清明様の憂鬱 朱雀さんの愛情表現79
目の前には絡み合ってまる生い茂った森があった。
あまりにたくさんの木が生い茂っているので真っ黒な塊のように見える。
白虎の胸にわけのわからない恐怖が渦巻いた。
それはそこにわだかまり、毛穴から噴き出るように思われた。
婆様がヘッドライトをつけて 婆様がらんらんと目を光らせ
「sanadaikuki※★ℒ☣・・・・・」
自分には理解できない呪文のようなものを唱えだすとぼうっとけものみちのようなものが浮かび上がった
「ちょっと、なんなんです?ここは」白虎が叫ぶと
また、フォンフォン空ぶかしをしながら婆様は言った。
「ここが一番の難所だよいろいろな悪霊が吹きだまっている場所だ、葛の葉は戦えないからここを通
り抜けることができない、だから生身の体をおいていったんだよ、おいていったんだよ、まったく馬鹿な
ことを・・・」
「ちょっと、縄をほどいてください」白虎は叫んだが、婆様は無視して
「朱雀、車自体に強力な結界がはってある、そっから狙いな」と言いながら、自分もショットガンを
を持ち弾をこめた。
「はい、婆様」車の上から覚悟のこもったような朱雀の声がした。
「ちょっと待ってなぜ一人で戦おうとする」白虎は叫んだが
「大丈夫です」朱雀はそれしか言わない
もし葛の葉が戻ってこなかったら白虎まで失うのは嫌だった。
婆様もそれをわかっていてくれるだろう
ああ、そうだ言っておかなければならないことがある
「白虎殿、隠していたことがあります」朱雀は叫んだ
「私はうそをつきました、式神でも転生できます、あなたはいつも私を甘やかしてくれた
私はそれに甘えてわがままばかり言いました、いいたかったから、甘やかしてほしかった
から」
そう甘やかしてほしかった甘えたことがなかったから
朱雀の夢の家が浮かんだ
自分がからっぽの時にはいつも浮かんでくる家
そこでは自分はただの娘で、自分によく似た優しい目の母親がいる
なめらかで優しい指で髪をなでてくれる
いつでも春風のような優しさで自分を満たしてくれる、バレエの練習用のレオタードは薄い
ピンクで小さなスパンコールもついている
父親とか、兄弟についてはあまり想像が及ばなかったがきっとみんな優しい目をしているだろう
でも、そんなものはどこにもない
そんなことを夢想している暇はないと思っている時に白虎が表れた。
何でもよく知っていて、魅力的で、自分を甘やかして必要としてくれた。
抱きしめかたは無造作で優しく自分の知らなかった
自分を守ってくれる父親みたいで兄弟みたいで
時にはいつも味方でいてくれる母親みたいに母性さえ感じさせてくれた。
嬉しかった
でもうれしすぎて自分はわがままを言いすぎてしまった
「ここを、抜けられたら私は変わります、そしてあなたがどこに転生しても探します
そして、必ず見つけて愛してもらえるよう努力しますから」
白虎は、尋常ではない気迫と緊張感がビリビリと伝わる、なかに朱雀の悲しみを感じ取ったが
気を取り直し「縄をほどいてください」もう一度絶叫に近い声で叫んだが、婆様は片手でハンドルを支
え思いっきりアクセルを踏み込んだ
白虎は座席にたたきつけられ車は真っ暗な
森の中に吸い込まれた。