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休憩と会議

「ほー……ここがコートロルムですか」

「ああ。まぁ普通の町だわな。近くに遺跡が結構な数あるから、冒険者が集まる街でもある」


 町をふむふむと言いながら眺める。

 基本的にはゲーム時代のカラカンと町の雰囲気は変わらない。

 文明的、技術的レベルは約500年前の四大国家の時代から変わっていないという事なのだろうか?


「あんまりキョロキョロすんなよ。衛兵でも来たら面倒くさいしな」

「大丈夫でしょう。認識阻害機能付きのフードを被っていますから」

「ああ、これそういうのだったんですね」


 言われて気が付く。確かに門に着く前にアンナさんからもらい受けたこの予備のフードには、魔力を感じる。

 

「目元を隠すだけでなく、他者からの印象や認識をある程度誤魔化す術式が施されています。普通は衛兵にフードをとれと言われるようなところでも、これで誤魔化しが効きます」

「そんな便利なものなんですか、これ」

「ええ。ですがまぁ、ある程度腕利きの冒険者や、異端審問官などには効きませんが」


 ほへーと感心しながらフードを触ると、アンナさんに慌てた様子で手を止められた。


「あまり触らないでください。フードを上げてしまうと術式が途切れるんです」

「あ、はい。すみません」


 大人しく従い、再び町を眺める。

 石造りの建物が立ち並ぶ、極々普通の街並みだ。

 ゲーム時代に見たものがリアルになっただけで、特に目新しいものはない。


「おい、ついたぞ。宿屋だ」

「あ、着いたんですか?」


 言われてクロウさんが指さす建物を見る。

 ラビッツグロウというその宿屋は、結構大きな建物だった。

 看板もピカピカで、比較的新しめの建物に見える。


「とりあえず部屋に戻って、クロウの毒の治療をしましょうか」

「そうしてくれ、もう腕が上がらん」


 受付にて私の分の部屋を頼んでから、一旦アンナさんとクロウさんの相部屋に向かう。

 アンナさんは部屋の中に置いてあった荷物の中から薬を取り出すと、クロウさんの腕に塗り、しばらく呪文を唱えて毒を治療した。

 

「ふう、やっと一息だぜ」


 クロウさんはそう言って腕を伸ばし手のひらをぐっと握ったり放したりしている。

 毒は完全に治療されたようだった。


「少し休んでから、これからの予定を話しましょうか。メリアさん、ハーブティーはいかがですか?」

「あ、はい。いただきます」


 そう言われ魔術で沸かした湯でいれたハーブティーをもらうと、ほっとする香りと共に、少しだけ体の力が抜けた。

 それからしばらくのんびりとして。


「では、これからどうするかを決めましょうか」


 アンナさんがそう切り出して、地図を持ってくるのをかわぎりに、私たちは今後の予定を話し始めた。


「これが現在の世界地図です。私たちは今此処、モザビア大陸南東にあるコートロルムにいます」


 アンナさんが指さす方向を見るが、地形はかなり……というか、まるっきり別物になっていて、ゲーム時代の知識はあてになりそうになかった。


「ここからどこへ向かえばヴァルナハトがあるかがわかれば、話は早いのですが」

「いや、すいません……。まるっきり地図が別物になっていて、あんましあてになりそうにありません……」


 南西にあったはずの今の場所が南東に移動しているあたり、殆ど知識はあてにならなさそうだ。


「まあ、五百年前は地形が変わるレベルで戦争していたって伝説だしな……。だが、類似点とかはないのか?」

 

 クロウさんがそう言うが、私は首をかしげるばかりだ。


「う、うーん。四大国家時代は真ん中に穴が開いた、大体四角い形をしていたんですが……」


 改めて地図を見る。


「今いるモザビア大陸がこの三日月型の大陸で……北東の島々は海洋都市同盟レンブルっぽい形ですが……うーん、真ん中のデカい大陸は別の大陸がくっついたみたいな形してますね……。すみません、位置関係滅茶苦茶でわかりません」

