伝説の剣聖もとい野良メイドと僕の共同生活
ヒノキの棒を持ち日の出の空から僕を笑顔で見つめる野良メイド。
その笑顔は前世で生涯独身であり、それゆえにあまり恋愛経験も豊富ではなかった僕の胸をときめかせていた。
「少年、、、、」
「なんですか?」
そこに響いたのはゴロゴロという腹の虫だった。
「すみません。腹が減っては戦は何とやらというじゃないですか?」
「もちろんです!あなたは僕の命の恩人です。できる限りのことはさせてください」
◆
僕たちはこの世界に転生してからの実家である領主の館に戻った。
館に戻った僕はお父様やお母様からこっぴどく叱られた。それに最初は僕が謎の野良メイドを連れてきたことを家族は訝しんだ。
しかし僕の命を救ってくれたという事を説明すると、両親はその後野良メイドもといアレクシアのことを快く向かい入れ一緒に歓迎のモーニングを楽しんだ。そのモーニングの場にて、
「この度をありがとうございました、アレクシア殿」
僕の父である、ラルフ・ライオネルが深々と頭を下げながら礼を言う。はたから見れば、領主である父がメイドに頭を下げるという良い意味で少し歪な光景だった。
ちなみにアレクシアの名前がかの剣聖ランスロットと同じであるという事は家族には一応言わないでおいた。言っても多分信じないだろうけれど。
「いえいえ、むしろ助けていただいたのは私の方なんです。レオン坊ちゃまはまだ幼いというのに輩に絡まれた私の事を守ってくれようとして、とてもできたご子息ですね。」
「いえいえ、まだまだ未熟者ですよ。ところでレオンに聞くところによると、アレクシア殿は今宿を探しているんだとか」
「はい、私の今までの勤め先を先日退職いたしまして」
この勤め先というのがどうやら勇者パーティーの剣聖という役職らしいというのは僕とアレクシアだけの秘密だ。
「なるほど、、、もし良かったらなんですが」
「はい?」
「私の館に泊っていきませんか?」
「私がですか?」
「はい」
「ライオネル家のような名家に、私のようなどこともわからん馬の骨が厄介になるなど、そんなそんな」
そう言いながらもアレクシアはしめしめというような表情をしていた。
「ありがたいことにあなたのように私たちのことを名家などと呼んでくださる方もいるのですが。ここは辺境の地。私たちはそんな大層なものではございません。アレクシア様のためでなくとも幸いなことに空き部屋ならたくさんあるのです。なんせ片田舎ですから」
お母様は気負わせないように少し自虐っぽく言った。
「それでも、私のような野良メイドが何の見返りもなく厄介になるなど申し訳ないことには変わりません。なので、、、」
「なので?」
「ここでレオン・ライオネル坊ちゃまの専属メイドとして雇ってはいただけないでしょうか?」
それを聞いた父様と母様はまるで鳩が豆鉄砲を食ったように目を見開いた。
「元々は息子が命を救ってもらったお礼ですから、アレクシア様が気負う必要はないのよ」
「いえいえ、坊ちゃまに命を救われたのは私も同じです。何せ空腹で死にそうな私をこんなにもおいしいモーニングで満たしてくれたのだから」
「アレクシア様がそれでいいのなら」
「やったー!」
彼女は子供のような無邪気な笑顔ではにかんだ。その笑顔はまるで太陽みたいだと僕はその時思った。この時の彼女の笑顔を僕は一生忘れることは出来ないのだろう。
お父様とお母様は少し困惑しながらもアレクシアが僕たちの屋敷でメイドとして働くことを了承した。
この日から伝説の剣聖もとい野良メイドと僕の共同生活が始まった。




