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9 ライバル登場ということになるんでしょうか

「ミクちゃんには黙っててって言われてたんだけど、流石に倒れられちゃあねえ」


 レイジたちの目の前に、メイド喫茶のマネージャーと太った男に品のいい女性が居る。


 ミクは全然幸薄くなかった。全国的にも有名な関西の中高一貫の超進学校に在籍している女子高生であり、今は休学中となっているらしい。両親とも大学病院で働いている医師であり、しかも代々の名家だとマネージャーが話す。


「そんなお嬢様がどうして・・・」


 聞けば、きっかけはYouTubeである。


 中学時代、学校の先輩に影響されて音楽に興味を持ったらしい、それも60年代から90年代のクラシックロック。由美の嗜好とドンピシャである。親に買ってもらったギターにのめり込み、作詞作曲にも手を出し先輩たちに褒められた。その中の一人がミクの演奏をYouTubeにアップした。オールドスクールロックンロールだから、そんなに反響はないだろうと思ったが、ミクの姿を映したサムネに惹かれた人たちが、その容姿とあまりにもかけ離れた渋い曲と玄人はだしの演奏力に驚き、おすすめ動画として知り合いに拡散した。


 コメントが日本語だけでなく、英語や知らない言語で書きこまれる。


 再生数がどんどん伸びていったが、何故か音楽関係者からのお誘いがこない。すっかり売れっ子ミュージシャンのつもりになったミク。やはり動画を挙げているだけではダメだと思い、音楽関係のオーディションに応募するも何の反応もない。音源だけではインパクトがないに違いないと、学校を休み東京へ。いくつものオーディションに参加しても選考ではねられる。


 『おかしいこんなはずじゃない』と泥沼にはまり込む。


 気がつけば、東京で浮浪者の様な生活をするようになる。


 レイジは知っている、インターネットの世界は広いのだと。再生回数が伸びたとしても、誰が何処で見ているか分かったものではない。たぶん、ミクのファンは世界中にいるのは間違いないが、人口密度が圧倒的に低いのだ。普通にユーチューバーとして広告をつければ、そこそこの収入になっただろう。さらに言えば、今はアイドル全盛の時代である。音楽事務所も商売である。ハードロックなどと言う古い音楽にかかわる訳が無い。


 ミクが両親と言い合っている脇で、スマホでチェックしてみればあまりにも時代とかけ離れている曲である。音楽業界が冬の時代で芸能事務所、音楽レーベルが動かないのも納得である。


「帰るわよミク」


「心配させないでくれミク」


 とても優しそうな両親である。


「いや、私はここにいる。ここでビッグになるんだもん」


 泣き始めるミクを『なんだかなー』と思い見つめるレイジ。


『君、ビッグになる必要あるの』


 そのわきで、バンドメンバーが居なくなってしまう事に焦る由美の心配そうな顔。


「由美先輩もビッグになるんですか」


 ふっと真剣な眼差しでレイジを見つめる由美。


「ミクさえいれば、世界征服の夢も・・・」


 綺麗な目にうっすらと涙が浮かぶ。


 気が抜けたレイジとは違い、ミクは真剣にいまだに両親と話し合っている。


「ここじゃなきゃダメなのかいミク」


「だってだって、東京にしかメジャーな事務所ないじゃない!」


 わっと顔を伏せて泣き崩れるミク。


 かなりわがままなお嬢様である。



 数日後、レイジが学校に行くと教室にミクがいた。

 編入試験も余裕だったようだ。流石超進学校に在籍していたお嬢様である。しかもこの学校に多大な寄付金を出したことが、そこはかとなく聞こえてきていた。


「パパからよろしくって、はい」


 ニコッと笑うミクから手紙を渡されるレイジ。


 要約すれば『迷惑かもしれないが、友達として娘を助けてやってほしい』という心のこもった長い手紙だ。


『こんなに甘やかしていいんですか!お父さん』


 謎の美少女転校生が、学校で話題にならないはずはない。


 昼休み、ミクと弁当を食べようとしていると遥が勢いよく教室に駆け込んできた。


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