「そうですか……。まぁ、五百年前のことなのでしかたありませんね。いつも通り導石を頼っていきましょうか」

「結局、それか……」


 クロウさんがぼやくように呟く。


「ヴァルナハトの場所がわからなかったのは残念ですが、メリアさんにはもう一つお聞きしたいことがあるのです。ヴァルナハトの伝説によれば、そこに入るには証を示す必要がある……とのことだったのですが、何か心当たりはありますか?」

「証、ですか……?あ、あー。言われてみればそんなのあった様な」


 殆どフレーバーテキストのようなアイテムだったが、そんなものが存在していたような記憶はある。

 あれはたしか……チュートリアルクエストをクリアしてもらえたような……なんだっけかな。


「あー……、確か所属を表す紋章石と……、所属国家のファストトラベルに使えた鍵と……、身分を証明するランクカードのことですかね」

「その三つが、ヴァルナハトに入るために必要なものですか?」

「えーっと、多分そうです。この三つはチュートリアルをクリアしたら全員手に入れてましたから」

「ちゅーとりある?ってなんだ?」

「初心者が受ける最初のクエストのことです。これを受けて成功させれば晴れて四大国家の冒険者の仲間入り、みたいな感じでした」

「それはメリアさんが今も持っているのですか?」

「えっと、ちょっとまってください」


 そう言って懐をまさぐるが、何処にもアイテムらしきものは見当たらない。


「と言うか装備さえない……文字通りの無一文だ」

「なさそうですね」

「ダメそうだな」


 無慈悲な現実が降りかかった。畜生、ゲームのステータス再現してるならアイテムも持ち越させろってんだ。


「となると……私たちはヴァルナハトの捜索と合わせて、その三つのアイテムも手に入れなければいけませんね」

「優先度はアイテムの方が上か。ヴァルナハトを見つけても入れませんじゃ意味がねえしな」

「でも……ありますかね?現存してるアイテム」


 三人で顔を合わせて考える。するとアンナさんが思いついた、という表情で導石を私に渡してきた。


「メリアさん、この導石を使ってみてください」

「アンナ?」

「導石は目的のものへ近づく道を示してくれますが、そもそも存在しないものには反応しません。だから、メリアさんが使ってみればそれがあるのか分かります」

「アンナさんがそのまま使うんじゃ駄目なんですか?」

「目的のものをしっかりとイメージ出来ていた方が、導石も反応しやすいですから」

「そうなんですか……。じゃあ、やってみます」


 アンナさんから手渡された導石を持って、アイテムをイメージする。

 すると、三つの光が薄っすらと現れた。


「あるみたいですね……」

「とりあえずは、安心ですかね?」

「おい、俺にゃあ見えねえんだが、何処を差してるんだ?」

「ええっと、ここから北、北西、西に綺麗に三つずつ。この大陸にはありそうにありませんね」

「……下手すりゃ世界旅行になんのか?」

「そうなりますね」

「っかー!面倒くせえな!おい!」

「元から伝説を探すような旅です。明確な手がかりがあるだけありがたいでしょう」


 それで、とアンナさんは続ける。


「問題は何処から行くか、ということですね」

「北の北海諸国は後回しのがいいぜ。今あそこ紛争状態だ」

「であれば、北西の中央大陸、ガンガドラか、西のオルディナになりますが」

「ここからガンガドラまでいくにゃあ、ちょいと時間が掛かり過ぎるぜ。西のオルディナへ行ってからのが良いだろうな」

「……そうなりますね」


 話は大方まとまった。

「それでは」とアンナさんは締めくくるように言う。


「メリアさんも異論ありませんか?」

「はい。何か言えるほど知っていることありませんし」

「では、私たちの次の目標は西のオルディナ大陸ということで。会議を終わりましょう」


 ふう、と一息吐いて、私たちは一旦その場で解散した。


 〇



 その後、メリアさんたちと夕食を食べた後。


「あーあ……」


 自室に入ると、ぼすん、と程よい硬さのベッドに倒れこんで、ため息を吐いた。

 ゲームの世界に来てしまったと思ったら、500年が経っていて、自身は被差別種族のヴァンパイア。助けてくれた人たちは追われる身。

 これからどうなるんだろう?

 なんてことを考えていたら、溜まっていた心労のせいか、直ぐに眠りについてしまった。

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