王都事変 中編
敵は1人、こっちは2人、数的には有利、勝機はある。
『複製』
そう言うと、奴は2人に増えた。分身の術か何かだろうか....だが、数的有利がなくなったのは痛い。
「じゃあ、1対1で正々堂々といきましょうか」
そう言うと、分身した奴の片方がこっちに突っ込んできた。急いで武器をナイフに持ち変える。そうして俺らは白兵戦になる。トレディアは互角の戦いをしているが、俺は防戦一方だ。だんだんと肉が削れていってるのがわかる。
芯は外しているが、間違いなく技術、体力、全てにおいて劣っている。俺はなんとかしてこの状況を早く打破しなければならない。持久戦になったらますます不利になる。そんな中トレディアが魔術を使う。
「氷矢」
「火壁」
使った魔術は悲しくも手前で落とされてしまう。だが、それで良かったのだ。火の壁で相手の視界を奪った隙に敵に突っ込んだ。そして、火の壁に向かって思い切り剣を突き刺した。勝ったと思った。
「空間認知」
やつはそれを防いだのだ。
「知ってるか?通常の探索魔術は4級だ。だが、3級になると近くの空間を立体的に、かつ視認できないところまで把握できる様になるんだぜ?」
探索魔術、たしか莞爾が前、電探とか言って使ってたやつか。あれの進化系はこれなのか。
「故に私は奇襲では倒せない」
「なら、正面から打ち破るのみ」
トレディアはそのまま再度突っ込み斬り合いに持ち込む。だが、その斬り合いの中に魔術も混ぜ込んだ。
「氷連矢」
「火壁」
「石矢」
「石壁」
魔術は全て迎撃される。やはり勝ち筋は剣しかない。
俺は防戦一方の中、唯一の策を見出す。まず、無理やり攻撃に出る。その代償として俺は腹を刺された。その状態で俺はナイフを奴に向かって刺そうとする。それを奴は剣で受け止めた。俺はその剣を死ぬ気で握る。そしてナイフを戻す。すると奴はもう一つの剣を抜き俺の頭めがけて振り下ろす。俺はそれをギリギリまで引きつける。まだだ、もう少し引きつけろ。コンマ1秒が勝敗わわける。
ギリギリまでやつの剣を引きつけた時、俺はナイフを奴に刺そうとする。奴は両手が塞がっている。しかも今から振りかぶっている剣を防御には回すことは不可能だ。そのため、やつは体術かわす。俺のナイフの突きはその体術でかわされたが今のやつは体勢が悪い。しかも剣を間に合わない防御にまわそうとしたせいで剣も中途半端な位置にある。
「体勢が悪いんじゃないのか?」
次の瞬間、俺はナイフの刃先を奴に向かって飛ばす。このナイフはスペツナズナイフだ。奴の腹に深々と刺さると、奴の分身は消えた。
「分身がやられたか。やっぱ能力50%減だと相手にならないな」
そう言うとやつはトレディアとの距離を取り再度構え直す。
「トレディア、俺は援護に回る」
「わかった」
俺らも前衛と後衛に別れ、再度向き直す。そして、トレディアが口火を切る。次に始まるのは剣による白兵戦。その速さは過去類を見ないほどだった。そこに俺は銃弾を撃ち込む。一発一発が正確なその弾はこの戦いにおいてかなりの意味を持つ。
「あいつの魔術は見たことがないな....土壁」
そう言うとトレディアと俺の前に大きな壁ができた。それは部屋を2つに分けた。そこで俺は魔術を唱える。
「穿孔」
次の瞬間、その壁には大きな穴が空いた。そしてその穴から再度援護射撃を開始する。
「その魔術使えるのかよ。」
この世界での土系統魔術は非常に厄介だ。火や水、雷などど違って、特定の不利魔術を持たない。だが、そんな土に対抗できるのがこの穿孔魔術だ。
「魔的剣士に魔術と見たことない攻撃をしてくる厄介な奴による2対1....不利だな....」
そう言うとやつはこちらに突っ込んできた。再度トレディアとの近距離戦が始まる。その間、俺は治癒ポーションを飲む。これで腹部の傷は治った。
そして、援護射撃を再度しようとした時、急に力が抜けていく感覚があった。なんと言うか、バフが消えた感じだ。
次の瞬間、トレディアはみるみる劣勢に追い込まれていく。あたりには鮮血が舞っている。まずい....俺はトレディアの方にむかう。
「体力切れか?」
トレディアは軽口を変える余裕もない。
「クラッシュグラス」
次の瞬間俺らのバックからパリンという音がする。慌てて見るとポーションの瓶が粉々に割れていた。あれはポーションを破壊する魔術か....
トレディアはバックステップで距離をとると、俺と並ぶ。そして魔術を唱える。
「超脚力向上」
「超腕速向上」
間違いない、トレディアは次の一撃に全てを賭けるつもりだ。なら俺もやるしかない。俺はナイフを両手に構える。
次の瞬間、トレディアは過去最速の踏み込みを見せる。それはまるで音速のようだった。次に放たれるのは過去最速の横一文字。奴はそれをギリギリで受け止める。
だが、そのすぐ後に俺は奴の腹にナイフを刺す。まともにいった。勝てると思った。
「グフッ....」
奴はそう言いながら剣に魔力を込め、俺らとの距離を無理やり離す。何かやばい。俺は手榴弾を奴に投げ込む。
「飛翔斬」
次の瞬間、奴は飛ぶ斬撃を繰り出した。一瞬だった。俺らはそれをモロにくらう。声を上げることもできず俺らは地面へと倒れた。
だが、奴はガードを捨てていた。故に俺の手榴弾をまともにくらった。奴も地面に倒れた。
俺ら3人は地面に倒れた。だが、やつは剣を杖にしながら立ち上がってきた。そして話す。
「お前ら、なかなかに強かったぜ。だが、甘かったな」
そう言うと奴は剣を振り上げる。負けたのか....
だが、奴の顔は驚いたような顔をしていた。
次の刹那、俺の後ろから乾いた爆発音が何度も響き渡る。それはまさしく銃を発砲する時の音だ。まるでマシンガンのような音の後、ターレットを見るとそこには原型をとどめず蜂の巣になった奴がいた。しかし、俺の後ろを見ても誰もいない。
「それは....ずりぃよ....」
そう言うと奴は死んだ。わけがわからない....だが、勝ったのだ。
俺は気合いで立ち上がる。だが、トレディアは今までの傷もあり、立ち上がることはできない。
俺は倒れかけながらもワルサーPPKを召喚しヒトラーの目の前に立つ。そして銃を突きつけた。




