ナカ町へ (1)
それからまた半年が過ぎた。マシウスと話しをした次の日から、ジョシュは一人一人の石炭堀りの鉱夫と話し、その坑道の様子を聞き、鉱夫がいつもやっていることを聞き、自分が感じることと照らし合わせて、伝えて言った。
ジョシュは、まず鉱夫の前の日の収穫を見た。
「おお。これはどうやって見つけたんですか?」
その鉱夫の収穫の中で一番価値のあるものを探し、そうたずねると、皆何かしらの答えを持っていた。
「右中指が決め手さ。こう、ツツツ~っと土の壁を伝っていくわけさ。そうするとね、つるっと一瞬なにかが触るんだな。そこを掘る。それに限る。実はさ、この指はさ…」
それからのことは、ここには、ちょっと書けないことなんだけど、愛する人と二人で過ごす時の何か秘密があったりする。あるいは、
「匂いがするんだよ。その時だけの匂い。それがなかなかわからないから困るんだけど、ふっと匂ったらしめたもんだね。何か考えちゃあいけない。なにも考えない時に匂う。その時はそこにある」
または…、
「暗くなるとさ、ぼーっとして来て、夢の中だかどうか、なんかわからなくなるのさ。そういう時、ジャンヌが耳元でささやく、ほら、今よ! って。で、はっとするんだ。そうすると、もう見つかっているんだ」
その鉱夫の場合、ジャンヌというのは、昔つきあっていた恋人だということだった。
一人一人の鉱夫が石炭を掘る方法は一様ではなく、それぞれがそれぞれに信じている方法があった。一度石炭を多く見つけることがあると、何かしらそれと関連づけて、次にも一山当てようと、皆、それぞれにそれぞれの言葉で何かしらの関係を探っていた。
ジョシュは時には自分でも穴に入り、誰かが言った方法を試してみようとした。でも、同じようにやってみても、ジョシュにはうまく石炭を見つけることはできなかった。ジョシュの中指は何も感じなかったし、匂いもしなかったし、ぼんやりしてきてもジャンヌはジョシュの耳元ではささやかなかった。それでいったい何がわかるというのか? さっぱりわからなかった。
ジョシュは石炭を探す時にどうしていただろう。ジョシュの心はいつも家族と会うことを夢見ていて、家族と一緒に過ごす時間を愛しく思い出し、手は自分の意識とは関係なく、勝手に岩肌を探っていただけだ。
それぞれの鉱夫が愛しく思う物はなんだったろうか。それは人であったり、物であったり、町での遊びであったり、集めるものであったり、自分自身を鍛えることであったり、もうさまざまだった。
ジョシュにはその一つ一つの関係は、さっぱりわからないのだった。
わかったのは、人がそれぞれ持っている方法はその人自身にしかできないということだ。ジョシュがそれを聞き出し、鉱夫がその方法を話すと、その道筋がなんだか見えたような気持ちになる。話せば話すほどその道筋ははっきりしてくるように思える。話を進めるには、自分の身体の部分と物が触れた時の感覚、その時に思い描いていた事柄の関係を考える必要があるが、おもしろいことに、それはその人その人が「わかっている」「何か」なのだ。それは言葉で説明できることではなかった。
ジョシュはただ、ミューリをマシウスの館に連れて来たくなかっただけで、自分が元気なまま家族の元に帰りたかっただけなのだ。それをするだけのために、ジョシュはがんばった。ジョシュはただ、鉱夫が説明できるように手引きをしただけだった。
驚くほどではないにしても、マシウスの館の収穫は、目に見えるようには上がっていた。なにより、鉱夫が仕事をやめることがなくなり、自分のコツを生かし、それを誰かに伝えようとし始めていた。そのおかげで、マシウスはすっかり気を良くしたらしい。自分の方からジョシュの部屋にやって来て、とびらの外にジョシュを呼び出した。そして、言った。
「君に1週間の休みをあげよう!」
ジョシュはうれしかった。金貨を自分の手でミューリに届けることができるのだ。
その休みの日、ナカ町に向かうソリに、ジョシュは乗り込んだ。マシシも一緒だった。
「悪いけど、わし、君に着いて行くよ。君から目を離すことはできないからね。よろしく」
とマシシが言い、ジョシュはがっかりした。
「あれあれ? わしが一緒に行くと、何か都合が悪いのかな?」
とマシシが言った。
ジョシュは何も答える気になれなかった。マシシといっしょでは、せっかく一週間の休みをもらっても、ミューリと子どもたちと会うことはできない。ジョシュは、しょんぼりとうなだれた。
そこにスーメルク人たちが、またもの悲しい曲をハミングし始めたので、ジョシュはもう本当に悲しくなってきてしまった。




