6、仕事が奪われる
AIがそのうち人間の仕事を奪うだろうとか言われている。
いいじゃん。
人間が楽できるんだから、とてもいいことじゃん。
お金さえもらえるなら、私はそれでいい。
しかし──
私はトラック運転手をやっている。
大型トラックに乗るようになって10年以上になる。ちなみに年齢は永遠の19歳である。
そんな私にはプライドがある。
長年の経験に基づき、運転の師匠から教わった知識などもあり、プロとしての考え方が備わっていると自負している。私が運転していれば、周囲の交通全体は安全かつ円滑に流れる──そんなプライドをもっている。
自動車の運転は将来AIさんにすべて任せられ、完全自動運転化が実現するらしい。
そうなったら私が培ってきた技術及び技能、交通安全哲学は無駄になる。
そういう話なら、わかる。
AIに仕事を奪われるのは確かに、癪である。
しかし現在、道路には考え方も運転技能もさまざまなひとがいて、道路交通はカオスなものとなっている。
完全自動運転化が実現すれば、そんな個人差はなくなって、道路はとても安全で円滑な場所になるのではないだろうかと予想する。
それは上手な運転ではなく、きっと『平均的な運転』だ。みんなが『そこそこ上手くてそこそこ下手な運転』をできるようになるのだろう。
全体のことを考えるなら、それはいいことなのだ。
それで事故も渋滞も激減するのだとすれば──
私はプロとしてそこに口出しをしたくなるだろうが、我慢しようと思う。平和を壊したくないからだ。
せいぜいAIを作ったひとがファスナー合流についてちっとも理解してなかったら意見してみるぐらいだろうが、聞き入れられなかったとしても仕方ない。システムの大幅見直しには莫大なコストと労力がいるくらいのことはわかっている。
小説家も奪われるのだろうか。
AIがより高性能になれば、人間の書き手は必要なくなるのだろうか。
そんなことについて、私ごときに何かがわかるわけはない。
しかし、信じている。
AIの高性能化に触発されて、人間の書き手がさらに高性能になることを。
AIにでも書けるものは書かない、プロの書き手が活躍することを。




