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 兄達が騒ぎ出したため母が席を立った。



「貴方達はいいかげんにしなさい!そんなに納得できないならクロードに勝ってみせなさい。貴方達じゃ昔と同じ・・・ドレス姿のままのクロードと勝負しても勝てないでしょう・・・」

 母は騒ぐ兄達に言った。



「「なら・・・」」


「「勝負だ!!」」


 兄達はやる気満々で、クロードに勝負を挑んだ。



「ちょッ、まってくださいお母様!いくら昔は勝てたからって、ドレスでたたかうだなんて無茶です!」

 あまりの母の発言にルビルが母に待ったをかける。今は立派な青年だ・・・幼い頃とは違うのに、母は今でも兄達はクロードに勝てないと断言してしまった。それもドレス姿でだ・・・。



「別にいいよ。それで君の兄達が納得・・・諦めてくれるならね。勝ったらこれ以上は騒がないでもらおう」

 しかしクロードは、母の提案を了承し、勝てばと兄達に条件をつけてきた。ドレス姿でやる気満々のクロードは、勝ち気な姉のようだった。



「いいだろう!」

「約束だ!勝てたらだがな!」

 それでいいのか・・・ドレス姿のクロードでと思ってしまう。兄2人はクロードより2つも年上なのに、随分と幼稚に見えた。



 そしてクロードはさらに2人を煽るようにハンデだと、2人同時に相手をすると言った。

 それに兄達は調子にのったようで、絶対に勝てると自信顔をルビルに向けてきた。


 兄達の様子がなんだか気に食わなくて、ルビルは令嬢らしからないが、その顔を見て鼻で笑ってやった。



「まあ、ルビルったら、貴方もクロードが負けるわけないって思ってるのね」

 母の発言に兄達はルビルに向ける視線が鋭くなった。なので勝つに関しては返事はしなかった。



「勝負はやらなければわかりませんが・・・ただ、フェアでない戦いに勝って喜ぶような兄をもって、情けないと感じただけです」

 ルビル兄達の視線を無視した。



「あら、そうなの・・・それだけ?」

 母は何故か、意味深な表情をして聞き返してくる。



「・・・それだけです」

 なんだか母の意味深な表情も勘に触った・・・。



「まあいいわ・・・やるならさっさとやりましょう」

 母はルビルの表情を読んだのか、さっと切り替えて勝負を開始するように言った。



 屋敷内にある鍛練場に移動し、母とルビルは設けられた席に座る。


 兄達は何やら打ち合わせをしてから、クロードの前にたった。2対1ではあるが、連携がとれればの話だろう・・・兄達は双子でも意見がだいたい割れる傾向にある。

 1人1人であれば実力としては悪くないのだろうが、兄よりはクロードの方が実戦経験も対人経験も豊富だろうし、敵わないだろうとルビルは思っていた。



 案の定・・・結果はクロードの勝ちだった。



 いくらドレス姿のクロードでも、息の合わない双子の愚兄の攻撃は問題ないようで、ドレスで華麗に攻撃を避けていた。本当に戦える令嬢のように見え・・・身のこなしがなんだかドレス慣れているような気がしてしまった。


 

 最後には兄2人の息が合わず、攻撃が味方同士でかち合ってしまい、兄達は倒れ呆気なく勝敗がついた。



「勝負あったわね・・・1人1人でも十分勝てたとおもうけど、2人一緒にってのはこれを狙ってたのね」

 母は自分の息子が負けてもなんとも思わないようだった。2人で地べたに転がっている兄達を、やれやれと見ているだけだ。 



「別に狙ってはいませんよ。ただ1人1人相手ではめんどくさかっただけです。他にも兄達はいますからね・・・。それにこれなら怒りの矛先は、彼らなら互いに向くはずですから・・・」

確かに・・・。兄達なら目が覚めた後負けた原因は自分ではないと言うだろうと思った。クロードは兄達をよく理解しているようだ。



「よく分析できているわね・・・当分会ってなかったのに」

 母は感心している。


「俺は人の分析は得意なんです。彼らが昔と変わってないのは、すぐにわかりましたからね・・・」

 クロードは一瞬遠い目をした。



「それで・・・この後、次の相手は誰ですか?」

 クロードが後ろにいた別の兄達に向かって言った。戦いの最中に別の兄達も現れ観戦していたのだ・・・。



「なら・・・次は俺が相手になろう。だが、俺はドレスを着た男と戦うつもりはないぞ」

 2番目の兄が出てきた・・・。ちゃんと同じ条件で戦いたいようだ。


「そうですか・・・なら真剣勝負ですね・・・すぐに着替えてきます」

 クロードはルビルをチラリと見て、笑みを浮かべて行った。




「ルビィはクロードをどう思うんだい?」

 クロードが去る後ろ姿を見ていると、1番上の兄がルビルに聞いてきた。1番ルビルに過保護な兄は、他の兄達と違って性格が父のように穏やかだった。きっと兄はこの戦いには参加しないだろう・・・。



「どう・・・ですか。殴られても喜んでいる変態でしょうか・・・まぁ今は最初より印象は違いますが」

 クロードの事は、ただのイケメンな変態認識だったのだが、ルビルのためにに小さい頃もドレスを着てくれ、今回も恥ずかしがらずに、母のたのみでドレスを着た事・・・変わっているけど、それが自分のためだと思うとなんとも言えなかった。



 ルビルが姉がほしいと言った言葉が、クロードを巻き込み、変えさせてしまったのではないかと申し訳なくは思っていた。


「それは・・・今は印象がいいに傾いてるって事かな?」

 兄が聞きたいのは、クロードとの婚約の話がでている事をいっているのだろう。


 まだルビルは了承していないが・・・?そういえば結局令嬢はクロードだったわけで、婚約をすすめるとか母が言っていたけど、そうなると・・・。



 はっとして母を見やる。母はニコリとこちらを見て微笑んでいる。ルビルは母との会話を思い出し、やられたと思ってしまった。

 

 そういえばルビルは母の質問に、婚約の了承をした記憶がある。兄の婚約者候補と思い、自分はいいと思うと言ったし、婚約は母と兄が決めればとも言った・・・。

 母はきっと、この勝負で兄を納得させ、婚約を決めようとしているのだとルビルは気づくのだった。






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