↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
3/3

お仕事で稼ぐのです!

 目が覚めると、そこには年季の入った梁の通る天井が広がっていた。


「ノ(・)ア(・)さん、具合はどう?」


 声のあるじは、少し離れたカウンターの向こうに立っていた。

男が横になっていたのは壁側の硬いソファで、丸テーブルを囲む人たちの手元には大きなジョッキや葉巻が目に入る。

酒場……彼は旧街道から町の中へと運ばれていたのだった。


「ノア……?」

「荷物を少し見てしまったのだけれど、中に通行許可証が入っていたからあなたのお名前なのかなって」


 その名に心当たりがない。男は頭を押さえて俯いた。


「かわいそうに、スタンピードのショックで記憶があいまいなのね。私はカリンカ。そしてここはロクリアという町の冒険者ギルドよ。なにかあればいつでも声をかけてね」 


 カリンカは男の名を“ノア”と呼んだが、通行許可証にもやはり覚えはない。

しかし男は彼女の話を信じておくことにした。

理由はいたってシンプル。名乗る名前がないのはなにかと煩わしかったからだ。


 すると、入り口のスイングドアが軽やかな音を立てて開いた。


「おまたせしましたー!勇者さまもお目覚めのようですね!」


 町の外で出会った術士マナは、鞄を下ろすとちょこんとカウンターに腰掛けた。

鞄から取り出したのは採集していたあの珠だ。

先ほどとは別の方法で仕留めたのだろうか、赤のほかにも様々な色のものがある。


「おかえりなさい、マナさん。ポドゾルさんはなんと言ってましたか?」

「やはり本人に来てもらわないとダメだそうです。匠のこだわりってやつですね」


 本人、って……ノアは訝しんで問うた。


「まさか俺のことじゃないだろうな」

「ほかに誰がいるというのですか。勇者さまを丸腰で登録させるわけにはいきません」


 ノアは小さな申し込み用紙と“冒険者心得”と書かれた小冊子を手渡される。

とびきり小さな文字の同意事項を読んでゆくと、気になる項目が目に入った。


「ちょっと待て。ギルド登録手数料とカードの発行手数料、年会費に報酬額からの仲介手数料……手数料手数料って、どれだけピンハネしたら気が済むんだ」


 免責事項の欄には、さらに信じられない一文が。


「依頼遂行中の負傷、死亡、装備の破損および紛失について一切の補償責任を負わない、だって?まるでいいことがない」


 サブスクがどうのという話がここで効いてくるとは。

勇者でもなんでも結構だが、こんな登録はぜったいにごめんだ。

ノアはいらぬ伏線に頭を抱えていた。


「マイナス面だけ挙げたらたしかにそうですけど、それに見合う特典があると考えたらむしろお釣りが出るくらいですよ」

「いつ登録するだなんて言った」

「すかんぴんのうちはそんなこと言っちゃいけませんよ。まずは簡単なお仕事から引き受けて、ある程度お金を稼ぎましょう!」


 身元なんてわからなければこんなことにならなかったのに。

ノアはまんまと用紙にサインさせられてしまったのだった。

Character.

◆ノア

 スタンピードのショックで記憶を失ったらしい青年。

 マナ曰く転生勇者。かなりの巻き込まれ体質。

◇カリンカ

 ロクリアのギルドで働く受付嬢。みんなのおねえさん。

◇ポドゾル

 なにかの匠らしい。おおよそ武器職人の類。


Item.

◇冒険者心得

 ギルドに登録するときにもらえる冊子。

 サインをする前に中身をよく読んでおくべし。


Location.

◆ロクリア

 冒険者が行き交う小さな町。

 マナの家や冒険者ギルドの酒場がある。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。