壱
───珍しく物を拾った。
このところ降り続いた雨は止んで、久しぶりに外に出たくなった。
勝手に住み慣れた窮屈な社から出て、いつもなら絶対足を伸ばさない浜辺へ向かった。
空はやけに青々と澄み渡って雲ひとつないせいか海面はやけに光っていた。
少々漂着物が煩わしく点在する砂浜を歩きにくいとわかっていても歩いてしまう。
何も無い、何もあるはずがないと知りながらも自身の気が済むまで砂浜を歩き回った。
物を拾ったのはこの途中のこと。
少し遠くにやけに白いものがみえた、岩に乗っているためか色の対比でやけに白さが目立つ。
鳥か、とも思ったがそれにしてはやけに形が異なる。
近くに寄ってみれば人の腕というところまでは判明した。
しかしそれがどうした、水死体など大雨の後にあってもおかしくない。
───何だこの生き物は。
打ち上げられた生き物は下半分は海に浸かったまま、上だけ浜辺に乗っていた。
しかし奇妙なことに海に浸かったままの下半身は魚のような鱗や鰭が見えた。
上半身は裸、白い肌が金色の長い髪の隙間から覗いていた。
無理やり顔を掴んでやれば呻き声が聞こえたものの今は仕方ない、何よりもこの奇妙な生き物がまだ生きている証拠を掴んだのだ。
辛うじて人の女のような特徴が見られて雌個体であるところまでは理解した。
だがこの半魚は右肩から腹部にかけて長い裂傷があった、まだ血が流れたままで岩を赤黒く染めていた。
よく見れば細長い腕にも細かな裂傷が大量に見られた。
この奇妙な生き物は生かすべきなのか。




