episode -3- [母の] scene -③-
「これは、もしも……の話だが、この先で……未来が、未夢の母親になることが……あったとしてもか?」
「え!?未來が私のママかぁ……って?!それってさ、最高じゃない?!もし、未來がママになったらさぁ?ずっと、甘えられるってことじゃん!!」
今日まで、私の中でずっと抱いてきた……お姉ちゃんに対する、ある『疑惑』……それが確信へと変わった瞬間でした。
その件ついては、また追々……お話しする機会がくると思いますので、その時まで……私の胸の内にしまっておくことにします。
「い、いいのか……?未夢」
「ん?パパと未來が、今後付き合うことがあるかも?って、意味だよね?別に良いんじゃない?パパと未來に血縁関係ないんだし、好き同士でしょ?」
「お……お姉ちゃん!!」
「未來が、パパのこと大好きなのは、当然……姉だし、知ってるけどさ?でも、パパのこと……未來は、異性として……大好きだったんだもんね?」
まさか、お姉ちゃんに……私の秘め事がバレていたとは、完全に……見くびっていたようです。
ただ、パパもおじいちゃんも居る前での……お姉ちゃんからの大暴露は、流石の私でも堪えました。
「ああああ!!もう!!お姉ちゃんのバカ!!」
「そ、そうだったのか?!いつからなんだ?」
「ぱ……パパと、ふ……二人で、アニメ……見始めた頃から……」
「ま、まさか……あんな小さな頃から、まさか……未來は俺のことを……」
先程の買い出しの車内、しきりにパパが自分のことを、『キモい』と言い続けていたので、私は……昔から両思いなのだと、知って欲しい一心でした。
まだまだ、パパについては……ママとの離婚協議についてはこれからですし、私について言えば……まだ十四歳なので、結婚すら許されておりません。
でも、パパの事を好きな気持ちは……恐らく、抑えられそうにはないので、これから……私自身がどうなってしまうのか……全くの未知の世界です。
パパだって、私と両思いだということが分かった以上、『キモい』だろうと思ってセーブしていた気持ちが、解き放たれ……暴走するかもしれません。
「あれ?!まさか……パパもなの!?た、確かに……姉である私から見ても、未來は可愛いけどさ……?」
「ま、まぁ……な?」
「信義もな?未夢に対しては、立場ってもんがあるんだ。だから、未夢は……あんま詮索しないでおいてやれよ?」
「だって!!私の可愛い妹が……」
急に慌てた態度のパパの姿を見て、お姉ちゃんは……何か勘付いたようで、何か言いたげです。
そこへ割って入ったのがおじいちゃんで、遠回しではありますが、パパと私の交際について……黙認してくれているのは分かりました。
「この際だ……未夢に言っておくが、俺は……未來に告白してある。正式な交際になるかは……未來が然るべき年齢になった時、決めてもらう話だ。」
「はぁ?!パパも……未來もさ?展開早すぎじゃないの!?まだ、ママと離婚してないんでしょ?」
「お……お姉ちゃん、だ……だから……ね?」
「おい!!そんなことより、店の方は大丈夫か!?」
─_─_─_─_
あの、おじいちゃんの一言がなければ、未だに……私たちは、カオスな状況の会話を続けていたと思います。
ただ……今日は土曜日なので、普通に洋菓子『マルジョレーン』は通常営業なのです。
「話に夢中になって、仕込みが全然出来てないな……」
「ぱ……パパ?わ、私……手伝いたいんだけど……」
「お?未來、手伝ってくれるのか?」
基本的に、営業日は火曜日から土曜日までで、営業時間は十一時から十八時にはなっていますが、ショーケースが完売次第、その日の営業は終了です。
決済方法については、現金のみとなります。その理由は、決済代行業者に手数料払うくらいなら、その分お客さまへと還元したいという、おじいちゃんの意向と、現金使う機会の提供だそうです。
