エピローグ
その後
女性を誘拐しようとし、日凪を刺した二人の犯人はほどなく捕縛された。
ところが地球市民の会は
「不届き者の信者が勝手にやったことで、教団は関係ない」
と主張する事でそれ以上の追求を免れた。
そんな詭弁が通用するものかと思った宮部だが、現に教団には特別な沙汰は何も無かった。
警察も正義だけの組織ではないことを、宮部は何となく悟った。
あの事件から数年たったある日
宮部は墓参りをしていた。
過去との完全な決別を果たすためだった。この人の尊い犠牲がなければ、今の自分はなかったかもしれない。
「オッサン、あんたのことは忘れねえよ」
宮部は手を合わせて決意を表明した。
「オレが救えなかった、最初で最後をあんたにする」
宮部は警察学校への入学を決めていた。
事故や事件に極端に遭遇しやすい体質。それを逆手に取り、多くの人を救う。日凪と同じ道を歩むことを決めたのだ。
「これは誰の墓なんだ?」
宮部の後ろにいたのは日凪だった。
蛇足だが、足はちゃんとついている。
「日凪さん、これ店長の墓ですよ。ほら、火事で亡くなった」
宮部の子供時代を過ごした店の店長。宮部の人生の終着とも思われた彼の死は、新たな出発への切っ掛けとも言えるかもしれない。
「最初で最後…か。目標を高く持つことはいいことだが、気負い過ぎると辛いぞ。
オレたちはスーパーマンでも宇宙刑事でもない、ただのツイてない人間だからな」
日凪はこの若者が誇らしくてたまらなかった。一人前になるまで全ての面倒を見てやろうと決めていた。
「わかってますよ。オレたちはアンラッキーヒーローっすからね。世界一ツイてないヒーローっすから」
宮部は立ち上がって横を向いた。
「……とりあえず、思ったことなんだが……」
日凪も同じ方向を向いた。
遠くにせせらぐ川から、騒ぐ声がする。何が起きているのか、二人とも何となく見当がついている。
「オレたち二人が行動を共にするのは、どうかとも思うが」
間違いなく、誰かが溺れている。普通ならそう思い込むには早過ぎるが、日凪と宮部が揃っている以上、そう考えるのが自然なのだ。
「別に、オレたちが疫病神ってわけじゃありませんから。行きましょう日凪さん」
宮部は明るくなったな、と日凪は思った。残念ながらそれを誉めてやれる余裕はないのだが。
この二人はやがて数々の難事件を引き寄せては解決に導いていくのだが
それはまた別のお話で。
眠太郎懺悔録sidestory アンラッキーヒーロー
完
作者多忙により、しばらく更新を休みます。
次回作は来月中盤頃を予定しております。




