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ヒノキの棒を持った、最強の野良メイド

 僕はよくあるライトノベルみたいに異世界に転生してきた。


 もともとの僕の人生は凪のように平凡なものだったのだけれど、それを反省しできるだけ効率的にかつ刺激的に生きることを目指した僕は生まれてこの方大抵のことがうまく行った。

 

 僕レオン・ライオネルのことをある人は神童と呼んだ。


 偉大なものになっていくのだろうという事を領内のだれもが疑わなかった。


 かくいう僕自身だって自分が天才であるという事を疑いもしなかった。

 

 その理由は単純だった。僕は言葉を覚えるよりも早くお兄様の見様見真似で剣を振り、文字を覚えるよりも早くお姉さまの見よう見まねで軽い火の粉を出す魔法を使って見せたというからだ。


 果ては勇者か、はたまた賢者か。ガルダお兄様とハアルプお姉さまはいつも僕がどちらになるかで口喧嘩をしていた。

 

 でも実を言うと僕が成りたかったのは、勇者でもなければ賢者でもない僕のお母さまがよく読み聞かせてくれた、ランスロット英雄譚というおとぎ話に出てくる剣聖というものにあこがれていた。 


 普段は鎧に身を包んでいて、どんな人なのか誰も知らないというのもミステリアスでなんだか格好良かった。


 だから僕は将来ランスロットみたいな剣聖になりたかった


 あいつが僕の前に現れるまでは、、、


 齢にして五、六歳のころだっただろうか?僕は父や母に黙って朝早く領内の城下町に遊びに出かけていた。そんな時町の中にある酒場の前で僕に話しかけてくる、女性。


 「君とても育ちがよさそうですね」


 髪は黒色のショートボブで体格はスリムかつ仕草にどこか品がある人だった。恰好を見るからに館の中にいるメイドの人たちと同じような感じだ。


 野良メイドという奴だろうか?でも少しだけまだお酒の匂いが香っていた。


 「うーん多分そこそこだと思います」僕は覚えたてのこの世界の言語の敬語を使ってたどたどしくはあるが、できる限り謙遜しながら言った。

 

 「少年、何か食べ物は持っていませんか?できればお肉とかだったらお姉さん嬉しいのですけれども」

 

 「残念ながら今は何も持ち合わせてはいません。けれどお家に行けば、爺やが何か作ってくれると思います」


 「本当ですか少年、それはありがたい早速案内してもらうことは出来ますか?」彼女はよだれをたらしながら目をキラキラさせて僕を見つめる。


 「申し訳ないのですが。僕黙って家から出てきちゃってて、、」


 「なるほどそういう訳かでは、ここからはお姉さんとの秘密の同盟です。」


 「秘密の同盟?」


 「そうです、まず君は夜中寝ぼけて町まで下りてきてしまった。というのです」


 「はい」


 「そして次に、通りすがりのナイスバディのお姉さんが僕をおうち迄案内してくれた。と言うのです。そうすればだれも不幸にならない。どうですか、この完璧な作戦は」


 なんだその作戦は僕だけ損しているじゃないか、その時もそう思いはしたのだけれど秘密の同盟という言葉がなんだか気になって、僕はその誘いを断りきることは出来なかった。


 そんな話をしていると酒場の中から一人の大男が出てくる。その大男はひどく酔っているようで、メイド服のお姉さんをねめつけながら舌なめずりをする。


 「おいそこの嬢ちゃん、そんなガキなんかよりも俺たちと遊ばないかい?」


 「なんですか?ナンパならお断りします。私は今からこの少年とモーニングの予定があるので」


 「ああん、そんなガキと遊んで何になるんだ?」


 高圧的な態度の大男はメイド服の女性の袖をつかもうとする。


 そこで僕は反射的に道端に落ちていたヒノキの棒を拾い上げその大男の手元に向かって投げつける。


 その棒に当たった大男はこちらをまるで獰猛な野獣みたいににらみつける。ゆったりとこちらに向かってくる大男。


 生まれてこの方、否前世を含めても一度も本物の敵意というものにさらされたことのなかった僕は震えながら大きなこん棒ほどもある腕が僕の前で振り上げられるのを眺めることしかできない。


 殴られるそう思った瞬間怖くて涙が出そうになる。


 「ドスン」鈍い音が日の出の空に響く。でもそれは僕が殴られた音ではない。


 大男がその音の後ゆったりと倒れていく。


 次の瞬間ぼくの目の前にいたのは、その大男ではなく。笑顔のメイド服を着て僕が投げたヒノキの棒を持った彼女だった。


 「少年ナイスファイトです!勇者みたいでかっこよかったです」


 「お姉さんが今のやったんですか?」


 「まあそういうことになるかもしれません?」


 「お姉さん名前は何というのですか?」


 「アレクシア」


 「下の名前は?」


 「ランスロット、私の名前はランスロット・アレクシア、ただのしがない棒振りです」


 彼女の名前は僕のお母さまがよく読み聞かせてくれたランスロット英雄譚の主人公と同じ名前だった。僕はこの瞬間自分の中の宝石を見つけたような気持ちになった。


 




 

 



 


 

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