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六話 魔王城、そして闇の帝国の復活

 次の日の朝早く、解放された奴隷魔族達と共に黒城達は魔王城へと帰還し、魔王城再生の儀式を始める準備を行っていた。


「これが魔王城の中……すごい……」


 島村葉月が感動の声をあげる。


「うーん、僕にとっては今の魔王城なんてタダのオンボロだと思うけど。しかし、復活すればかなり凄いことになる。ふふふ……はははは!」


 黒城は既に石の知識から、復活した魔王城がどのようになっているかは知っている。

 だが、それでも実際に魔王城を復活させることに対する興奮は抑えきれないほどであった。


「やったー、ついに本当の魔王城が見られるんだね。魔王さま、はやくはやく」


 魔王城復活を目前にして、黒城だけでなく神崎も無邪気にはしゃぐ。


「まあ、いなり寿司でも喰って落ち着け、神崎」


 そして、それをたしなめる幽霊男爵もどこか嬉しそうな様子であったように黒城には思えた。

 そして、喜びは黒城もまた同様である。

 

「じゃあ、始めよう。みんな、ついてきて」


 黒城と神崎、男爵と島村は二階にある儀式場へ向かう。




「うおおおおお」

「ぐるがおお」

「いやふううう」


 階下からは元奴隷の魔族達が興奮し、荒ぶった声をあげているのが黒城の耳に届いていた。


「ふふ……皆も祝福していますね」

「そうさ、魔王は無敵だからな」


 葉月の言葉に黒城は儀式部屋への階段を登りながら得意気に答える。

 そうだ――僕は負けない、永遠に勝ち続ける。

 そして、自分が在りたいがままの外道として君臨し続ける――男爵が語った先代のごとく。

 そう、万が一にでも元世界の知り合いにあったとしても、虐められたから仕方なく外道に堕ちたのではない。

 これが自分の理想であり、そこに仕方なくなどと言う後悔など微塵も存在しない。

 そう皆に思われるほどの外道を貫く――実際にそうであるのだから。

 黒城はそう強く誓いながら半分朽ちたドアを蹴飛ばし、儀式部屋に入る。

 そこは、部屋の体裁すら保っていないほどボロボロであった。

 床の儀式用魔法陣こそ無傷であったが、壁の大部分がなくなっており、地上にいる魔族たちの姿がよく見えるような場所であった。


「さあ、始めるぞ」


 黒城は一種のドキドキとワクワク、そして黄金の未来を信じ、アミュレットを床の魔法陣に置く。

 そして、城を再誕させる言葉をその口で紡ぐ。


「創世――黒き帝国」


 その瞬間、魔王城の全てが覚醒めた。

 所々に空いた穴はみるみる塞がり、壁や建物に絡みついていた蔦は枯れ、完全に壊れていた建物も次々に再生していく。

 

「この扉は……バルコニーか」


 そして儀式部屋もその例外ではなく再生していく。

 黒城の目の前に現れたのは再生されたバルコニーへの扉。

 黒城はそれを開け、バルコニーへと足を踏み入れる。


「わぁ、ねえねえ魔王さま。遠くまで見えるよ」


 神崎はその景色に驚き、はしゃぐ。


「ふふ……朝日が綺麗」


 そして、島村はその美しさ息を呑んだ。


 それほど、そこから見える朝日に照らされた景色はただひたすらに広大であった。

 山が連なり、森が敷き詰められ、遠くには小さく街らしきものが見える。


「これが………世界」


 その景色に黒城も圧倒され、思わず弱気に呟く。

 無論、バルコニーの高さは、黒城が現世で行ったことがある展望台よりもかなり低いし、当然見える範囲もそれよりは狭い。

 しかし、それでも彼にとって今、眼前に見える景色こそが今までの人生で最も広大に思えるものであった。


「はっはっは、まあリラックスですよ魔王様。あとで宴会でもしましょう」


 幽霊男爵が余裕のある笑い声を発する。


「ああ、そうだね。僕は無敵の魔王だ。誰にも負けはしない」


 その言葉に対し、黒城は気を取り直して余裕の表情でそう返す。


「魔王様! 魔王様の再誕! 万歳! 万歳!」

「復活! 自由!」

「人間どもの魔法の帝国は終わりだ!」


 いつの間にか地上の魔族達が、バルコニー上で朝日に照らされる魔王を騒がしいほどに讃えていた。

 その様子を見て、黒城は自然と頬が緩むのを感じていた。

 これこそが支配者――まだ規模こそ小さいが、闇の帝国を築く第一歩。

 黒城はその胸の高鳴りのままにさらなる行動へと出る。


「我が名は黒城久秀。今、ここに魔王城、そして魔王軍は復活した!」


 黒城の高揚は言葉へと変わり、その場にいる全ての魔族に伝わっていく。


「今こそ僕、いや我に従え。そして再び闇の帝国をこの地上に!!」

「うおおおお!!」

「復讐、殺戮!」

「今こそ我等の手に再び栄光を!」

「魔王さまばんざーい!」

「流石は魔王様」

「ふふ……」


 短く、大したことのない即興の演説であったが場の空気は頂点に達する。

 これが魔王が生来持つ、魔族に対してのみであるが発揮できる闇のカリスマである。


「ふふふ……はははは!! 世界は……我がモノだ」


 黒城の邪悪な笑い声が禍々しく朝焼けの空を揺らした。


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