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01 目覚めたら


 目覚めると、真っ暗であった。


 そこは、無音の静寂に包まれた世界。

 暗闇の中では、ものが軋む音も、人の呼吸音も、鼓動の音も、そこには、響いてはいなかった。


 ……夢の中か。


 夢の中だと自覚している夢は、とても珍しいものだ。

 夢だと自覚してていると、夢では、自分の好きなように出来るらしい。


 淡い色の空を縦横無尽に飛んだり、好きな人を召喚して、何でも合意してくれる彼女と〇〇〇〇〇〇〇〇〇をしたり、何でもし放題。

 所謂、明晰夢だな。


 それにも興味があった。

 けれど、俺は、好きな人も学校で会えるんだよな。何も進展しないけど。


 俺は身体を起こそうとした。

 寝ているのなら、俺は布団の上でスヤスヤだ。

 いつも通り起きて、何ら変哲のない一日が始めるつもりだった。


 だが、身体の動く感触がない。

 ここがどこなのか確認する手筈だった俺の目も言うことを聞いてくれない。

 目は開くこともなく、何も映してはくれなかった。


 瞼からは一つの光も漏れてこない。

 いつも、瞼を閉じると視界に映る暗闇は、絵の具で塗りつぶされたような、まだら黒だ。

 しかし今映るものは、まるで深淵だ。

 見たことのないくらいの黒だ。

 


 どこだ?


 知らない場所だ。……いや場所というのも正しくないのかもしれない。


 感覚的な話になるので、ここには、俺以外いないし、ソースも存在しないが、

 空間、頭の中にのみ存在する世界と言うのか、実体のなさそうだ。分かりやすく言えば夢である。だが、夢とは少し違うのだろう。


 真っ暗な夢で意識は保たれている、そんなことはこれまでなかった。

 そうではないと、説明がつかない。


 しかし、美少女に囲まれたり、俺がスポーツで天才的な才能を発揮するなど、いろんな妄想をしてみるが、何も起きない。


 そう、明晰夢というやつを実践してみたが、どうやら出来ないようだ。

 これだけでは、夢ではない、と断言は出来ない。

 だってこれまで明晰夢なんて見たことないからな。

 はっはーー。


 …………


 寝る前の記憶を思い出してみた。

 てっきり、寝落ちをしていたものだと思っていたが……違うのかもしれない。

 最後の記憶も曖昧だ。

 確か、夜であった。これは確実だ。寝落ちする時間にしては、なんら不思議ではない。


 寝落ちではないという支持するのなら、

 ……俺は視界を失い、神経が反応しなくなった。



 …………



 どうやら、俺は死んだようだ。

 まだ、夢を見ていた可能性はあったが、起きることはなく、感覚的でしか断言出来ないのにそれはないことだと思った。

 少なくとも、俺は重篤な状態で、生死を彷徨っている。

 きっと、親たちは、今日が山場の俺を見守っているのだろう。生き返るかどうかの瀬戸際というやつだ。

 

 天国か、地獄か、知らないが、あの世なことに間違いはないだろう。そこを彷徨っているのだ。

 でないと、ここまで、何も進展しないことはないだろう。

 しかし、こんな何もない世界に閉じ込められているのだ。地獄の罰ということも考えられる。


 ということは、俺は一生このままなのか。

 ……あっ、もう死んでるんだった。

 この場合は、何と言うのだろうか、一つ増やして、二生か。


 俺は、今、こんなことしか、考えることがないのだ。

 本来は、こんなつまらないことではなく、生き返る方法を考えるべきなんだろう。

 けれど、生き返る方法なんて身体が動かせない時点で、考えることもなかった。


 普段することがないなら、エッチな妄想をしている。

 なので、ここで、俺のフェチの話をしよう。

 まず、俺は純愛でないと無理だ。

 無理矢理や可哀想なのは、言語道断、漫画の中で回想であろうと、一瞬でもそのようなシーンがあると、萎えてしまう。


 次は、好きなものだ。

 女の子の皆さん、メモを取ってください!

 ハーレムは、シュチュエーションとしては良きだ。

 純愛が良いのに、ハーレムが好きなんて矛盾していると思う人間がいるだろう。だが、俺と彼女たちは愛し合っているのだ、何も問題ない!!


 タイプとしては、誰でも良い。

 一目惚れかでも、ずっと関係があって、というのもあり。 

 はっきり、何でもオッケーだ!!


 …………



 こんな妄想も、ここに来てからも幾度もしてきた。

 そろそろ、精神が蝕まられ、崩壊してくる頃だろう。

 さて、どうしよう。

 死後の世界は、何があるのかは、考えたことがあった。天国はあるのかとか、死んだら輪廻転生は出来るのかとか、そういう初歩的で一般的ことだけだが。

 そんな時の俺もこんなにも暇だったとは、思いもしなかった。


 少なくとも、美少女の話し相手がいて、二人きっりで、空の上から、神々しい壮大な天国の景色を共に見て、二人でもう一度天国に行く。

 それを何日も続ける。


 ……また、妄想をしている。


 情けない奴だ。

 妄想のまま開花することなく、死んだ。

 後悔したって意味がない。

 だからなのか、不思議と生き返りたいという気持ちがない。生き返っても妄想のままっていうのもあるかな。


 いろんなことが頭に巡る。

 ちゃんと生きれば良かった。後悔なく、やってきたつもりだったのに、まだ足りたかったんだ。


 最後は、真っ暗な空間に閉じ込められて、今はまだ平気だが、精神が崩壊して、意識を失う。それが俺の最期だと思う。


 景色すら見せてくれない神なんて、酷いものだ。

 俺が神ならきっと、そんなことしないのにな。


 頭の中で呟いた。

 その刹那、瞼が開いた。いや、ずっと開いていたのだ、ただ目に映る景色が存在しなかったのだ。


 神秘的な景色がそこにはあった。

 真っ白な地平線に、海のような淡い空が広がっていた。

 この景色、目掛けて世界中から、絶景を見ようと雌雄を決す刺客が、現れそうなものだが、

 相変わらず、無音なまま、世界の中心で俺はぽつんと立っていた。


 ついに来た、とでも言うのだろうか。

 多分、これは今から神様に導かれ、あの世で残りの人生を過ごさせられるのだろう。



 …………


 いくら待とうと何の進展もない。


 何だ?神は俺を忘れているのか、だとしたら、俺は可哀想な奴だな。


 しかし、待ったと言っても、二十分。

 この時間は、普段アニメやゲームなど、娯楽と、(しも)にお熱だった俺にとって、長い、長すぎる。

 いつも、することがないなんて滅多になかったからだ。


 ここは、幻想的であるが、美人も三日で飽きるというやつだ。すでに飽きた。


 もし、この景色がブサイクなら、顔の穴という穴ってやつを全て、見つけてやったのにな。

 それだけで、三日以上は潰せるぞ。

 もしかしたら、美人の方がつまらないのではなかろうか。


 っと、そんなわけないか。


 それにここでは、身体を動かせる。

 身体が動かせないないと、閉所に包まれて、緊迫感で、精神が参ってしまうからな。



 それと、ここは無音だと言ったが、そんなことはなかった。

 景色に感嘆して、息をすることを忘れていたというやつだ。

 呼吸音は普通に聞こえるようになったし、声も出せば聞こえてくるし、歩けば、自分の足音もする。

 

 この足音というのが、今は変に感じるんだよな。

 いや、あの世だから当たり前なのかも知れないが、土やコンクリートと違って踏み締めている感じがしないので、湿地のようにぬかるんでしまいそうだ。

 だが、地盤はしっかりしている?

 というのも、一歩がちゃんとあるのに、フワフワというか……

 そう、雲のようだ。

 それなのに、足音がしっかりしている。

 これは、雲なのか?しかし、踏めているのだ雲ではないのだろう。

 ソースは忘れたが、雲はおとぎ話のように、踏めないと聞いたことがある。

 そもそも、飛行機が難なく空を飛べる時点で、当たり前なのか。

 となると、これは全く、意味が分からんな。


 もしかしたら、これは俺がつくった想像のものなのではないだろうか。

 俺が景色を見たいみたいなことを言って、出来たのだ。

 明晰夢ってことだ。


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