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邂逅  作者: らいとてん
1/6

さよならは、言わない。祈るのは貴方達の幸せだけ。

暗い路地裏に、追い詰められた青年がいた。

背後の壁に背をつけ、荒い呼吸を繰り返す。

その目前では、眼をギラギラさせた男が拳銃を構えてた。


「お前さえいなければ、俺は!」


叫び、その男が引き金を引こうとした瞬間のことだった。

突如、横道から、一人の女が飛び出してきた。

自分を背後にかばう女性に青年が何かを叫ぶ。


乾いた銃声が、その叫びを打ち消した。


闇夜に鋭く響いたその音がこだまする中で、

女性は、冷たいコンクリートに崩れ落ちた。


青年は女性に駆け寄り、服が汚れるのもかまわず、抱き起こす。

そんな二人を忌々しげに見つつ、

再び引き金を引こうとする男の背後に、

スッと忍び寄る影があった。


影はまだ幼い少女であった。

少女もまた、その手に拳銃を持っていた。

薄暗い街灯の下で、不吉な金属の塊が鈍く光る。

狙いを定めたその影は、震える指に力を込めた。


「コウ様。おやめください」


凛とした声が、その手を止めさせた。

コウは一瞬の躊躇の後、男の首に手刀を入れる。

倒れる男には目もやらず、二人のもとへ駆け寄るコウ。

同時に、どこからともなく、黒服の集団が現れ、男を回収していく。


「カイ」


コウは、震える声で、女性を抱きかかえるカイに呼びかけた。

カイは、うなだれ、そっと首を振った。

女性はカイの腕の中で、目を閉じ、今や息も絶え絶えとなっていた。カイの眉が苦しげに顰められる。


「アヤ。どうして」


その問いかけに、ふっと、アヤが、目を開け、最愛の二人を見た。


彼女にとって彼らは、

守るべき主人であり、

愛すべき家族であり、

愛おしい子供であった。


最期に二人の顔をしっかりと脳裏に焼き付けておこう。

私が行くのが天国にしろ、地獄にしろ、

貴方達にお仕えした、その記憶こそが、

私を救うだろう。


別れの時が近づくのを、彼女は感じた。

泣きそうな顔のコウと悲嘆にくれるカイに、

精一杯の愛情をこめて、微笑みかける。


「カイ様。コウ様」


かすれた声を、必死に、絞り出す。


「どうか、お幸せに」


愛しています。

どうか、悲しまないで。

どうか、笑って。


どうか、この愛しきわが主に幸多からんことを。


最期に、そう祈って、彼女は又の世へと旅立った。


「「アヤ!!」」


あとに残された二人の慟哭を聞くことなく。


こうしてコウとカイにつかえた「アヤ」はその一生を終えた。

物語はここで終わる。

・・・・・・・・・・・・はずだった。


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