笑ってほしい
夜会が前日に迫った日。
私は不安で、一人でいるのが怖くて、サロンに向かったら、
リディアさんに誘われ、庭園の東屋でお茶をしようということになった。
「ねぇ、リディアさん。」
「はい、イザベラ様。」
いつものようににこりと微笑むリディアさん。
やはり、リディアさんには乙女ゲームのクライマックスような守られる存在には見えない。
凛として、芯のある女性だ。
「ついこの間、夢を見たのだけど、私があなたをいじめて、最後にアルフレッド殿下に断罪されるの。」
こんなわけのわからない話に笑顔を崩さず、聞いてくれる。
「私はリディアさんをいじめたいなんて思わない。でも、」
私が破滅すれば、リディアさんも夢の時のように心に傷を負ってしまうのでは、と思う。
「たとえ私が破滅しても、リディアさんは笑ってくれるかしら?」
破滅しないように。
そのために私は頑張ってきたつもりだったけど、どうしても破滅してしまうなら、
その時は、
乙女ゲームのようにリディアさんには笑ってほしい。
これが私なりの答えだ。
「おかしなことを言いますね。私が望むのはイザベラ様、あなたの幸せですよ。」
リディアさんはいつもと違い、笑顔で悲しみを隠している。
僕は君の幸せを願うよ。
エンディングにふさわしい殿下の言葉。
そんな言葉でわたしが破滅するなんて。
ふと、風が吹き、
リディアさんの大切にする花壇を見ると、蕾はふくらんできていた。




