強欲と強欲 39
巨兵が街を疾走する。攻撃してくる人はいなかった、さすがにそんな元気もないだろうし、反撃が恐いからだろうね。
「人殺し!」
「覚えとけよ!」
けど、罵りの声はあちこちから聞こえた。それが捕まってる人たちを解放することに対するものだったら、おれは何とも思わずに済んだかもしれない。悪い奴等の腐った言葉になるからね。
なのに、これにはそうじゃないのも混じってた。眠り薬をまいて、捕まってる人たちを助けた時に傷つけた人たちのだ。
火事とか、略奪とか、そういうので傷ついた人たちがいっぱいいたんだろうね。
悪い人たち……なんだよ。剣闘なんかやってるから。でも、だからってどうなってもいいかっていうと……だめだった、おれには割り切れなかった。
もっと嫌だったのは、それでも心のどこかで、|救助活動してあげたのに恩知らず《・・・・・・・・・・・・・・・》なんて思っちゃってることだったよ。おれたちが引き起こしたことなのに……ああ、おれってこんなにひどい性格だったかな?
「エファアイの生い立ちはねえ」
追い討ちをかけるように、リロが殺しちゃったエファアイのことをしつこく話しかけてくる。
「モニモスで、奴隷に生まれたのはさっき聞いたでしょ? でもね、ここからが面白いんだよお。孤児だったのを施設に拾われたんだけど、それが、『女神教』の運営してるとこなの。すっごい虐待を毎日されて、労働も大サービス。物心つくころには、同じ時期に拾われた孤児の半分しか残ってなかったんだって」
「なんでそんなこと言うのさ⁉」
「人物列伝よお。ゆーは、こういうのを楽しく見れないタイプ?」
「ゲームじゃないんだってば!」
「ゲームよお、それでね、奴隷になって出荷されたけど、そこも『女神教』の農地なのお。女神の意志のままってね、それはそれは劣悪な環境にいたのよお」
耳をふさいでも、騒いでみてもリロの言葉は遮れなかった。
「胸の傷はその時の喧嘩でできたの。でも、休むことを許されなくて、死にそうになりながら助けてももらえなかったエファアイはね、キレちゃったのよお」
街を飛び出した。あとは森に隠れれば一安心。
「女神のせいで自分がこんな目にあうなら、自分が何したって女神の思し召しなんだってえ。だから、どんな手段も使ってお金を稼いで奴隷から抜け出して、今度は自分が奴隷をこき使う立場になったのよお。中々考えさせられるよね」
楽しんだろうね、リロは。こういうのがすごく。
おかげでおれは、もう泣きそうで吐きそうで惨めだった。どうすればいいの? こんな……エファアイにも事情はあったって知らされても……でも、やったことは悪いし……。
どうしておれは、こんな目にあってるの?




