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自己紹介

 

side 皇遥


「うぅ、緊張する......」


「ハルカ、いつも通りで大丈夫だぞ」


「そんなの無理だって! だってあの太陽と月のメンバーがみんな揃ってるんだよ! あぁ、どうしよう......」


 今日はギルド太陽と月のメンバー全員との初顔合わせの日。

 私はクロに連れられてギルドルームに向かっている。

 メンバーは多忙な人が多くて中々時間を合わせることができず、ギルドバトルが行われる今日の試合開始前に顔合わせをすることになった。


 隣を普段通りの様子で歩くクロに連れられてポータルに入るとクロが端末を操作してギルドルームに移動する。ポータルから移動した先は扉があるだけの部屋でこの先にギルドルームがあるらしくクロは迷わずドアノブに手をかけた。


「ハルカ、こっちだ。ここから入るぞってお、おい!」


「く、クロ! ちょっと待って! 心の準備が、心の準備が......」


 緊張でどうにかなっちゃいそうな私の心情なんて知らんとばかりにスタスタと先に行ってしまうクロの腕を掴んで無理やり動きを止める。

 クロは私の行動に驚いて抵抗してくるけど、私だって負けじと今度は腕に抱きついてクロの動きを止める。


「いや、ここまで来てそれは、ちょ、お、おい、ハルカ」


「待って、もう少しだけ、もう少しだけお願い......」


「ねぇ、あんた達なにやってんのよ」


「あ......」「あ......」


 私を引き剥がそうとするクロと絶対離すつもりのない私が争っていると、ギルドルームの扉が勝手に開き、そこには呆れた表情のミミさんがいて、2人仲良く醜態を晒すことになってしまった。



「は、初めまして! 新しくギルドに入りましたハルカと言います! よろしくお願いします!」


 思いっきりこれでもかと頭を下げる。

 だって目の前には画面の向こうでしか見たことがない有名人。

 あの太陽と月のメンバーが全員揃ってるんだもん。


「ハルカ、初めまして。俺がこのギルドでギルドマスターをしているワタルだ。よろしく頼むね。そして俺達のギルド太陽と月へようこそ。俺達はハルカの加入を歓迎するよ」


 ワタルさんが女性受けする端正な顔に爽やかな笑みを浮かべて歓迎の挨拶をすると他のメンバーからも拍手で歓迎され、ぺこぺこと何度も頭を下げる。


「クロから色々聞いていると思うけど、最初だからうちのメンバーの紹介と対戦時の役割を紹介していこうと思う。まず俺の隣にいるのが副ギルドマスターのミミだ。ハルカはもう会ったことがあるって話だったね?」


「は、はい。ミミさん、この前はありがとうございました」


「急に会いに行ってごめんね。どうしてもクロのいない所で話をしたくてさ。これからよろしくね」


「こ、こちらこそよろしくお願いします」


 私が頭を下げている横でミミさんとの会話を聞いたクロが私達に訝しげな視線を向けてくる。

 そんな様子をワタルさんはニコニコと楽しそうに見守っている。


 あの日、ミミさんには「クロのことをどう思ってるの?」とか「いつから気になってたの?」とか、主に恋愛関係の話を根掘り葉掘り聞かれてしまった。

 でもクロの話も色々聞けたし、ミミさんも応援してくれるって言ってくれたから結果的にはよかったと私は思っている。


「ミミのジョブは聖女で、主に結界での防御と仲間のステータスを上げるバフの付与を担当してもらっている」


 ミミさんは戦闘には参加しないで後方で待機しているイメージが強い。

 試合の映像を観ていると結界で敵からの攻撃を防いでいるイメージが強いけど、味方の強化も担当していたなんて知らなかった。


「次のメンバーはセツキ。ジョブは拳帝。セツキには相手と直接戦うアタッカーを担当してもらっている。見た目から大人しそうな印象を受けるけど、近接戦闘のセンスは群を抜いていて、スピードとパワーを備えたうちの切り込み隊長だ」


「はじめして、セツキです。どうぞよろしくお願いします」


 ワタルさんに紹介され、頭を下げるセツキさんは少し幼い見た目に反してしっかりした印象を受ける。

 セツキさんは雪の妖精と称される整った容姿に加え、普段の真面目で大人しい雰囲気とギルドバトルの時に見せる圧倒的な強さのギャップがウケて、年上のお姉さんから「セツきゅん」と呼ばれ絶大な人気を博している。


「セツキさん、こちらこそよろしくお願いします」


「あの、ハルカ先輩はクロ先輩と同い年ですよね? 僕の方が年下なので、さん付けじゃなくていいですし、口調も普通にしてくれて大丈夫ですよ」


「え? あ、うん。じゃ、じゃあ、セツキくんって呼んでいいかな?」


「はい。もちろんです。ハルカ先輩」


 そういってニコッと笑うセツキくんの姿を見て、世のお姉さま方にセツキくんが人気の理由がすごくわかった気がした。


「次のメンバーはセツカ。ジョブは森魔導士、トラップや妨害、回復を担当してもらっている。彼女は言葉が少ないが人付き合いが苦手という訳じゃないんだ。同じ魔法使いのハルカが入ることを楽しみにしていたから仲良くしてやって欲しい」


