表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/8

第3部1話 結ばれた、その先で


暖かな光が差し込む、穏やかな空間。

純白のドレスを身に纏った彼女が隣に立つ。

誰もが、暖かな視線を送り、微笑んでいる。


「汝、黒瀬蓮は一ノ瀬陽葵を妻とする事を誓いますか?」



「誓います」


暖かな拍手が俺と陽葵を包み込む瞬間だ。


写真の中のアイツーーーも笑っている気がした。









執事会 結誓連盟



コツコツと自分が廊下を歩く音が静かに響く。

途中で誰かに挨拶されたが、それどころじゃない。

目的の部屋の前に辿り着き、俺は深呼吸をしてノックをし、部屋のドアを開けた。


「おお、蓮。急にどうした?」

部屋へ入ると共に橘さんがいつも通り出迎えてくれる。

「定期連絡以外で珍しいね、蓮」

連盟トップ、神代天音さんも突然訪れた俺に驚いている。


「突然すみません。…俺は陽葵さんの専属執事です。主従関係である事を十分、理解しています」

心臓の音がうるさい。

喉がカラカラだ。


「陽葵さんと夫婦となる事をお許しください!」

言い切ると頭を下げた。

2人の顔を見るのが怖かったのもある。


「頭をあげなさい」

すぐに天音さんに言われたので、頭をあげ、姿勢を正す。

視線を天音さんへ向けると、ニコニコと笑っている。

天音さんの隣で橘さんは泣きそうな顔をしている。


これは…どういう意味だ?

肯定なのか、否定なのか…。

天音さんの本音は正直、表情でいつも読み取れない。

2人の反応に戸惑っていると天音さんが口を開いた。


「もちろん、良いですよ」

「へ…?」

自分でも驚くほど間抜けな声を出してしまった。

「おまっ…当たり前だろう…!」

橘さんは涙を堪えている…。

「2人の関係は奏から漏れてましたよ」

と天音さんは笑った。


俺と陽葵は数ヶ月前から恋人関係となっていた。

執事としての規律を犯している事は分かっていた。

奏にもバレないように気をつけていたが、勘のいいあいつの事だ…何かで気がついて報告をしたということだろう。


その事を知っていたのに2人は俺に処分を与えなかった。

そして、結婚まで許すという…。


「蓮は蒼真の想いも引き継いでくれたのでしょう?」

天音さんは少し、目を細めた。

「陽葵様もそれを知って受け入れた。私達が反対する理由がありますか?」


正論だった。


俺は蒼真の陽葵への想いも知っていた。

陽葵の蒼真への想いも知っていた。

その上で、俺も選んだ。

だが、俺は筋を通さないといけない。



「もう1つ。連盟から離席いたします。幹部という立場で結誓連盟の規律を犯したことの責任。また、一ノ瀬陽葵を黒瀬蓮、個人としてお守りするためです」


言い切った。

俺の選んだことを。


2人は驚いた顔をした。

「いや、蓮…離席する必要なんてないんじゃ…」

橘さんが戸惑っている。

何もそこまで悪いことをしちゃいないぞ。と言ってくれる。

橘さんには恩がある。

俺をここまで育ててくれた人だ。

橘さんに引き上げてもらわなければ、俺はここにいない。

陽葵に出会うことも蒼真と出会う事もない人生だった。

特例で執事見習所への入所を許してくれた天音さんにも恩がある。

だからこそ、だ。


「1人の人間として、大切な者を守る為なら仕方ないでしょう。…蓮の離席の穴は大きいけどね」

全て分かったよ。とでも言うように天音さんは微笑んだ。





一ノ瀬邸



蓮が戻ってきた。

私は待ちきれずに玄関の扉に向かった。


「おかえり、蓮!」

扉が開いた瞬間に出迎えると蓮は目を見開いた。


「た、ただいま」

と焦りながら蓮は答えた。

「そんなに慌ててどうした?何かあったのか?」

「だって、結果が気になって…」

連盟へ報告へ行くと深刻そうに家を出て行った蓮。

ブツブツと独り言で殺されるかも…と呟いていたのも私には聞こえていた。

結果がどうなのか気になって当然だ。


「うん、許してもらえた」

落ち着いた表情の蓮。

いつもの蓮だ。


「あと、連盟から離席する事にしたんだ」

蓮はまっすぐに私の目を見ると

「改めて、俺と結婚してください」

そっと蓮は手を差し出した。

「はい」

迷いなく、私は蓮の手を取った。


—その時、暖かな光が私達を包み込んだ。







暖かな祝福に包まれた日から、数年。


蓮は無機質な白い廊下をウロウロと歩いたり、椅子に腰掛けてはすぐに立ち上がる等、落ち着きがない。


「蓮さーん、ちょっと落ち着いてくださいよ」

見かねて奏が話しかける。


「お前には分かんねぇだろ、こんな気持ち…」

はぁーと蓮は大きなため息を吐いた。

自分でもこんなにソワソワするものか…と驚いている。


その時だ。

蓮の立つ廊下に繋がる部屋の扉が開いた。


蓮はすぐに部屋の中に駆け出した。

部屋に置かれたベットの上で微笑む陽葵。

その胸の中には小さな命がすやすやと寝息をたてている。


お願いします。と陽葵が言うと、看護師さんが蓮の元へ赤ん坊を連れてくる。


「小さい…」

蓮は息を飲んだ。

お父さん、抱いてあげないと~。と半ば強制的に看護師さんが蓮に赤ん坊を抱かせる。


小さい…柔らかい…。

とくん、とくん、と心臓のリズムを感じる。

これが…俺と陽葵、2人の子供…。


「……結」

一言、呟いた。

「名前は、結」


陽葵がニコッと笑う。

「良い、名前だね」


「へぇー女の子ですか」

廊下で待っていた奏が部屋の中へ入ってきた。


結を奏は見つめると一言、呟いた。


「お守りしますよ」




ーーーヒカリは、確かに繋がっている。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