始まり
フォンツ王国、ここは国の外が高い外壁で覆われており外壁の内部には煉瓦造りの民家や店などが立ち並ぶ栄えた国である。
そして、この国の王城は国のど真ん中に位置している。
フォンツ王国の王子であるレオンは生まれつき綺麗な白髪と赤い瞳をもつ十八歳の少年だ。
その王城にてある日の深夜。住むレオンの部屋で、
「…あ゛あ゛ぁう゛う゛う゛」
レオンは部屋の角にうずくまりうなされていた。
「違う! 僕じゃない、僕がやったんじゃない。もうやめてくれ!」
レオンは誰かと話している様子だったが、この部屋の中はレオン以外誰もいない。
レオンはベットに顔を突っ伏して頭を掻きむしって、誰かに見られていると考えたのか急いで部屋のカーテンを全て閉め切った。
「もう僕のことを悪く言わないでくれ! 頼む! 頼むからもう話しかけないで!」
レオンはベットにある枕をつかみ、誰もいない壁に思いっきり投げつけた。壁に打ち付けられた枕の中のわたが飛び出している。
レオンは頭を抑え部屋の壁をつたいながら自分の部屋のドアを見つけて。ドアを開けた。
レオンは倒れ込むように自室のドアを開けて外の廊下に出た。廊下を警備していた兵は「王子どこに行かれるのですか?」と問うがレオンはその問いに答えることなく大粒の汗を流しながら、廊下を走り、見張りの兵もレオンのことを追うがそれを振り払いそのまま王城の外に出た。
王城の外の右手には遠征用の馬を飼育している馬小屋があり、数十頭の馬が飼育されている。レオンは馬小屋の入り口すぐ近くの手綱が付けられている馬を適当に引っ張り出して、そして、近くで明かりを灯していた松明を手に取り、馬に飛び乗った。
馬は勢いよく王城の門を蹴破り外に出て、街に出て、レオンは馬の手綱を勢いよく引っ張り馬はどんどん加速していく。見張りの兵たちも追いかけようと試みるがグングンと加速していく馬に追いつけないと考えたのか途中で追うことを諦めた。
レオンを乗せた馬は街の中を国を仕切る外壁に向かってまっすぐ進み、やがてその外壁の目の前まで来た。
ここでも番兵たちはこの時間に国の内側から外に出ようとする者などいると想定しておらず、驚いた様子だった。そして、馬に乗っているレオンに問いかけた。
「レオン様、どうされましたか? 夜遅くに国外に出るなんて」
玉のように大粒の汗をかいているレオンは間髪入れず言った。
「いいから! 早く門を開けて!」
「し、しかし…」
「いいから!!」
番兵は王子の言うこととあればと国外に出る門を開いた。門が開くとすぐに馬はフォンツ王国の外に勢いよく飛び出して行った。
国外には荒野が広がっており深夜の時間は吸い込まれそうな闇の深さをしている。
そのまままっすぐに馬を走らせると森の中へと入っていった、馬も全速力で茂み中を走って十五分ほど行くと大きな谷が見えた。
到着した場所から右に視線をやると、松明が二本橋の両端に立てられており橋の入り口を明るく照らし出していた。この橋はコンクリートで作られており、横幅は五人くらいが横に並んで歩けそうな幅であり、橋の両端には腰の高さほどの手すりがある。そして、この橋は向こう側は暗くて見えないが谷のこちら側とあちら側を繋ぐ橋のようだった。
レオンは橋の方へ近づいて持っている松明で谷の底の方を照らし出そうとしてみるが、暗すぎて何も見えない状況だった。
レオンはまだ滝のような汗と動悸がおさまらないでいるが、そんなことは関係ないといった様子で、橋を馬に乗ってゆっくりと渡り始めた。
やがてレオンが手に持っている松明の明かりだけでは前も後ろもわからない状況になったとろで、レオンは馬から降りた。
まず、レオンは馬に付けられている手綱を外して谷の底に投げ捨て、馬の背中をとんと押すと馬は勢いよく進行してきた方向へ走っていった。そして、橋の上には松明を手に持ったレオン一人になった。
「はあ、はあ」とレオンは荒い呼吸を繰り返し、松明を地面に置いた。そして、腰の高さまである欄干を飛び越え漆黒の闇の中へと真っ逆様に落ちていった。
時が止まったように静かな橋の上でグシャリという音だけが聞こえて。あとは松明のパチパチと燃える音だけが取り残されていた。