「だ、だって……!!み……未来のパパのお嫁さんだもん……私!!」
「ま、まぁ……当分、先になるからな?まだ、未來は若いから……我慢できなくて、手近な男と付き合ったりしてな?」
「そ、そんなことは……ないと……思いたい……」
あとは、イートインスペースをご利用可能なのは、お会計時店内に居た方限定になり、代表待ち及び類似行為は禁止の為、その場で出禁となります。
『目の前に空席があるのに、お客さまをお待たせしてしまうのは、おかしな話』という、これも……おじいちゃんの接客に対する熱い情熱からです。
『僕の拘りにそぐわないのであれば、無理して来てもらう必要はないです』と、おじいちゃんは誰に対しても忖度せず……ハッキリと言っております。
「まぁ、その時は仕方ないよな……俺の魅力が、告白した時よりもなくなってたって……ことだからさ?」
「わ……私の方だって、パパから『魅力がなくなった』って……見限られちゃうかもしれないでしょ?」
「いや、それはない。すぐにでも……未來のこと、俺のモノにしたいって……ずっと、思ってるからさ?」
そんな洋菓子『マルジョレーン』の二代目であるパパは、おじいちゃんが培い……拘ってきたことを忠実に受け継ぎ、お店を切り盛りしているのです。
お菓子の仕込みについても、おじいちゃんが続けてきた……夜八時前には寝て、翌朝三時頃から始めというるルーティンを……パパも実践しています。
私たち家族の生活や、お客さまの喜ぶ姿を見るため、毎日頑張っているパパの姿を見てきたからこそ、傍で支えたいなと考えるようになりました。
それも……全ては、家のことを何もやらない……ママの存在があったからなのです。
「い……いいんだよ?い、今……私のこと、押し倒してくれても……」
今後、大人のパパにとって、私と交際することで、色々我慢を強いらせてしまうので……最初くらい、目を瞑って羽目を外して貰おうと考えました。
私の初めては……パパに捧げたいと、授業で性教育を学んだ時から、思い続けてきたので本望です。
「それじゃあ、お構いなく」
「うん……」
「……って、言いたいとこなんだがな?午後の分の仕込み……全然、間に合って無いんで、無理なんだわ……あぁ、折角のチャンスなのに……残念」
「な、なら……私、今日はお店のお手伝いするから……よ、夜は……パパと一緒に、お風呂入りたいな……」
今夜、私は……お風呂場で、パパに押し倒され……結ばれる事が第一目標ですが、それが叶わずとも一緒に入浴できるだけで、今は良しとします。
まずは……ママこと、私の母親の姉である蒔夢さんのことを、パパから引き離すことに……おじいちゃんを筆頭に一丸となり集中しないといけません。
「ああ、分かった!!楽しみにしとくよ?ここ最近、未來と入れてなかったもんな……」
「やった!!じゃ……じゃあ、わ……私、何手伝えばいいかな……?」
「うーん、未來には……俺のムスコの面倒見て欲しいのは山々なんだが……」
「はぁ!?バカじゃないの?!未來にそんな事させようとして……パパ、最低!!」
タイミング悪いことに……エプロン姿のお姉ちゃんが、洋菓子『マルジョレーン』の店舗の調理場へと、お手伝いをしに入ってきたところでした。
「み、未夢!?冗談だよ、冗談!!だよ……な?未來」
「もう!!お姉ちゃんてば……。パパが、信頼関係ない相手に、そんな洒落にもならないこと言うと思う?」
「そうだぞ?普通は、今の未夢みたいな反応するんだろうが、俺と未來の関係は……そんなくらいじゃ、揺らがないからな?」
もし、お姉ちゃんが調理場へと入って来なかったら、パパからの冗談を……私は真に受けて、動いていたかもしれません。
今の私は……思春期特有の思考回路なので、大きく脈動し始めてしまった……パパへの恋心を、止められそうにないからです。




