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1話 順位発表

「なぁ、部活どこにしたんだ?」


 登校してそうそう話しかけられる。


「先に言え」


 この一ヶ月でこいつの対応には慣れた。


「無所属」


「帰宅部かよ…」


 たちが悪い。実質教えていないのと同じじゃないか。


「さ、言ったんだから教えろよ」


「……読書部だ」


「ほー、珍しいところ行ったな」


「図書室を放課後に開けられる権利は魅力的だった」


 この学校の読書部は図書室の鍵を自由に借りられる。


「勉強するんだったら無所属じゃだめだったのか?」


「図書室で勉強すれば家よりも集中できる。息抜きに本も読めるしな」


「なるほど、合理的だな」


 自主学習には勉強をする環境を変えるのも手段の一つだ。同じ場所で続けていてもつまらないし、集中もしやすくなるというものだ。


 ……この学校の図書室はかなり大きく、新書も比較的早く入るので、本を読むためのお金を節約できるという理由もあるが。


「あかりはどこなんだろうな?」


 宮明みやあかり、とある理由から、俺と同じ家に住んでいる。かなり軽率で浅慮なやつだが、学力は学年の中でも突出して高い。


 この関涼太せきりょうたや俺と同じ1-cだ。


 今日は入部届を提出する日で、入試の際の順位も発表される日でもある。


「おはよう、涼太」


 話しかけてきたのはあかりではない。加藤葵かとうあおいだ。


「おはよう、部活どこにした?」


「ボードゲーム部だよ」


 この学校の文化部はやけに充実している。


「結局それにしたんだ」


「涼太もどこか入ればよかったのに」


 鞄を下ろして教科書を取り出している。今日はいつもより来るのが遅かった。


「何かとデメリットもあってな」


「めんどくさかっただけでしょ」


「反論できない……」


 そういえば、この二人は珍しく同じ小学校だった。その時から仲も良かったそうだ。


「途中入部もできるんだろ? いいものが見つかってから入部すればいい」


「だよな!」


 無駄に威勢がいい。


「無所属を悪いとは言わないわ。でも、目的のある生活をしたほうがいいよ」


「それはおいおい見つけるんだよ」


「おはよ」


 あかりが席についた。


「おはようあかり。部活、どこにした?」


「ん、読書部」


 二人に入部届を見せる。


「なんでよ? あかりはてっきりボードゲーム部かと……」


「図書室いつも使えるのは便利」


 同じ理由かよ……


「めいと一緒じゃん」


 入学した手に、『俺は柏明かしわめいだ。家が近いので徒歩で通っている。』というような自己紹介をした気がする。


「私も読書部にすればよかったかな」


「ボードゲーム部もいい部活じゃないか? 部活紹介のときは優しそうな人も多かったし」


 すかさずフォローする。読書部の人数が増えたら、勉強に集中できなくなりそうだ。


「そうだね。楽しそうな部活だったし」


「今日の六限目だよな。入試の順位が発表されるのって」


「一位はあかりでしょ」


 当然のように言っているが、正直俺も一位はあかりで決まりだと思っている。


「一位から五位までは、食堂無償と寮無償で一位から三位までは学費も無償になるんだったよな」


「三位までじゃなかったら退学かな」


 勿論冗談だろう。……あかりも俺もそうだったらわからないが。


「あかりは流石に大丈夫だろ」


 ここまであかりを二人が評価するのには理由がある。入学してすぐにあったテストで、ただ一人満点を取ったことがあるからだ。


 問題は中学一年生にはかなり難しく、一部の問題には高校の知識を使って解くものもあった。


 それを難なく解き、その学力は学校中に認知された。


 果たして俺は、何位なのだろうか。



 ◇◆◆◆◇



 発表の六限目。


 広い廊下に、それが貼り出される。


 一位 宮明 482/500点 69.2


 妥当な順位だった。本人は多少喜んでいるようだ。


 右の数字は何かと担任に聞いたやつがいた。こんなの聞かなくてもわかる。偏差値だ。


 二位 河崎美春 480/500点 69.1


 入学後のテストのときに名前が上がっていた。あかりとは2点差で、かなり惜しかった。


 三位 柏明 462/500点 64.9


 正直名前があって安堵した。二位とはかなりの点差が出てしまっている。


 これで、晴れて学費が無償になったわけだ。母に苦い思いをさせずに済む。


 この結果をもとに、次の定期テストも頑張ろう。

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