幕間 帝都マギア・シティにて
マギア帝国の首都、マギア・シティにある帝国政治の中心地である元老院。
そこは今、僻地の街が魔王によって次々と襲撃される事件によって右往左往していた。
「やはり、間違いない。奴は自称でなく本物の魔王だ。でなければ、あんな事はありえない」
「何が魔王だ! 皇帝陛下も仰られたろうに――もう、魔王は再臨せぬと」
「だが、しかしのう……これは」
「ふん、魔王を自称する反逆的な集団などいくらでもいただろ」
「貴様のその考えは現実逃避だ。おお、ついに魔王が再臨してしまったのか……」
普段は物静かで老獪な議員達であったが、今日ばかりは誰も彼も焦りと戸惑いを隠せないでいた。
魔王再臨なるか否か――それは下手をすれば魔族支配の暗黒時代の幕開け。
しかし、それだけではない。
先代魔王以外は世界支配を成し遂げる事なく、人類に敗北している。
しかし魔王に勝利した歴史上の大国もまた、魔王との戦いによる疲弊によって分裂し、人間同士の戦争で滅んでいる。
つまるところ、議員達は『勇者』の存在もあって魔王自体に負けるとはあまり思っていない。
魔王が死んだ後に国が疲弊し歴史上の国々のごとく、自分たちの国が滅びるのを恐れているのだ。
「まあまあ、落ち着きたまえ。何と言っても我が国は他の歴史に埋もれていった帝国とは違う。先代魔王を討伐し、それに代わって世界を統一し、300年生きてこの国をお治めになっとる元勇者様の帝国じゃ。きっと良い道を示してくれるじゃろう」
一人の議員がそう言ったその時、議会奥にある大きな扉が重々しい音をたてて開いた。
「こ、皇帝陛下!」
その老人は一言で言うならば『重かった』
そのオーラ、白く長い髭、やや地味だが風格ある服装、その全てが他を圧倒するほどの『重み』を帯びていた。
彼こそ300年間、このマギア帝国の1代目皇帝として君臨してきた男である。
「皆よ、気持ちはわかる。だが落ち着け」
その一言で議員達は瞬時に静まり返る。
「ふむ、どうやら落ち着いたようだな。では、諸々の報告を始めよう」
そう言って皇帝は氷のように静かな議会の中を足音を響かせて歩き、他の議員席より数段高いところにある皇帝席に座った。
「では、まず結論から言うと――残念がら魔王降臨を防ぐ私の努力は無駄だったようだ。魔王は再臨した。その証拠にシャイニングストーンが輝き始めた」
魔王再臨――その衝撃的な一言に議会は一瞬ざわめく。
「静まれ。だが、恐れる必要はない」
しかし、そのざわめきは皇帝の一声によって吹き飛ばされた。
皇帝はそのまま言葉を続ける。
「皆も知っている通り、確かに今の私には既に勇者としての力はない。しかし、我々には長い時間をかけて何とか探しだせた2つの『闇聖遺物』がある。これで闇を以って闇を制す。それに加え、つい先ほど勇者がシャイニングストーンによって召喚された。さあ入ってくるがいい、新たなる勇者よ」
皇帝が大声でそう言い放った瞬間、先ほど皇帝が入るのに使った扉から二人の少年が議会へと入ってきた。
一人は、見た目こそ人畜無害で優しげながらもどこか得意気な少年。
もう一人は死んだ魚のように濁った目をしたメガネの少年。
その二人は皇帝の前に歩いて行き、そして跪いた。
そして、得意気な少年が口を開き皇帝に挨拶をした。
「改めてはじめまして、皇帝陛下。俺の名前は四条誠一郎です。以後お見知り置きを」




