63話 引き抜き
「じゃあ交渉成立ね。ありがとうリュウ、そしてジンちゃん」
「スゴいねジン!……でも、完全にクリアアトランティスからは脱退なんだね」
二人とも喜んでくれるけど、俺の自意識過剰かもしれないけどマーヤは少しだけ寂しそうに見えた。
「あの、マーヤも俺と一緒にライジングサンズに……って出来ないですか。治癒士のマーヤが加入出来れば確実に任務も成功に近づけると思うんですけど」
「それは無理ね。元々クリアアトランティスはマーヤくんいることが前提で編成したのもあるし、今回の任務に対しての戦力は、クリアアトランティスのメンバーは最適なのよ。それに、ギルド内も、クリアアトランティスのメンバーからもマーヤくんの移籍に反対は起こるでしょう。今回はジンがクリアアトランティスを戦力外になって他パーティに編入出来なかったから故の特別措置だから」
特別措置。
レンタルとはいえ、他ギルドから他ギルドへの移籍。
本来はパーティ脱退したらある程度の期間、再加入できない縛り。
普通でも異例といえば異例なのだろうし、マーヤの実力からしたら移籍なんてさせるわけないか……
「そうですよね……いい考えだと思ったんですけど」
「俺としても是非お願いしたい所だけどな、こればかりは仕方ない」
俺とリュウさんは軽くため息をつく。
リュウさんもマーヤが同行出来れば良かったと思ってくれてるのか。
「ありがとう。ジンがそう言ってくれて嬉しかったよ」
「そう言ってくれても何もマーヤはどこのギルドでも重宝されるさ、実際一緒にいて頼もしかったし、何度も傷を治してくれたおかげで今の俺がいるんだ」
「それこそジンがいなきゃ私だってここまでついて来られなかったよ。それに……」
「あー……二人とも、話を割って入るようで悪いんだけど、やって欲しいことがあるんだが」
リュウさんが申し訳なさそうに話をする。
いや、この状況は俺が話を広げたから俺が悪いのに……
それにしてもやって欲しいこと?
「やって欲しいことって、俺とマーヤにですか?」
「ああ、さっき彼女になにかあったら、ってやつの続きになるんだが、ここに魔力貯蔵石を5個用意した。ジンにやってもらいたいこと……これ5個にジンの魔力を注いで欲しい」
小さな石ころ程の魔力貯蔵石をリュウさんから受けとる。
本当に一見ただの石ころにしか見えない。
「魔力を注ぐって、具体的にはどうやればいいでしょうか?」
「自分の魔力を石に流し込むイメージでやってみて欲しい。そうすれば自然と石に貯蓄されるはずだ」
「よし」と意気込む俺にこっそり耳打ちするようにリュウさんが近寄る。
「ジン、魔力を流し込む際に彼女の事を考えて魔力を注いで欲しい」
「マーヤの事を考えて……ですか?」
「ああ、魔力貯蔵石は恐らく人の心によって反応すると考えてる。魔力を注ぐ所から彼女を守って欲しい想いを注げば貯めていた魔力を引き出すことが出来るかもしれないと考えてるんだ」




