事後の静寂
熱狂の嵐が去った後の「居心地の良い部屋」には、怠惰で甘い空気が澱のように沈んでいた。
月はさらに高く昇り、銀の光が寝台の上に散らばった純白の布切れ――ビディが身に纏っていた服や下着を静かに照らしている。
「……ふぅ。今夜の君は、いつになく激しかったね」
キロは仰向けに横たわったまま、天井の染みを眺めていた。
肌の上を滑る夜風が心地よい。
彼の白く細い指先は、隣で横たわるビディの、黄金の糸を紡いだような柔らかな髪を気怠げに弄んでいる。
ビディは、キロの腕を枕にし、その胸元に顔を埋めていた。
先ほどまでの情熱的な昂ぶりは影を潜め、今はただ、一人の恋する女としての安らかな寝息と、わずかな熱を帯びた吐息を漏らしている。
「……あなたのせいよ」
ビディが顔を上げず、くぐもった声で呟いた。
その指先が、キロの胸をなぞる。
「最近ちっとも、お相手下さらないのですもの。大聖堂で祈りを捧げていても、あなたのことが、欲しくて欲しくて、堪らなくなっちゃう。……不謹慎かしら」
「神々も、君のような美しい信徒の悩みなら、笑って許してくださるさ」
キロは惚けた微笑を浮かべ、彼女の肩を抱き寄せた。
ビディの柔らかな曲線が、彼の引き締まった身体に密着する。
彼女の肌からは、高貴な香油の香りと、キロと同じ深い夜の匂いがした。
「あー、もうっ、朝が来ないでくれれば良いのに。」
ビディはキロの首筋に、しがみつくように唇を寄せた。
キロは何も答えず、ただ彼女の背中を優しく撫でた。
彼の鋭敏な感覚は、夜明けが近いことを告げている。
窓の外では、夜の終わりの静寂が、ゆっくりと街を包み込んでいった。