「......ハルカ......よろしく......」


 ワタルさんに紹介されたセツカちゃんは半目でこちらを見つめ言葉少なく挨拶をする。

 一見やる気無さそうに見えるセツカちゃんだけど、クロの話だとオリジナル魔法やオリジナルアイテムの創造に意欲的で、私とクロが出会うキッカケになったハナビダケもセツカちゃんからの依頼で探しに来たらしい。


「よろしくお願いします。セツカちゃんって呼んでいいかな?」


「......ん。......ハルカの好きで......いい......」


「ありがとう。あと【熟練度ヨクアガール】すごい効き目だったよ。そっちもありがとね」


「......ん。......同じギルドだから......当然......」


 ドヤ顔をするセツカちゃんにクロが何か言いたげな視線を向けていたけど、セツカちゃんの方は気にした様子もない。

 もしかして【熟練度ヨクアガール】を使うにあたってクロとセツカちゃんの間で何かやり取りがあったのかもと予想を立ててみるけど真実は不明なままだ。


「それじゃあ次のメンバーだけど、ハルカもよく知っているクロだ。クロには副ギルドマスターもやってもらっている。ジョブは隠者、敵のステータスを下げるデバフをしつつ臨機応変に動いてもらう遊撃担当だ。世間では実力を疑われているけど、まぁハルカにはその辺の説明は不要だね。クロにはハルカの強化担当もお願いしているから、これからも2人で頑張って欲しい」


「クロ、改めてよろしくね」


「ああ。よろしくハルカ」


「私、絶対クロみたいに強くなるから」


「ん? ああ。頑張れ」


 あの日、クロが私を見つけてくれなかったら、私が太陽と月に入ることなんて絶対なかったし、もしかしたらマンティコアのトラウマでマギアをやめていたことだってあったかもしれない。

 今の私があるのは全部クロのおかげだけど、クロにはまだ何もお返しができていない。

 私ができることなんてあまりないけど、せめて役に立てるくらい強くなってクロの期待に応えるくらいはしたいと思っている。


「最後に俺のことにも軽く触れておくよ。ジョブは勇者でセツキとは戦い方は異なるけど俺もアタッカーを担当している」


「ちなみに世界で一番最初に勇者のジョブになったのってワタルなのよ」


「え!? ワタルさんすごい......」


 ミミさんからの注釈にワタルさんも満更でもない様子。ワタルさんは剣での素早い近接戦闘と魔法を使った遠距離攻撃の両方を扱うオールラウンダーで、全世界マギアプレイヤー最強ランキング(非公式)で必ず上位に名前があがるほど実力が認められている。

 私も戦ってる所を観たことがあるけど、ワタルさんに勝てる人なんていないじゃないかと何度も思った。


「でも、そういう点なら俺よりすごい男がすぐ近くにいるよ。なにせ世界でただ一人の隠者ジョブの所有者だからね」


「え? クロがそうなの?」


「まぁ、そうだな」


 ワタルさんが視線を向けた先にいるクロは特に誇る様子もなく普段通りと言った感じ。

 そういえば流しちゃってたけど隠者って聞いたことジョブだ。

 名前の雰囲気やクロの使う装備的に忍者や暗殺者みたいなジョブだと思うけど、世界でただ一人のジョブって、やっぱりクロはすごいんだなって自分のことみたいに嬉しい気持ちになった。


「これからはハルカもメンバーとして加わって貰うことになるけど、ハルカにはアタッカーをお願いしようと思っている。さっき紹介した通りうちの純粋なアタッカーは俺とセツキだけだからね。遠距離専門のアタッカーとして戦ってもらうことになるけど大丈夫かな?」


「は、はい! もちろんです。頑張ります!」


 もともと強い魔法を使いたいというのが私の目標だからアタッカーの役割はちょうどいい。

 きっと事前にクロがワタルさん達に私がやりたいことを伝えてくれたんだと思う。

 ワタルさんは私の返事に笑顔で一度頷くと申し訳なさそうな顔になる。


「ただハルカには悪いけど、ハルカがうちに加入したことはしばらく伏せさせてもらいたい。ハルカはまだ獣装が使えないからね。そんなハルカがうちに加入したことを邪推する人達がどうしても出てくると思うんだ」


 ワタルさんが言ったことはクロも懸念していたことだ。世間では絶対入れないギルドとして有名な太陽と月に入ったマギア初心者。

 少しでも太陽と月に興味がある人なら絶対話題にするし妬みや嫉妬の対象になるのは間違いない。

 だから私の存在は世間が納得するくらい力をつけるまでは秘密にしておいた方がいい。


「わかってます。頑張ってみなさんに追いつきますのでもう少し待っていてください」


「ありがとう。俺もみんなもハルカには期待しているんだ。なにせあのクロが俺に薦めてきた程だからね」


「え? クロが私を?」


「おいワタル、余計なことを言うな」


 新事実を耳にして慌ててクロを見ると、苦虫を噛み潰したような顔でワタルさんに抗議している。


 そっか。クロが私を......


 私の心がポカポカ温かくなっている横で、ミミさんも参加してのクロいじりは賑わいを見せる。


「......あの、そろそろギルドバトルの時間なので移動しませんか?」



「はい......」「はい......」「はい......」



 セツキくんの呆れの混じった一言で、クロ、ワタルさん、ミミさんが大人しくなった姿を私はきっと忘れない。


お読み頂きありがとうございました。

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