8月9日午後1時3分 工魔科学帝国マンス中枢紅魔城 禁書庫 人形の実験場~「世界を終わらせる斬撃【天に煌めく龍終の捌き】」
「この戦いに13ってあったのかな?」
今終わったのはつまらなく儚い諍い。そんなものに意味を見出すことは難しいだろうと分かったうえで、僕は今は僕のメイドでありメイドでしかない元剣聖アレクシアに尋ねた。
「これは私の持論で申し訳ないのですが、戦い自体に意味を見出すことはとても難しい。戦いに至るまでに何があったのかでその戦いの価値や勝ちが決まります。ネロ君が何を考え鑑みてこの国を夢想し創造したのかは私にはわからない。だからこの戦いの意味や価値というのは私の視点では真の意味では測りかねます。そのうえでこんなものには意味がないと言わせていただきたい。戦いだって諍いだって戦争だってそんなものすべて無意味だと断言したい。断定したい。これは断罪ではないんです。私のただの感想です。戦いなんて物はすべて須らくなくなってしまえばいい、、、いつしかそんな夢物語を胸に抱きながら私は剣を握るようになりました。それは今日も、否いつだって私を救ってくれた勇者の願いです。」
僕にはそう言い切った彼女の赤く輝く金色の剣を携えた瞼から一筋の雫が親友の血にまみれた彼女の顔に落ちたような気がした。
「ごめんなさい、平和主義なんて日和見主義なんて私が言えばただの暴力だ。暴論だ。破壊だ。」
「誤ってない。否謝る必要なんてない。それも否だ。謝るな、、、暴力だっていいじゃないか、暴論だっていいじゃないか、ロジックなんてつまらないもの気にするな。君はそのままでいい、君はそのままでいろ、、、」
僕はゆったりと息を吸った。
「違うな、誤ったのは僕の方だ。こんなもの聞くだけ野暮だ。お前はずっと僕のために戦え、戦いに意味が見い出せないのならそれでいい。」
僕は僕より少し背が高い、アレクシアに飛び掛かるような形で飛び出すような形でアレクシアを抱きしめる。そんな彼女の体がひどく冷えていて、僕の心の滾りを燃えをぶつけようのない怒りを冷やしていくような感覚が熱に浮かされた時につける氷嚢のようで少し心地が良かった。
「坊ちゃま、どこに顔を押し付けているんですか。どこに、、、」
当たり前みたいにアレクシアは異常のない通常通りの日常みたいにアレクシアは僕にツッコンだ。
「君の胸元に住所変更だ。僕の帰る家なんてもうないから、、、」
「ちょっとかわいそうになること言わないでください。ツッコミずらいです。」
そういいながら抱きしめた僕の頭を先ほどより、ゆったりとまったりとアレクシアは優しく撫でた。花みたいに愛でた。
ハグを終えた僕が横を見つめると、フォニイさんがにこやかにニコニコしながら指でHの形を作りこちらを見つめている。
「二人ともH」
「乳繰り合ってんじゃねえよ、、、見てるこっちが恥ずいだろ」
轟さんはそっぽを向きながら本当に恥ずかしそうに言った。意外に案外、帝国三魔卿最強担当の轟さんは一般的な感覚を持っているのかもしれない。
そういった僕たちは禁書庫の階層をリセットし紅魔城の中からゆったりと外に出て行った。この時轟さんはネロさんの死体を埋葬したいらしく、紅魔城の裏門から出て行った。どこまで行ってもまじめな人だなと思った。
◇◇◇
僕とアレクシアはフォニイさんに辺りの様子を見に行くついでに散歩に行こうと誘われノコノコとついてきていた。見回すと帝国の街並みは傷がついている。ところどころに隕石が落ちたクレーターのような穴があるし、焦げ跡のような傷もある。ずっと紅魔城にいる僕にはわからなかったが、ネロさんが言った通り今日ここで起こったのは正真正銘の戦争だったのだろう。
「マスターと剣聖様は付き合ってるんですか?」
帝国の三魔卿最恐担当のフォニイさんはにやにやしながら聞いてきた。まだ彼女は造花の加護のコピーを解除していないので、アレクシアがアレクシアに聞いているみたいで見ていると混乱する。困惑する。後この人はいつでも俗だなと言いたくなる。
「えっと、えーっとどうなんですかね?どうなんだろうね?坊ちゃま的にはどうっすか?」
アレクシアは顔を少し紅潮させながら、もじもじして僕に顔を向けた。こいつはこいつで舞い上がりすぎだろ。好きな子を目の前にした中学生男子かお前は、、、
「僕はアレクシアの事を愛しているよ、、、この感情はメイドとしてだけではない。別にそれが何とは言わないのだけれどさ、、、恥ずいし」
ここは僕が男の子になることにした。その瞬間アレクシアの頬が桃からトマトに変わった。このままいくとリコピン本体になってしまうのではないかと僕は心底心配になった。できるなら心肺停止はやめてくれ、そしてもっとできるならば僕の心配を停止させてくれ、、、やっぱり恥ずいわ。
「わーお」
フォニイさんは言い出しっぺのくせに他人事だ、でもそのふわりふわりかつのらりくらりとした感じは彼女らしいとも言えた。
そんなことを話していると、工魔科学帝国マンスの紅魔城近辺の噴水広場までたどり着く。
そこには一人の龍人族の死体と一本の大きな太刀が置いてある。ここで何か大きな戦いがあったのだろうか?アレクシアはその大きな太刀を見て硬直している。硬く固まっている。
「レオンさん、アレクシアさん今日は本当に本当にありがとうございました。」
そういった瞬間フォニイさんの雰囲気が変わる。
「どうしたんですか?」
僕はなんだか嫌な予感がして、すこし焦った声で聞いた。
「そうですね単刀直入に言います。私はただの裏切り者ではありません。」
「それって、、、」
「裏切りの裏切り者です。私は本当は帝国の最恐なんかじゃありません。ただの器です。恰好よく言えば天海衆第四師団団長造花のフォニイ。レオン様と同じくランスロットを愛するものです。この太刀を見て剣聖も気づいたようですね」
「坊ちゃま離れて!」
「そんなに怖がらないでも大丈夫ですよ。世界が終わるだけですから、、、」
フォニイは本当に世界最後の日を夢に見るみたいな声色で言った。虚空を見つめて言った。
「は?」
僕は思ったままを言った。
フォニイさんはその太刀にゆったりと近づいてそれを拾い上げる。
「剣聖の加護スキル3 世界を終わらせる斬撃【天に煌めく龍終の捌き】」
そうフォニイさんが言うと辺り一帯が天を貫く剣のような光に包まれる。
その瞬間光の中でアレクシアをコピーしていたフォニイさんの姿が段々とそれでいて淡々と変わっていく。そして当たり前みたいに、その変化が終わる。
光が明けた時、そこにいた人物は中性的な少し長い髪とそれでいてアレクシアの柔らかい雰囲気とは異なる切れ味の鋭い名刀のような顔つきの背の高い女性だ。しかしアレクシアと同じ部分もあった、目だ。朱く輝く目に金色の剣が刻印された剣眼ソドスフィア。それを持っている。姿はアレクシアではないのに、剣聖は一世代につき一人しかいないはずなのに、、、
その女性は自身の体を見つめる。
「彼女はやったようだね」
ゆったりとそれでいてさっぱりとほほ笑みながらその人はそういった。




