阿吽②
いつもお読み頂きありがとうございます。
side 皇遥
クラスマッチが終わった後、黒月くんをマギアに誘ったけど用事があると言われ断られてしまった。
黒月くんにだって用事があるし、毎回一緒には出来ないっていうのも分かってるけど、やっぱり残念だなぁって思ってたら、そんな私を見兼ねた黒月くんが「時間はそんなにかからない、その後でいいなら」なんて言ってくれて、すぐにその話に飛びついてしまった。
でも黒月くんの用事ってなんだろう?
ふと お昼の時間に誰かにメッセージを送っていたことを思い出した。
あの時の黒月くんは少し様子がおかしかった。
メッセージの内容を誰にも見られたくないような、こそこそした感じ。
もしかして女の人だったりするのかな......
そう考えただけで胸がすごくモヤモヤした。
一度考え始めたらどうしても悪い方向に考えがいってしまうから、気を紛らわすようにキスレ平原でひたすら魔法を撃つことにした。
もちろん全力の魔法だ。
八つ当たりとも言えなくない感情のまま、覚えたばかりの中級魔法を撃ちまくる。
ドカンドカンと魔法がぶつかる度に地面が変形していく。
一応適正レベルのモンスターと戦ってるけど、なんか弱い者いじめをしてるみたいに一発でみんなやられていく。
「ふ......歯応えのない奴らめ」
気分は魔王様。
向かってくる数多の冒険者を魔法で返り討ちにしたイメージ。
「我への挑戦の代償が命とは、高い勉強代だったな......」
ドロップしたアイテムや魔石を回収していく。
「あの世で自らの行いを......」
「......ハルカ、あんた一人でなにブツブツ言ってんの」
「ひゃいっ!」
一人の世界に入っている所に突然声をかけられ変な声が出る。
そして声のした方へ振り向くと、そこには呆れ顔のナオいて......
「あんた大丈夫? 変なものとか食べてないよね? 『ふ』とか『我』とか見てて相当ヤバい......」
「わー! わー! 言わなくていいから! っていうか、いたなら声かけてよ」
黒歴史になり兼ねない姿を見られた羞恥からナオに非難の目を向ける。
「あーごめんごめん。私も声かけようと思ったんだけどさー。危ない人かもしれないからって止められちゃって」
そう言って苦笑いで振り返るナオの後ろには3人の女の子がいて、それぞれが三者三様の目を私に向けていた。
面白いものを見たと笑う褐色の子、興味深そうに私を見つめる背の低い子、そして私がナオの知り合いとわかって申し訳なさそうな目を向けてくる大人しそうな子。
すぐにピンときた。
「ナオ、この人達がお昼に言ってたギルドの?」
「そ、うちのギルドメンバーのナイナイ、アイコ、モミジだよー」
紹介された3人がそれぞれ挨拶して頭を下げてきたから私も一緒に下げる。
黒髪ショートボブの褐色の子がナイナイさん。
明るいムードメーカーって感じの印象の女の子。
黒髪ロングの背が低い子がアイコさん。
無表情がデフォでたまに面白いことを言ってみんなを笑わせるらしく、喋るセツカちゃんって感じの印象の女の子。
そして桜色のふんわりミディアムの子がモミジさん。
人見知りで交友を深めないとちゃんと話すのは難しいみたい。
私と話す時も少し緊張気味でオドオドした感じだった。
「あれ? 今日って加藤くんと会うんじゃなかった?」
自己紹介の後 みんなで少し話した所で、そういえばと思い出したことをナオに聞いてみる。
「それがさー、なんか用事ができて少し遅れて来るんだよねー」
「用事? そんなこと言ってたっけ?」
お昼の時はそんなこと言ってなかった気がするけど。
「あー、クラスマッチの時ハルカ達と分かれたじゃん? その時にシンヤの所にメッセージが来てさ、それを読んだシンヤが会う時間を少しだけ遅らせて欲しいって言ってきたんだよね」
「そうだったんだ。なんか急な用事でも入ったのかなぁ」
「かもねー。なんかメッセージ見てから少し様子が変だったし」
「ねえ、それって女からの連絡じゃないの?」
私達の話に褐色の女の子、ナイナイさんが加わってくる。
全然考えてなかった予想に一瞬驚いたけど、ナオがすぐにそれを否定する。
「いやいや、シンヤに限ってそれはないでしょー」
笑いながらの一蹴。
ありえないと言い切るナオの反応も正直どうなのかと思わなくもないけど、言いたいこともわかってしまう。
確かに加藤くんに仲のいい女の子がいるのって、あんまり想像出来ないんだよね。
今日のクラスマッチでだいぶ印象は変わったけど、それでも女の影があるようには見えないというのが正直なところ。
「なら会いに行って確かめてみよう」
アイコさんも話に加わる。
「ナオ、シンヤって人、今どこにいるの?」
「えーと、ちょっと待って......」
続けられたアイコさんの質問を受けて、ナオがステータスボードを操作し始める。
マギアではフレンド登録してあるプレイヤーがログイン中なら「詳細」を表示させることで、大まかな現在位置を確認することができるようになっている。
