06
退廃的なムードが増した。見つめていると、彼は笑い返した。安心させるために。彼は髭をあまり剃らなくなった。タバコを吸い始めるようになった。タバコの煙をくゆらせながら、彼は喫煙することの利点について長々と話した。はじめは言い訳のために。やがてはある種の自慢として。彼はタバコをテーブルの端に置く。指で箱をとんとんと叩く。タバコを一本取り出す。彼は火を着ける。
僕は彼の怠惰を一時的な気まぐれだと考えた。ずっと続くものだとか、これが彼の本性なのだとは考えなかった。僕の中には初めて会ったときの彼が強く居座り、それこそが本物の彼なのだという覆しがたい印象があった。はじめに彼に対して抱いた好意的な印象がいつでも正しく、それにそぐわない彼への印象はすべて間違いであるように思えた。僕にとって彼は不変だった。過去に棲みついた朝方の動物だった。僕は彼の話に相変わらず耳を貸し、信頼を授け、彼の求めるある種の尊敬を与えた。
彼はある頻度で僕に金を求めた。僕は彼に金を貸した。彼が何に使っているのかは知らない。彼は僕に金をせびる時、はじめは言いにくそうに打ち明ける。言葉の前に沈黙を用意して、威厳のあるムードを作ろうとする。姿勢を正し、うつむきかげんに一点を見据える。これは儀式だ。彼は信者で僕は祭司だ。彼の祈りに対して、僕は彼に金銭を授けるのだ。
「ちゃんとしなくちゃ、ちゃんと」
彼は言った。誰に聞かせるために言ったのだろう。自分にだろうか、僕にだろうか。良心にだろうか?彼がそう言うとき、僕は触れてはならないタブーのようなものを感じた。傷ついた彼には、どんなアドバイスも慰めも、辛い鞭になるように思えた。これが目的だったのだろうか?言葉によって自分を倫理の防護服に包むことが?
「こんなことばかりしているべきじゃないんだ」彼は言った。
相変わらず僕らは酒を飲んだ。彼が日付が変わる前に帰ることはなくなった。いつも転げ落ちていく感覚の中にいる彼は、酒を飲むと運命から解放された気になった。陽気になった。手を振り、歌を歌い、踊るようにおしゃべりをした。彼の意見はあっちこっちへ飛んだ。それでも僕はついて行こうとした。時には僕を罵倒することさえあった。それでも僕は彼について行こうとした。彼の言葉や、話し方には、なんらかの強い魅力があったのだ。
「君はわかっているのかね」彼は言った。「自分のことを有能な人間だとか、孤独な秀才とか考えているのかも知れないが、君、このままじゃまずいぜ。人生はあっという間に君を置いて去っていく。そのことに意識はあるのかね?君、このままじゃまずいぜ」
「どうしたら良いのかな?」
「僕はその答えを知っているさ、もちろんね」
彼は薄暗い明かりの中でそう言った。僕を脅かすために。怯えさせて慌てさせるために。自分に助けを求めさせるために。彼は落下する。あまりにも寂しがり屋なので、一緒に落ちていく相手を求めている。彼は会うたびに限界まで酒を飲んだ。失態を犯した。隣の席の客と喧嘩し、大声でわめいた。翌日になると彼はこちらが触れるのも難しいほど落胆し、謝罪した。僕は何も言わなかった。僕は彼が立ち直る希望を捨てなかった。相変わらず僕の中で彼は出会ったばかりの彼で、今の彼は一時的な低迷の時期だったからだ。
僕は何も言わなかった。ただずっと見ていた。