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32_職人街の特殊具工房_前編

棚卸から数日後、ライガは解体場の若手マリオと共に職人街へと来ていた。

そう、解体場の道具の下見に。


なぜ商店ではなく工房が立ち並ぶ職人街かというと、解体場の道具が汎用性どころか、特殊過ぎて、一般の店では置いておらず、その殆どがオーダーメイドだからだ。オーダーメイドではなくても、そもそも需要がないので、完全受注生産の為、ライガ達は、職人街に来ている。


確かに、小型魔獣を解体する用のナイフや斧は、その辺の道具屋でも売っているが、解体場が必要としているアイテムは、小型だけでなく、自分の身体の何倍もあるオークやジャイアントディア、小型ドラゴンだ。そうなると、自然に道具も大きくなるし、解体場所によっては特殊な形状の物も必要となってくる。


自分の背程よりも大きな解体用の鋸や斧など使う者など、殆どいないだろう。


それに取り出すのは、肉だけではない、角や爪に牙、毛皮に内蔵、そして魔石などありとあらゆるパーツを商品になるようにきれいに取り出す必要がある為、道具が特殊な形状なのだ。


そんな道具類を欲しがる者がいたとしたら、それは冒険者ギルドの解体場や領主様の所の部隊、あとは、大店の肉屋位だろう。


しかも、解体に従事する者も職人の部類になる、となれば、道具が拘りの品になるのは、自然の流れで、一般の店で売っても需要はない。つまり、一般のお店では手に入れられないのである。


確かに一般のお店も工房との繋がりがあるので、お店経由で手に入るが、そこは商売なわけで、しっかりマージンは取られる。であれば、直接工房に行った方が、要望をしっかり伝えられ、且つより安価に手に入るというわけだ。


余談だが、冒険者ギルドで、解体をお願いすると勿論手数料が発生する。




「マリオさんは、もう何をオーダーするのか決まっているのですか?」

「え?あーそうっすね。粗方の目星は。後は鍛冶屋のオヤジと細かい所を詰めようかと思ってるっす。」

「なるほど。」

「ライガさんも、何か気になる事があったら、言ってください!

イバンさんも、ライガさんが言った事もしっかり吸収してこいって言ってましたし。」


「いやいや、俺なんて。武器類なら、ある程度はわかりますが、解体道具なんて、専門外なので、全くと言って良い程、わかりませんよ。」

「またまた~。」

「いえいえ。」


そんな攻防戦のような会話をしていると、丁度お目当ての工房へと到着した。



そこは大型道具を作る工房だけあって、工房としては、大きな建屋だった。

中に入ると、カウンターといくつかの小さなショーケース、あとはサンプルであろう大きな鋸が数本展示してある大きなショーケースが置いてあった。

そして、ライガ達の来訪に気づいたのか、40代位の女性が見ていた伝票から顔を上げる。


「いらっしゃい。あら、イバンさん所のマリオ君じゃない!今日は、イバンさんと一緒じゃないの?」

「は、はい!今日は俺が任されて!」

「まあ!良かったわね!あんた―、イバンさん所のマリオ君が来たわよー!」

と、後ろに控える工房に向かって大きな声でこの家の主を呼ぶ。


「ちょっと、待っててね。うちの人、直ぐ来ると思うから。あら、お隣の方は初めて見る顔ね。これからうちをご贔屓によろしくね。そこの椅子に座って待ってて!今、お茶用意するから!」と一気にしゃべると、パタパタと奥へ入って行ってしまった。


しばらく椅子に腰かけて待っていると、奥から手ぬぐいを首回りに引っ掛け、汗をたっぷりかいたレッドグリズリーを思わせる程のマッチョで巨人な男が出てきた。


「よお、マリオ。待たせたな。今日は、おめえさんが任されたんだって?よろしく頼むぜ。」

と歯をピカっと光らせニカっと笑うレッドグリズリー...もとい、この工房の主。


そして、先ほどの女性が持ってきた特大サイズのエールジョッキ用のコップに入った水を一気にクゥーっと飲み干し、「わりぃ、もう一杯!」と、お替りを要求したのだった。


「よろしくお願いします!あ、おやっさん、こちらはライガさん。ギルドの職員さんっす。今日は、俺の付き添いで一緒に来てもらいました。」

「おう、よろしくな。俺はここの工房のマッシモだ。」

「ライガです。よろしくお願いします。」


「んで、早速だが、何がほしいんだ?」

「えっとですね...。」

と言いながらマリオは懐からのそのそと紙出してきた。

「大型魔獣用の斧と鋸数本、この鋸は片持ち手と両持ち手がほしいっす。あと中型魔獣用の斧と鋸数本、あと抜歯用のペンチと角取り外し用の鋸と、リザード専用の鱗剥がしと、あとは...」

「待て待て待てっ!一気におぼえられねぇよ!全部で何点だ?」

「えっと、1,2...45点っす!」

「おい、今回はやけに買うな。大丈夫なのか?」

「大丈夫っす!まあ、金額出たら、イバンさんと相談するので、結局購入するのは、半分になるかもっすけど...。」

「それにしたって...。だいぶ気合はいっているな。一瞬、おまえさんが独立するのかとおもっちまったぞ。」

「いや、さすがに、それは、まだまだ無理っすよ。」

「ふん。まあ、そうだろうな。」

「えー、おやっさん、ひどいっす。」

「何言ってるんだ。さっき、自分で無理って言ってただろうに。」

「そうっすけどぉ!」

「さて、俺も気合入れて頑張るか。よしっ、上から一つずつ話し合うぞ!」


ん?今話し合うって言ったか?

とライガはふとマッシモが言った事が気になった。


話し合うって、まさか、45点全てのアイテムなのか!

いや、職員としては、道具に一つ一つ気持ちを込めてもらえるのは、うれしい。

うれしいが、一体何時間かける気なんだ~⁉


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