私もよくクロの位置をこっそり確認しているけど、いつも表示されるのは難易度の高いダンジョンの名前ばかりで、クロの凄さを再認識させられるのと同時に、自分の力じゃまだクロが普段戦ってる所には連れて行ってもらえないのだと、ちょっと落ち込んだ気分になったりしている。
「......あーシンヤ、セントラルエリアにいるみたい」
「じゃあセントラルエリアに行ってみよう」
「ちょ、ちょっとアイコちゃん、そういうこと止めた方がいいよ」
加藤くんに会いに行こうと言うアイコさんをモミジさんが慌てて止める。
「モミジは気にならないの? シンヤって人が何をやってるのか」
「え、それは、ちょっとは気になるけど......で、でもやっぱりダメだよ」
「私も行ってもいいと思うな。新しくギルドに入る人だもん。どんな人か早く知りたいし。それにあいさつに来たって言えば大丈夫だよ」
「で、でもナイナイちゃん」
「モミジは気にし過ぎだって」
「うぅ、ナイナイちゃんまで......ナオちゃん、どうしよう......」
ナイナイさんがアイコさん側についた為、モミジさんがナオに助けを求める。
「んー、モミジの気持ちもわからなくもないけどさ、正直 私も気になるっていうか、行っていいじゃないかって思ってるんだよね」
「......そっか、ナオちゃんもそうなんだね」
ナオも自分と違う意見とわかり、モミジさんが目に見えて落ち込む。
だけどそんなモミジさんにナオが優しく話しかける。
「......ねえモミジ、私はシンヤがこそこそ見られたくないことをやってるとは思ってないよ。だからみんなで堂々と会いに行けばいいんだよ。モミジもシンヤに会えばそんなことで気を悪くするようなやつじゃないってすぐにわかるからさ」
「ナオちゃん......うん、わかったよ。ナオちゃんがそう言うなら」
モミジさんが笑ったことで空気が和む。
きっとモミジさんはギルドの癒しに違いない。
「まったくぅ! モミジは可愛いなぁ!」
「ちょ、ちょっとナイナイちゃん。やめてよぉ」
「はいはーい、ナイナイは離れてねー」
「まってナオ! まだモミジ成分がぁ」
「哀れ、ナイナイ」
ナイナイさんがモミジさんに抱きついて、ナオがそれを引き離し、アイコさんがひと言。
きっと日常的なやり取りなんだろうなと思わせるその光景に【ラピスラズリ】の仲の良さがすごく伝わってくる。
「ねえ、ハルカもセントラルエリアに一緒に行こうよ」
そんなやり取りをただ眺めていた私にナオから声がかかる。
「え、私も? でも私は......」
クロとの約束が......って言いたいけど、それは内緒だから言えない。
そんな私の心情なんて知らないナオは、私を誘うべく更に言葉を畳み掛けてくる。
「ハルカ最近付き合い悪いし、たまには私と遊んでくれても罰は当たらないと思うんだけどなー」
「うっ......」
それを言われると弱い。
最近はナオからの誘いを断ってばかりだったから、尚更断りにくい。
まあ、クロから連絡が来るまでなら大丈夫か。
「......わかったよナオ。私も一緒に行くよ」
「さっすがハルカー。じゃ、早速行こっか」
「わ、ちょ、押さないでよ。ちゃんと行くから、大丈夫だって」
ナオに背中を押されるまま、私達5人は加藤くんを探しにセントラルエリアへと移動を始める。
セントラルエリアに到着した私達は大通りを歩きながら加藤くんを探してるんだけど、なんだか周りから向けられる視線の数がすごい。
「ね、ねぇナオちゃん、私達すごく見られてないかな?」
手を胸の前で組んで不安そうな顔をキョロキョロと左右に振るモミジさんがナオに話しかける。
「まー女5人はさすがに目立つからねー」
「モミジ、気にしたら負け」
「そ、気にしなーい気にしなーい」
モミジさん以外のメンバーは普段通りと言った感じ。
日頃からこういう視線には慣れているのかも。
でもここに加藤くんが加わって女の子4人に男の子1人になんてなったら周りからの目が......加藤くん大丈夫かな。
そんなことを考えながら大通りから人の少ない広場に移動した時、遠くの方に加藤くんらしき甲冑を着たプレイヤーの姿を見つけた。
「あ! あれシンヤじゃね? 誰と話してるんだろ」
加藤くんらしき人は立ったまま誰かと話してるみたいだけど、相手は木の陰になっていて確認出来ない。
でも加藤くんが笑顔なことから、親しい相手なのは間違いないはず。
そんな加藤くん達の所へ5人でぞろぞろと近づいていく。
周りの人達は私達が近くに来るとすぐに視線を向けてくるけど、加藤くんは話が盛り上がっているのか全く私達に気づかない。
そして声の届く距離まで近づいた時、ようやく加藤くんの話相手の姿が見えた。
「あれ? なんでシンヤと一緒にショウもいんの?」
鈴木くんの姿が見えたナオが声をかける。
そんなナオの声に加藤くん達もこちらに気づき顔を向けてくる。
そして私の視線はその中の1人に釘付けになった。
「......え、なんで......」
心の声が口から漏れる。
思っていることはたぶん向こうも同じ。
相変わらずのフードで顔は見えないけど、私を見て固まっているのがハッキリと伝わってくる。
クロ、なんで加藤くん達と一緒にいるの!
お読み頂きありがとうございました。




