ」

「そちらこそ、お元気なようで何よりです」


 軽い会話を交わしているが白兵戦そのものは異次元だ。


「国王陛下を裏切りヒトラーとか言う奴についたんだってな」

「ヒトラー様はそれほどまでに素晴らしいのです。どうです?貴方もこちら側に来ませんか?」


「断る」


 そう言うと、アンテークさんは距離をとり、大上段に剣を構える。何かを察知したデルタも又、剣を中段に構え迎え撃とうとする。


『最重の一撃』

『躱水』


 次の瞬間、アンテークさんはとてつもない速さでデルタに迫る。そしてそのまま一気に振り下ろした。デルタはその一撃を往なそうとして剣を交えた。その刹那デルタの顔色が変わる。


「まさか....これほどまでに重いとは....」


 力で押し込まれたデルタはそのまま頭から真っ二つになった。


 後ろから足音が聞こえる。少しすると騎士と民衆が見える。どうやら蜂起は成功したらしい。そのあと、デルタの近くにいた奴らは降参した。俺もアレスも莞爾も死にかけているがまだ死んではいない。トレディアも無事だろう。


 こうして、ライナット王国史に残る世紀の大事件、『王都事変』は幕を下ろした。

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