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第3部 エピローグ
一ノ瀬邸には穏やかな時間が流れていた。
結が笑っている。
奏が、少し呆れた顔でそれを見ている。
その少し離れた場所で——
ひとり、立っている男が見えた。
陽葵の視線が、そこに向く。
「……あれ……?」
胸が、ざわつく。
見ているだけなのに。
なぜか——
懐かしい。
「……誰……?」
男が振り返る。
少し照れた顔。
でも——
どこか、優しい。
太陽の光で銀色の髪が輝いている。
その瞬間。
記憶が、溢れた。
いつも庭のベンチに座っていた事。
誰よりも優しかった背中。
キラキラと輝く美しい髪。
「……蒼真……」
蒼真の目が、わずかに見開かれる。
陽葵は、涙をこぼしながら笑った。
「……思い出した」
大切なもう1人の執事の事を。
蒼真は微笑み、陽葵へ手を振ると
消えてしまった。
「…ありがとう、蒼真…」
風が、静かに吹いた。
—それは、ヒカリの証明だった。




