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名柄川羽海という女の日常  作者: TASH/空野輝
関西、脱出と復縁編
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京都観光…… その2

 京都市内でも一番西北にある金閣寺。

 金閣寺金閣寺と言われてるけど、実際には鹿苑寺ろくおんじというらしい。でも皆からは金閣寺と言われているのだからもうそんな名前なんてあってないようなものだ。あたしだって金閣寺と言うぐらいだから。

 そんな晴天の下で輝く金閣寺は素晴らしい物だ。そして池にもその金閣寺が映るほど、通称「逆さ金閣」だったっけか。そんな綺麗な池に上泉はヤクでもやったのかと思うほどバシャバシャ水しぶきを上げて泳いだもんな……しかも観光客と学生が多い中でな……。本当に大問題だ、上泉よ。そんな上泉も今何をしているのか分からない。クラス会にも出てきてなかったし、本当に何をしているんだ、上泉の馬鹿は。


「一枚……写真取る……」

「うーい、ってあたしが撮るの?」


 蘭は頷いて「プリーズショットミー」ってか。アイフォーンを色彩調整で金閣寺が綺麗に写り、ピントが蘭に合う。


「撮るよー」

「うん……」


 パシャッと一枚取って画面右に写真が流される。アイフォーンのこの写真がフェードインするのは案外好きかもしれん。このアイフォーンの無駄な演出は嫌いになれない。


「後であたしにも送ってな」

「分かった……」


 とりあえず、自分も金閣寺単体で一枚撮る。これだけは本当にかかせない。

 っていうか大事だろ、単体で撮るの。


 毎回恒例……なのか分からない各所の解説だけど、金閣寺あたしが知ってる限りの事も交えて解説をするとしよう――と言ってもあたしが知ってるのは金閣寺が一九五〇年に燃えた事位だろうか。金閣寺から出火の一報を聞いて消防隊が駆けつけた頃には既に建物全体に火が燃え移ってて形が骨組みだけになってしまったそうだ。……それで、金閣寺に来た人なら分かるだろうけど、金閣寺は池の傍にあって完全に火の気が無い事、そして謎の寝具が金閣寺近くに置かれてた事から不審火の可能性が出てきて結果、見習い僧侶が逮捕に至った。まぁ人騒がせかつ人外な行動を起こしたけど、実際には重い複雑な気持ちを持っていたようで、事件当時には統合失調症の可能性があったみたいだ。


 でも修復は完了して、今も金閣寺は煌めいている。ここまで完璧に復元出来たのは明治時代に図面が作成されていてこれの通りに作成して完璧っと。……って思ってる人が多いけど、実際には金箔が全体に貼られていたのかは謎らしい、「金箔が全体に貼られていたかもしれませんよ」という推論があって今の状態に至る。でも綺麗にここまで金箔も貼られてるし、放火犯には恨みはあるものの、綺麗になる瞬間でもあったのかもしれないな。


「さて、行くか」

「うん……」


 上泉の話は一生懸命に車の中で話したし、自分も正直よくない話の一つだからそんなネタになるような事でもない。はーぁ、お天道様の下で背伸びをして金閣寺をとっとと出る。……時計を見るとそんなに時間は経ってないから銀閣寺の方にも行ってみるか。




          ※  ※  ※  ※




 車での移動中も相変わらず電子タバコをフカして、自分は以前に鵤さんに教えてもらったひやしあめの缶を手に持っている。チェック柄で薄く生姜が聞いていて夏バテには丁度良さそうだ。今は秋だけど。


「そういえば蘭、こんなの」

「…………?」


 ひやしあめと同時に買ってきたのはモデル雑誌。最近はインターネットからの募集が多いからか、こういう雑誌からの募集は少ないようで小さく端に募集欄が書いてあった。最近はSNSのIDまで書く必要があるとか面倒だな。


「ありがとう……」

「まぁ、気が向いたらで良いと思うよ」


 別にあたしが決める訳じゃないから、曖昧に言ってみた。


 舗装路に舗装路に舗装路……最悪。

 あたしにとっての京都というのは竹原市みたいに石畳で床がガッチガチに固められて、舞妓さんがカツカツと下駄を履いているのがイメージなんだけど、石畳なんて一部で昼間にカツカツ歩いているのはレンタルして着ている人ばかり。高校の時にも思ったけど「京都じゃない」という個人的な風評被害。


「昨日の……夜の……こと……」

「あっ」


 急に思い出したかのように蘭が夜のことをパッと口に出す。

 せっかく忘れていたのに止まっていたタイマーが音も無く進み、絶なタイミングで0になるとは。


「蘭が悪いっ! 蘭が……悪いからねっ!」

「ご、ごめん……」


 その話を今されるとあたしは運転に集中できない。

 スパッと話を切る。もちろん、その後は無言だった。というのも数ヶ月しか共にしていない蘭とは思い出というのが無い。例の〈事件〉の話をしたって空気が悪くなるだけだからその話をしないし、他には出会った話くらいだが、それもパッとした話じゃない。

 結果――


「…………」

「…………」


 両者、窓を見て風景を楽しむ事ぐらいしか出来ない。


「お昼……」


 蘭がつぶやいたのを聞いて車内のアナログ時計を見てみる。

 ……もうそんな時間だったか。さてご飯にするとして、あたしが高校の時に食べたのはタクシーの運転手に勧められたうどん屋さんだったが、流石に六年前の記憶からうどん屋の名前をピンポイントに特定するのは無理、写真も撮ってなかったしうどんの写真も撮ってない。牛うどんを食べたのは知っている。でもそれだけだ。……まぁうどんなんて全国何処でも食べれる主食だし、そんな一つを集中して検索した所で何もありつけない。という事で今日の名物を食べる事にしよう。なんだろうか?


「蘭、京都 名物。検索」

「うん……」


 アイフォーンを取り出して検索欄にその通り入れる。


「にしんそば……」

「にしんそば。それでお店は?」

「どこでも」

「はい、どこでも」


 ナビ通りに進んで車を停めてその辺りで店を探すとしよう。

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